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「パックマン」シリーズ作品の著作権侵害でバンダイナムコがゲーム機器メーカーを提訴

by Peter Burka

バンダイナムコエンターテインメントのアメリカ法人Bandai Namco Entertainment America(BNEA)が2019年9月20日、アメリカのゲーム機器メーカーAtGamesを相手に、裁判を起こしていたことが分かりました。カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提出された起訴状によると、訴訟の理由は名作ゲーム「パックマン」に関連するキャラクターの著作権侵害が原因だとのことです。

Bandai Namco Entertainment of America vs. AtGames, 2019 complaint | Copyright Infringement | Lanham Act
https://www.scribd.com/document/427639682/Bandai-Namco-Entertainment-of-America-vs-AtGames-2019-complaint

Bandai Namco sues throwback console maker over Ms. Pac-Man mini-cabinet - Polygon
https://www.polygon.com/2019/9/25/20884111/bandai-namco-atgames-lawsuit-ms-pac-man-pac-man-flashback-blast-copyright-infringement

The rights to Ms. Pac-Man are caught up in a messy legal battle | Ars Technica
https://arstechnica.com/gaming/2019/09/the-rights-to-ms-pac-man-are-caught-in-a-messy-legal-battle/

BNEAとAtGamesの訴訟問題の争点になっているのは、1981年にパックマンのクローンゲームとして開発された「Ms. Pac-Man(ミズ・パックマン)」というゲームです。ミズ・パックマンはもともと、アメリカのゲームメーカーGeneral Computer Corporation(GCC)の創業者であるケビン・カラン氏とスティーブ・ゴルソン氏がパックマンの亜種として勝手に開発した「Crazy Otto」というゲームでした。しかし、GCCは別のゲームの亜種の件でATARIに起訴されてしまい、和解にはこぎつけたものの、ATARIに無許可でゲームの亜種を開発するのを禁止されてしまいます。

by Andrea Vena

Crazy Ottoのリリースを諦めきれなかったGCCは、当時アメリカでパックマンのライセンスを保有していたMidway Gamesに連絡し、Crazy Ottoの公式化を打診。Crazy Ottoがパックマンを大幅に改良した素晴らしい出来栄えだということに気づいたMidway Gamesは、GCCからCrazy Ottoの権利を取得する契約を締結しました。

その後、パックマンが女性のアーケードゲーマーに人気だと気づいたMidway Gamesは、Crazy Ottoの名前を「Miss Pack-Man(ミス・パックマン)」に変更。さらに、パックマンに子どもがいることが判明したため、未婚女性を表す「Miss」を、未婚か既婚かを問わない「Ms.」に変更して発売したのがミズ・パックマンです。パックマンの正式な続編として発売されたミズ・パックマンは、GCCやMidway Gamesの予想どおり大ヒットし、アメリカではパックマンをしのぎ「最も成功したアーケードゲーム」と呼ばれるほどの大流行となりました。

ミズ・パックマンを発売するという話はパックマンの開発元であるナムコ(後のバンダイナムコエンターテインメント)の中村雅哉社長の耳にも届いており、中村氏もミズ・パックマンのキャラクターデザインに協力しました。また、ミズ・パックマンはナムコからも正式な公認を受けており、ナムコが後に発売したナムコミュージアムにもミズ・パックマンが収録されています。

by Gamerscore Blog

そんな円満な歴史を持つミズ・パックマンがトラブルに巻き込まれることになってしまったのは、AtGamesがBNEAに無許可でミズ・パックマンの小型筐体を製造し始めたことが発端です。AtGamesは2012年に、ミズ・パックマンを収録したゲーム機の販売許可をBNEAに申請しましたが、BNEAは許可しませんでした。それにもかかわらず、AtGamesはミズ・パックマンの小型筐体のプロトタイプを製造し、スーパーマーケットのウォルマートやゲーム専門の販売店GameStopなどに売り込んでいたことが判明。AtGamesからミズ・パックマン発売の打診を受けたカラン氏がBNEAにそのことを通報したことで、BNEAは今回の訴訟に踏み切ったとのことです。


実は、AtGamesは2018年にもパックマンを含むナムコのレトロゲームを収録した「Bandai Namco Flashback Blast!」を発売しています。この時はパックマンの使用を許可したBNEAですが、条件として高品質なアーケード版を収録するよう要求していました。しかし、実際に発売されたBandai Namco Flashback Blast!に収録されていたのは、アーケードよりもスペックが低いNintendo Entertainment System(NES)向けに開発されたバージョンで、しかも動作が不安定な代物だったとのこと。

こうしたトラブルに業を煮やしたBNEAは、「AtGamesは虚偽によりBNEAの現在及び未来における小売事業、知的財産権の活用、当社と配給者との良好な関係を損ない、BNEAの信用と評価に重大な損害を与えています」とAtGamesを非難し、AtGamesによるミズ・パックマンの発売を容認しないと明言しました。


一方、提訴されたAtGamesのCEOであるPing-Kang Hsiung氏も「我々は文化的な資産でもある作品を保護する活動の一環として、その象徴的な存在であるミズ・パックマンを活用する権利を有しています」との声明を発表し、一歩も譲らない姿勢を見せています。

事実、AtGamesは既に7人の元GCC幹部らと個人契約してミズ・パックマンの権利を取得したとの報道もなされていることから、ミズ・パックマンの複雑な権利関係をめぐる裁判は今後泥沼化すると予想されています。

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in ゲーム, Posted by log1l_ks

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