新型コロナウイルスの影響でイタリアの大気汚染が激減、そのことが一目でわかるムービーも公開中

新型コロナウイルスのまん延が中国に次いで世界で2番目に深刻な事態となっているイタリアで、大気汚染が著しく減少していることが、衛星からの観測により判明しました。その背景には、感染拡大を防止するために行われているイベント中止や施設閉鎖の影響で、イタリア各地の産業活動や交通の往来が減少していることがあります。

Italy sees drop in pollution amid coronavirus lockdown | TheHill
https://thehill.com/changing-america/sustainability/environment/487808-italy-sees-drop-in-pollution-amid-coronavirus

ヨーロッパで最も新型コロナウイルスの被害が深刻なイタリアでは、新型コロナウイルス感染症による死者が4日間で1000人以上も増加し合計2000人を突破。感染者数も2020年3月16日の時点で2万7980人に達するなど、感染拡大が激化しつつあります。

イタリア 死者2000人超える わずか４日間で1000人以上増加 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200317/k10012334731000.html

この事態に対処すべく、イタリア政府は3月11日に「薬局や食料品店など、生活必需品を取り扱う店以外のすべての商業施設の営業を禁止する」という措置を発表。イタリア国民に対しても、不要不急の外出を控えるよう呼びかけました。

さまざまな施設の閉鎖やイベントの中止は、イタリア各地の学校や企業、スポーツ大会など広範にわたっており、その影響で「平時は観光客でにぎわうイタリアの観光地から人が消えた」ことが話題となっています。

新型コロナで人がいなくなったイタリアの観光地をライブカメラで確認してみたら唖然「なんちゅう風景…」 - Togetter
https://togetter.com/li/1481938

そんな中、街頭のライブカメラとは違った視点からイタリアの異変を捉えたのが、欧州宇宙機関(ESA)の人工衛星Sentinel-5 Precursorです。

ESAは人工衛星からの観測により、イタリア上空の二酸化窒素が2020年3月ごろから激減し始めていることを突き止めました。二酸化窒素は、日本の大気汚染防止法でも規制されている有害物質で、主に自動車や工場、火力発電所などから排出されており、大気汚染の指標の1つにもなっています。

以下のムービーを再生すると、2020年3月ごろを境にイタリアの大気汚染が劇的に減少している様子を見ることができます。

Coronavirus: nitrogen dioxide emissions drop over Italy - YouTube


2020年1月のイタリア北部上空には、二酸化窒素が高濃度であることを示す赤いもやがかかっています。

しかし、2月にさしかかると目に見えて濃度が低下。

3月には、ほかのヨーロッパの地域とほとんど変わらない程度になりました。

ESAでSentinel-5 Precursorによる観測ミッションの責任者を務めるクラウス・ツェナー氏は「雨量や天候に応じて観測データがわずかに変動する可能性はありますが、今回私たちが発見した大気汚染物質の減少は、交通と産業活動の低下を引き起こしたイタリア全土の封鎖と関係があるのは間違いありません」と話し、二酸化窒素の減少は新型コロナウイルスによる経済活動の低下の現れであるとの見方を示しました。

ESAは以前にも、新型コロナウイルス感染症が最も多く発生している中国で、大気汚染や温室効果ガスの排出量が激減していることを突き止めています。

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