サイエンス

スマホの「夜間モード」は逆効果で眠りを妨げてしまうかもしれない

by Christian Lue

近年のスマートフォンには「Night Shift(夜間モード)」機能が搭載されていて、夜になるとブルーライトを減らして画面の色が暖色寄りの黄色っぽい色になり、目の負担を軽減することが可能とされています。ところが、マンチェスター大学の研究チームが行った実験から、「ブルーライトには広く考えられているほど睡眠を妨げる効果がなく、黄色っぽい光の方が睡眠に与える影響が大きい」可能性が浮上しました。

Cones Support Alignment to an Inconsistent World by Suppressing Mouse Circadian Responses to the Blue Colors Associated with Twilight: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)31368-5

Researchers discover when it’s good to get the blues
https://www.manchester.ac.uk/discover/news/researchers-discover-when-its-good-to-get-the-blues/

Not such a bright idea: why your phone’s ‘night mode’ may be keeping you awake | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/shortcuts/2019/dec/17/not-such-a-bright-idea-why-your-phones-night-mode-may-be-keeping-you-awake

視神経細胞に含まれるメラノプシンという光受容体は、人間の概日リズムの調節に深く関わっていることがわかっています。メラノプシンは目に入ってきた光の明るさを検出して日長を判断し、生物学的な機能を概日リズムと同調させるホルモンのメラトニンを分泌するとのこと。

ブラウン氏によると、メラノプシンのシステムは短波長の光を検出するのに優れているため、可視光線の中でも特に波長が短いブルーライトに反応しやすいと考えられてきました。通常は日中にメラトニンの分泌量が減少し、夜になると分泌量が増えますが、夜間にブルーライトを見るとメラノプシンが「今は日中だ」と判断し、メラノプシンの分泌が抑えられてしまうとされています。この点から、スクリーンからのブルーライトを軽減して概日リズムを乱さないようにするというアイデアは、「確かに科学的に有効な考えに基づいていました」と、マンチェスター大学のティモシー・ブラウン博士は述べています。

by Skitterphoto

しかし、色に反応するのはメラノプシンだけではなく、古くから知られている視細胞の一種である錐体細胞も、人間が色を感知する上で重要な役割を果たしています。そこでブラウン氏の研究チームは、照明の輝度や色を自由に変更できる照明を使い、マウスに対して照射する光の強さや色合いが概日リズムにどのような影響を与えるのかを調査する実験を行いました。

さまざまな光の状態がマウスの概日リズムに与える影響を分析した結果、概日リズムに与える影響は光の色合いよりも、輝度の強さの方が大きいことが判明。また、同じ輝度であった場合、ブルーライトの多い青っぽい光よりも、黄色っぽい暖色系統の光の方が概日リズムに及ぼす影響が大きいことがわかったそうです。

ブラウン氏は、「ブルーライトが体内時計に最も強い影響を与えるという私たちの共通認識は間違っています。実際のところ、夕暮れ時と同じような青っぽい光は、同じ明るさの白や黄色の光より体内時計に与える影響が小さいです」とコメント。日没時の光は日中の光よりも薄暗くて青みがかっているため、夜間に見るスクリーンの色も日没時と同様に青っぽい方が、概日リズムを乱しにくい可能性があるとのこと。対照的に、日中の光に近い白や黄色っぽいスクリーンの色は、概日リズムを乱してしまう可能性があります。

by sik92

既存のナイトモードはスクリーンが発する光の波長を調節し、メラノプシンに与えるブルーライトの影響を抑えるというアイデアが根幹にあります。その一方で、スクリーンの色の変化はメラノプシンだけではなく錐体細胞にも影響を与えるため、ブルーライトの削減から得られる利点を色の変化によるデメリットが上回ってしまう可能性もあるとして、既存のアプローチは最善ではないとブラウン氏は主張しています。

記事作成時点では、研究結果はマウス実験により導かれたものですが、「私たちはこの結果が人間にも当てはまる正当な理由があると信じています」と、ブラウン氏はコメント。画面の色にばかり注目するのではなく、「寝る前にはスマートフォンを使わない」といったより根本的な対策が確実だとみられています。

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in モバイル,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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