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10分の充電でスマホが1週間使えて充電1回で電気自動車を2000kmも走らせるバッテリーが登場


オーストラリアを拠点とする自動車メーカーBrighsunが、従来の二次電池の5~8倍ものエネルギー密度を誇るリチウム・硫黄バッテリーの試験を開始したと発表しました。この技術を応用したバッテリーが実用化されれば、理論上、1度の充電で2000kmもの距離を走行できる電気自動車が実現すると期待されています。

Brighsun’s revolutionary long-range EV batteries to enter industrial trials | New Mobility
https://www.newmobility.global/e-mobility/brighsuns-revolutionary-long-range-ev-batteries-enter-industrial-trials/

Brighsunが2020年4月21日に、同社が開発したリチウム・硫黄バッテリーの産業向け実用試験が開始されたと発表しました。このバッテリーは、非常に耐久性が高いのが特長です。検査や検証を行うスイスの認証サービス会社SGSの試験の結果によると、Brighsunの新しいバッテリーは満充電の状態から30分で完全に放電する2Cの使用環境で1700回充放電しても、工場出荷時の91%の性能を保ったままだとのこと。これは、充電1回当たりの容量の消耗が0.01%しかないことを意味しています。


また、満充電の状態から12分半で完全に放電する5Cという非常に過酷な使用方法で1000回充放電を繰り返しても、74%の性能を維持できるとのことです。

さらに、エネルギー密度が高いため、新しいリチウム・硫黄バッテリーを搭載したスマートフォンは1週間以上使用可能で、電気自動車なら1回の充電で2000km走行できるとされています。2000kmといってもぱっと伝わりにくい距離ですが、北海道最北端の宗谷岬から鹿児島県の屋久島の南端が直線距離で約1970kmです。

リチウム・硫黄バッテリーは、負極にリチウム、正極に硫黄を使用することで質量当たりのエネルギー量が非常に高い上に比較的軽量という長所があることから、世界中の企業がこぞって研究を行ってきました。しかし、負極のリチウムが樹枝状晶(デンドライト)になってしまったり、正極に多硫化物(ポリスルフィド)が付着したりして性能が極端に低下してしまうため、寿命が短いという課題が実用化を阻んでいました。


そこで、Brighsunは特許を取得した技術によりデンドライトやポリスルフィドの発生を抑制することで、実用的で高性能なリチウム・硫黄バッテリーの開発に成功したとのことです。また、リチウム・硫黄バッテリーには、ありふれた物質である硫黄を使用することで低コストに生産できるというメリットもあります。例えば、Brighsunのリチウム・硫黄バッテリーブランドである2Uは容量1kWh当たりの価格が100豪ドル(約6827円)程度しかないとのこと。リチウムイオン電池1kWh当たりの価格は2018年の時点で10.1万円であることを踏まえると、リチウム・硫黄バッテリーがいかに安価であるかが分かります。

Brighsunは目下、リチウム・硫黄バッテリーの大量生産に向けて投資家と協議を進めており、早ければ2020年末にも量産体制の構築に着手できる見通しだとしています。

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in モバイル,   ハードウェア,   乗り物, Posted by log1l_ks

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