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WHOが新型コロナウイルス感染症をパンデミックに認定すると何が変わるのか?


記事作成時点で114カ国・11万8000人が感染し、4291人が命を落としたという新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を、世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的流行)と認定しました。

WHOが新型コロナウイルス感染症をパンデミックと認定、2009年の新型インフルエンザ以来11年ぶり - GIGAZINE


パンデミックは何かしらの疾患(特に、感染症)が、世界中で流行することを指す用語です。そもそも感染症の流行は、「エンデミック(地域流行)」「エピデミック(流行)」「パンデミック(世界的流行)」という3段階に分類することが可能。「エンデミック」は、特定の地域で比較的少ない症例数の中で感染が拡大していく段階を指し、この地域流行が想定の範囲を超えて一部の国や地域で急激に広がっていくことを「エピデミック」、この流行が世界中に拡散していくことを「パンデミック」と呼びます。

ジョンズ・ホプキンズ大学の救急医学部で、重大事象準備・対応局の運営部長として活躍するローレン・ザウアー准教授は「パンデミックの定義は完全に地理的なものです」「重症度も感染者数も関係ありません。考慮されるのはウイルスが世界中に広がっているかどうかという点です」と語っており、この定義に基づけば新型コロナウイルス感染症がパンデミックの段階にあることは、以下のグラフを見れば一発でわかります。


グラフはジョン・ホプキンス大学のシステム科学工学センターが公開する新型コロナウイルス感染症に関するデータを基に作成されたグラフで、症例数(縦軸)が時系列(横軸)で示されているだけでなく、症例が報告された国が色別で示されています。なお、WHOによると114カ国・11万8000人が新型コロナウイルスに感染しているものの、57カ国が10以下の症例数で抑えることに成功しているため、グラフで示されているのは比較的多くの症例数が報告されている国のみということになります。

新型コロナウイルス感染症は2020年2月中旬まではほぼ中国でのみ報告されていたことがわかり、この時点では「エピデミック」あるいは「アウトブレイク」に過ぎなかったことがわかります。しかし、2020年3月に入ると世界中のさまざまな国で症例が報告されるようになっており、グラフが一気にカラフルになると共に、症例数も右肩上がりに増加し続けています。

なお、パンデミックという言葉に不安を覚える人も多いかと思いますが、「パンデミックが発生した時に有利な国ランキング」で日本は5位にランクインしています。

「パンデミックが発生した時に有利な国ランキング」が発表、日本は5位という結果に - GIGAZINE


WHOは2020年2月25日の時点では「パンデミックと呼べる段階ではない」と宣言していましたが、それからわずか16日後に新型コロナウイルス感染症をパンデミックと認定しました。WHOが新型コロナウイルス感染症をパンデミックと認定するのに時間がかかった理由としては、2009年新型インフルエンザの世界的流行も関係しています。2009年の新型インフルエンザである2009H1N1は、メキシコでの感染死亡率が非常に高かったことからパンデミック認定されましたが、実際は季節性インフルエンザと大差のない脅威度だったことから、多くの批判を集めました。

最新の記者会見の中でもテドロス事務局長は「パンデミックは、軽く・不注意に使用する言葉ではありません。誤用された場合、不当な恐怖や不当な受け入れを引き起こし、不必要な苦痛や、死につながる可能性もあります」と語り、感染症をパンデミックと認定することの難しさについて語っています。


また、WHOが感染症をパンデミックと呼ぶこと自体には何の法的な意味もありません。一方で、WHOは既に2020年1月30日時点で、新型コロナウイルス感染症について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言しており、国際連合の加盟国に対して法的拘束力をもって感染症に対処するよう勧告しています。

新型コロナウイルスの感染拡大でWHOがついに緊急事態宣言を発表、同時に冷静な対応を求める - GIGAZINE


以上の通り、「パンデミック」という用語は単なる言葉に過ぎません。しかし、ナショナルジオグラフィックはWHOがパンデミックという言葉を使うことで、「もはやウイルスの拡散を阻止できないと当局が認識し、学校の閉鎖や大規模な集会の中止などの拡大防止策に移行しなければならないことが明確になる」と指摘しており、早期のパンデミック宣言が重要であったという専門家の言葉を紹介しています。

なお、1918年に世界中で大流行したパンデミックであるスペインかぜでは、公衆衛生に関する多くの教訓が得られました。以下の記事にはその教訓がまとめられており、新型コロナウイルス感染症への措置の中でうまくいっているものとうまくいっていないものが透けて見えます。

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in メモ, Posted by logu_ii

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