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「大学の教科書が高すぎる」問題を解決するために行われている取り組みとは?


大学の授業で使う教科書や参考書は、高校までで使われる教科書に比べると非常に高く、出費を抑えるために先輩から譲り受けたり古本屋で購入したりした人もいるはず。大学の教科書が高いのは日本だけではなく、アメリカでは2018年~2019年で大学生が教材費に平均415ドル(約4万6400円)を使っているという報告もあります。なぜ大学の教科書は非常に高価なのか、その理由をサウスカロライナ大学の図書館司書であるアミー・フリーマン氏が解説しています。

Why do college textbooks cost so much? 7 questions answered
https://theconversation.com/why-do-college-textbooks-cost-so-much-7-questions-answered-121969


フリーマン氏は、大学の教材が高価になってしまう理由に「大学の教科書業界は競争がほとんどない」ことを挙げています。アメリカの教科書市場のシェア80%はわずか5社に占められており、そのうちセンゲージラーニングマグロウヒル・エデュケーションは2020年に合併することを発表しています。

学生は教授や講師から購入する教材を指定され、自分で教科書を選ぶことはできないため、高騰する教材費は学生にとって大きな負担となります。フロリダ州の公立大学で2018年に行われた(PDFファイル)調査によれば、「教科書が高すぎる」という理由で学生の64.2%が必要な教科書を購入しておらず、42.8%が履修科目を減らしていたことがわかりました。また、35.6%は「教科書が高すぎて成績が落ちた」、22.9%は「教科書が高すぎて履修科目の単位を落とした」と回答したそうです。

近年は電子書籍も登場し、紙ではなくデータで教科書や参考書をそろえることもできるようになりました。教材費の高騰という問題に対処するため、特定の出版社が大学用に提供するサブスクリプションサービスを学期単位あるいは年単位で利用することで、その出版社の教科書にいつでもアクセスできるという方式も一部の大学で採用されているとのこと。ただし、必要な教科書が登録した出版社のものかどうかは教授や講師次第なので、教科書のサブスクリプションサービスが確実なコストダウンにつながるわけではありません。


高すぎる教材費が学生の学習に支障を与えていることは長年指摘されており、Open Educational Resources(OER)という、教科書を誰でも無料で利用できるように公開するオープンソースの取り組みを行う大学も増えています。2019年に発表された研究によれば、OERを活用することで世界中の学生は総計10億ドル(約1100億円)の節約が可能で、一般的な教科書を使って勉強している学生と同等あるいはそれ以上の成績を記録しているとのこと。

ただし、大学の教科書が高くなるのは「教科書に付属する課題や資料の質を高くするためにどうしてもコストがかかるから」という理由があります。OERの教科書はほぼ無料で利用できるものの、一般的な教科書に比べて課題や資料の質が落ちてしまうのが欠点。OERの教科書の使用率はあがっているものの、一部の教員からは「OERの教科書はどうしても質が低くなる」という意見もでています。


それでもフリーマン氏は、OERの教科書のメリットの1つが「資料を自由に印刷したり、コピーしたりできる」という点だと述べています。電子書籍版の教科書はライセンスの問題でコピーや印刷が難しいため、好きなだけ印刷できるOERの教科書は電子書籍を使い慣れていない学生にとっては有益だというわけです。

フリーマン氏は「大学の図書館で教科書が借りられるなら、お金を節約することができます。他にもオンラインで教科書のレンタルサービスや中古販売サービスが存在します。学生は『教科書や参考書の購入をあきらめると成績に悪影響が出る』と考えているため、OERや図書館など、学生が利用できるコスト削減の機会を作ることが重要です」と述べました。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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