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歴史上のさまざまなデマを集めた「デマ博物館」が公開中、中世から21世紀までのあらゆるデマを一気に読むことが可能

by Anonymous

20世紀末の人々を恐怖に陥れたノストラダムスの予言や、20世紀最大級のミステリーとして語られるネッシーなど、古今東西のデマを集めた「デマ博物館」がインターネット上に公開されています。インターネット上に公開されています。当時のイラストや写真とともに、古今東西のあらゆるデマを読める興味深いサイトとなっています。

The Museum of Hoaxes
http://hoaxes.org/

「The Museum of Hoaxes」にアクセスすると、ブログ形式でデマ情報がまとめられていました。画面上の「Hoaxes in History」をクリックすると……


デマが中世(Middle Ages)から21世紀(21st Century)までの時代ごとにまとめられていたので、さっそく「Middle Ages(中世)」をクリックしてみます。


すると、中世の時代に流布されたデマが表示されました。ページ上部に表示された胴体に顔がある人間のイラストが衝撃的だったので、画面をスクロールして記事の中から探してみると……


ページの中ほどに「ジョン・マンデヴィルの『東方旅行記』」の記事がありました。サムネイルかタイトルのリンクをクリックすると、記事の詳細を読むことが可能です。


「東方旅行記」は、中近東やアジアを遍歴した中世イギリスの騎士ジョン・マンデヴィルが14世紀後半に書いた旅行記だとされていますが、後世の歴史家によると元々はフランス人が書いたものらしいとのこと。マンデヴィルの本には豊富なイラストで「角と蹄がある野人」「肩に目をもつ人々」「羊のなる野菜バロメッツ」「片脚しか持たない人々」などが紹介され、当時の王侯や聖職者はこぞってマンデヴィルの旅行記を読みあさりました。その影響の大きさからマンデヴィルは英文学の父として称えられていましたが、時代が下るとともにその内容がウソであることが発覚すると、マンデヴィルは一転して「史上最悪の詐欺師」と呼ばれるようになります。


次に、「Early Modern(近世)」をクリックしてみます。


近世のデマとして、1500年ごろに作られた奇書「ヴォイニッチ手稿」が掲載されていました。


ヴォイニッチ手稿はアメリカの古書収集家ウィルフリッド・ヴォイニッチが1912年にイタリアで発見した本で、放射性炭素年代測定では1404年~1438年頃に作られたものだとされています。最大の特長は未解読の文字で記載された謎の文章や、地上には存在しない植物の彩色画などが、全編にわたり記載されていることです。過去には多数の研究者や暗号解読者が翻訳を試みましたが、いずれも失敗しており、近年では本自体が誰かをだますためにでっち上げられたものではないか、とも考えられています。


近世を代表するデマが、1555年に発刊された「ミシェル・ノストラダムス師の予言集」です。もっとも、当時ノストラダムスは高名な占星術師として名をはせており、この本もデマではなくいずれ起こるであろう真実だとみなされていました。ノストラダムスの予言がデマとして取り沙汰されるのは、ノストラダムスの死から数世紀後のことです。


「ミシェル・ノストラダムス師の予言集」は、非常にあいまいな古フランス語で書かれているため、その内容をどのようにも解釈することが可能になっています。そのため、1666年のロンドン大火アドルフ・ヒトラーの台頭、1979年のイラン革命など、幅広い事柄がノストラダムスの信奉者により「的中した予言」として流布されました。また、アメリカ同時多発テロ事件(9.11)発生後には、ノストラダムスが事件を予言したものとされる詩がインターネットを中心に出回りましたが、その詩はそもそもノストラダムスが書いたものでさえなかったとのこと。


次に、18世紀を見てみます。


デマは通常、存在しないものをでっち上げる場合が多いのですが、「実在するものがデマ扱いされるというデマ」もあります。それがカモノハシです。


1798年に、オーストラリアのニューサウスウェールズ州総督を務めていたイギリス海軍士官ジョン・ハンターは、入手したカモノハシの剥製をロンドン自然史博物館の動物学者ジョージ・ショーに引き渡しました。しかし、ショーは学術誌「Naturalist's Miscellany」に掲載した論文で「それが本物であることを疑わずにはいられない」と主張。ほかの学者らも、「剥製は中国人の船乗りが、冗談で鳥のクチバシと動物の胴体をくっつけて作った偽物だろう」と決めつけていました。


