サイエンス

子犬にも人間の少年少女と同様の「思春期」があることが最新研究により明らかに


生後6~12カ月ほどの子犬はやんちゃな振舞いで飼い主を困らせることがあるため、インターネット上にはそのような子犬向けの育て方講座が多数存在します。これまではそのような子犬の行動変化に関する科学的証拠は存在しませんでしたが、最新の研究により子犬にも人間同様の思春期が存在することが明らかになりました。

Teenage dogs? Evidence for adolescent-phase conflict behaviour and an association between attachment to humans and pubertal timing in the domestic dog | Biology Letters
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2020.0097


Young dogs might be more similar to human teenagers than we think: new research
https://theconversation.com/young-dogs-might-be-more-similar-to-human-teenagers-than-we-think-new-research-138070

生物科学専門の査読付き科学誌であるBiology Lettersに掲載された最新の研究から、子犬には思春期があることが明らかになっています。人間や犬を含むすべての哺乳動物は、青年期として知られる変化の期間を経て、行動的にも生殖的にも大人に成長します。思春期は動物が生殖的に成熟する過程であり、行動の成熟度は生殖能力の成長よりも遅れて思春期の終わりごろにやってきます。


思春期は幼い脳の一部が成人の脳へと成長する長期にわたる変化の期間です。この間、人間の脳の神経回路は再構築されます。神経回路の再構築はホルモン変化により引き起こされるもので、この変化は実際の行動にも直接影響することが別の研究で証明されています。

また、さらに他の研究から、人間の場合は思春期の脳の変化により10代の若者に「衝動や感情を制御する能力の低下」「イライラ感の増加」「危険を冒す行動の増加」といった行動の変化が起きることが判明しました。なお、2005年に公開された論文では、人間の青年期の変化は8、9歳ごろから始まり、20代半ばで終わるとされており、そのちょうど中間である10代の時期に思春期があるとされています。

別の調査によると、思春期は子どもと親の関係が脆弱になる時期で、この時期に両者の間で争いが増えることも明らかになっています。さらに、青年期の行動変化は子どもと親の関係にも影響を及ぼし、この関係の変化は思春期になってより大きな対立を引き起こすと主張する論文も。


犬と飼い主の関係は、人間の親子関係と非常によく似ており、複数の類似点を持っています。これは行動ホルモンに関連するメカニズムに基づいています。しかし、思春期にある犬の発育についてはあまり研究されていない分野で、記事作成時点では犬の行動が思春期にどのような影響を受けるかについての科学的証拠はほとんどありませんでした。

そこで、Biology Lettersに公開された最新の研究では、哺乳動物の神経学的な発達についてこれまで明らかになっている事実および、人間の思春期における親子関係の変化に基づき、生後6~9カ月頃から始まる犬の思春期には「犬と飼い主の関係が脆弱になる」と仮定しました。子犬は思春期に「人間の家族と一緒に暮らしたい」と、「他の犬を探して繁殖したい」という2つの相反する欲求が競合するため、飼い主に特に大きな影響を及ぼすことが予想されます。

最新の研究では盲導犬として育成されている子犬の生後1年間を追跡調査することで、犬と飼い主の関係が親子関係とどの程度似ているかを調査しています。調査対象となったのは258匹の子犬で、飼い主に対しては子犬の行動に関するアンケートを行われました。加えて、258匹の犬のうち69匹を対象に、行動テストも実施されています。


調査の結果、思春期にある子犬は飼い主への従順さを低下させていることを示唆する「紛争的行動」を起こしやすくなることが明らかになっています。なお、従順性の低下は子犬が飼い主に対してどのように振舞うかからのみ判断されています。犬に対して行われた行動テストの中で、思春期の犬は飼い主以外の「見知らぬ人」や「盲導犬としての訓練を行ってくれるトレーナー」に対しては従順な態度を示し、飼い主にのみ紛争的行動を示したそうです。既存の親子関係についての研究結果から予想されていたように、介護者への愛着が不安定になっている思春期の子犬は、この期間中に飼い主の指示に従うことはほとんどありませんでした。

また、人間と同じように、飼い主に対する愛着が不安定になっている子犬のうち、雌の犬は早期の生殖的な成熟を果たすことが明らかになっています。これらの調査結果は動物の生殖発達に対する人間が与える影響の大きさを示しています。


なお、犬の飼い主が最も注意すべき点は、思春期の行動変化は「あくまでも思春期特有のものである」という点です。調査では、生後12カ月ごろには思春期前の従順な状態に戻る犬がほとんどだったとのこと。

犬には人間同様に思春期が存在することが明らかになったわけですが、それは長く続くものではないことも明らかになっています。また、悲しいことに思春期は犬が最も多く動物保護施設に入れられる年齢であるため、犬の思春期の変化に飼い主が気づくことが非常に重要であり、犬が従わないからと過剰に罰したり、育成を放棄したりしないことも大切であると研究論文では記されています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logu_ii

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