サイエンス

スペースシャトル用の断熱タイルはなんと1200度以上の超高温で熱されても素手で拾うことができる


アメリカ航空宇宙局(NASA)が1981年から2011年にかけて運用した有人宇宙機のスペースシャトルは、宇宙飛行士をのせて地球と宇宙空間を行き来し、さまざまな物資を送ったり実験を行ったりしました。そんなスペースシャトルに使用された耐熱タイルには非常に高い性能が要求され、なんと1200度以上の超高温で熱した状態でも人間が素手で触れるという断熱性があるそうです。

Picking Up Glowing Hot Space Shuttle Tiles with Bare Hands
https://kottke.org/20/03/picking-up-glowing-hot-space-shuttle-tiles-with-bare-hands

スペースシャトルはもともと、「繰り返し再利用できる有人宇宙機」というコンセプトで開発された宇宙機です。そのため、使い捨ての外部燃料タンクを除いた本体部分は、宇宙から帰還した後も再び利用できることが求められました。


一度宇宙空間へ到達したスペースシャトルが地球へ帰還する際は、真空に近い宇宙から地球の分厚い大気層へ進入する大気圏再突入に耐えなければなりません。スペースシャトルが大気圏に再突入する時の熱は1600度以上になりますが、本体に使われているアルミニウムは200度程度の熱で柔らかくなってしまうため、本体を超高温から保護する耐熱タイルの開発はスペースシャトル計画において非常に重要だったとのこと。

そこで開発されたのが、断熱材として素材にシリカガラス繊維を用いた耐熱タイルです。石英を原料とするシリカは非常に優れた断熱性能を誇っているため、スペースシャトルの本体を耐熱タイルで覆うことで大気圏再突入の熱から基礎となるアルミニウムを保護できました。

実際に、超高温に熱したスペースシャトルの耐熱タイルを素手で触る様子は、以下のムービーで見ることができます。

Space Shuttle Thermal Tile Demonstration - YouTube


解説役を務める男性が……


棚に置かれていた灰色のキューブを拾い上げました。これが、スペースシャトルに使われていた耐熱タイルの一種「LI-900」です。LI-900は純度99.9%のシリカガラス繊維をスポンジ状にした素材であり、体積の94%を空気が占めているとのこと。


男性の背後にある機械では、LI-900が熱されていました。機械内部の温度はなんと摂氏1204度にも達するそうで、大気圏再突入時の熱に匹敵します。


アシスタントの女性が、器具を使って機械の中からLI-900のブロックを取り出すと……


超高温で熱されたLI-900はオレンジ色に光っており、見るからに熱そうです。


しかし、男性は手袋も何もつけていない生身の手でLI-900に触れ……


そのまま持ち上げました。


オレンジ色になるまで熱されたLI-900のブロックを高々と上げると、観客からは驚いたような声が漏れます。


LI-900がこれほどまでに高い断熱性能を発揮するのは、シリカガラス繊維そのものも高い断熱性能を誇っている上に、体積の94%を占める空気も非常に高い断熱性能を持っているから。熱が異常なほど伝わりにくいため、素手で触ってもやけどすることがないそうです。


それでもやはり熱いのは間違いないそうで、触る時はブロックの角を持つ方がいいと男性はアドバイスしています。


アドバイスを受けた観客たちも、おそるおそるLI-900のブロックを持ち上げていました。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

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