次は、19世紀前半(1800~1840年代)です。


カモノハシは「デマとされた本物」でしたが、1842年に出回った「フィジー人魚」は正真正銘のデマです。


フィジーに人魚がいるというデマは、1810年ごろに日本人の漁師がオランダの商人に売り渡した「子どものサルと魚をつなぎあわせたミイラ」が発端です。当時の日本の漁民や東インド諸島の住民の間では、宗教的な目的でサルの上半身と魚の身体を縫い合わせたミイラが作られていたとのこと。そのミイラを手にしたアメリカ人興行師フィニアス・テイラー・バーナムは、ミイラが本物の人魚のものではないと知っていたにもかかわらず、本物として見世物にしました。なお、このバーナムは映画「グレイテスト・ショーマン」のモデルにもなった人物。


続いて、19世紀後半(1850~1900年代)です。


近年では、その危険性が叫ばれるようになって久しい地球温暖化現象ですが、1874年には地球温暖化に関するデマが登場していました。


地球温暖化デマは、1874年2月上旬にKansas City Timesの紙面に掲載された記事が元となっています。当該記事によると、イタリアの天文学者ジョヴァンニ・バッティスタ・ドナティは「大西洋横断電信ケーブルが磁力と重力のバランスを狂わせ、地球が太陽に急接近して灼熱の地獄と化す」と主張しましたが、誰にも聞き入れられなかったため、失意の内に衰弱して死亡したとのこと。確かに、同名のイタリア人天文学者は存在していますが、本人はこのような主張をしたことがなく、死因も絶望ではなく腺ペストでした。


20世紀以降は10年ごとにデマがまとめられています。1910年代を見ると、近代科学史上で最大のいかさまとして知られるピルトダウン人に関するデマが掲載されていました。


1912年に、イギリスのアマチュア考古学者チャールズ・ドーソンが、イースト・サセックス州近郊にあるピルトダウンで頭蓋骨の化石を発見。化石の元となった人類は、発見地からピルトダウン人と名付けられました。ピルトダウン人は、大きな脳と原始的な顎を備えていたため、当時は「類人猿と人類をつなぐ進化のミッシングリンクではないか」とされ、1940年代の終わりまでに250編もの論文が発表されました。しかし、1949年に行われた年代測定と分析により、ピルトダウン人のものとされる化石は「クロマニョン人の頭骨とオランウータンの下顎」だったことが明らかになり、捏造だということが発覚しました。


1934年4月には、ネッシーの姿を捉えたものとして有名な「外科医の写真」が登場しています。イギリス、スコットランドのネス湖では、西暦565年にアイルランド出身の聖職者コルンバがネス湖付近のネス川で「水の獣」に遭遇したと伝記に記して以来、たびたび水中に住む巨獣の目撃例が報告されてきました。一連の目撃証言は、1934年にロンドンの医師、ロバート・ケネス・ウィルソンにより撮影されたとされる「外科医の写真」の登場により一気にネッシー伝説として有名になりましたが、実際はウィルソンの知人がおもちゃの潜水艦と模型を使って作ったトリック写真だということが明らかになっています。


1969年には、ロックバンドであるビートルズポール・マッカートニー氏がそっくりさんと入れ替わっており、本人は既に死亡しているという「ポール死亡説」が新聞で取り沙汰されました。確かに、1967年1月7日にはマッカートニー氏の愛車のミニクーパーが交通事故を起こしていますが、ドライバーはマッカートニー氏ではなく別人で、事故による死者も発生していません。しかし、ポール死亡説を真に受けた人たちによって、「ビートルズのアルバム『アビイ・ロード』のジャケットはポールの葬式の暗喩」というような「ポールの死につながる手がかり探し」が大々的に行われるなど、一部のファンの間で「ポール死亡説」は大きな盛り上がりを見せました。


20世紀の終わりには、インターネットを介したデマも多く見られるようになりました。1999年に封切りになった映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の影響でアメリカに広まった魔女伝説のウワサもその1つです。この映画は、6万ドル(約657万円)という超低予算ながら、全世界興行収入2億4050万ドル(約263億円)という大ヒットを遂げた映画で、ヒットの背景には公式サイトを活用した巧妙なマーケティングが関係しているとされています。映画の公式サイトに掲載されているのは、厳密にはデマではなく宣伝ですが、サイト上では劇中で消息を絶った登場人物の捜索に関する警察官のインタビューや、捜査資料などが公開されており、多くの閲覧者が魔女伝説が実在すると勘違いしてしまいました。


21世紀のデマとしては、日本の「旧石器捏造事件」が取り上げられていました。この事件は、「ゴッドハンド」として当時名をはせた考古学研究家の藤村新一氏が起こした捏造事件で、実際には発掘していない石器を遺跡に埋め込み、あたかも本物のように掘り出したというもの。この捏造により、過去四半世紀に及ぶ日本の前期・中期旧石器時代研究のほとんどが価値を失ったとされているほか、多くの文部科学省検定済教科書が書き直しを迫られるなどの影響が発生し、事件は日本考古学界最大の不祥事へと発展しました。

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