サイエンス

新発見の石器から「最初のアメリカ人は日本から来たかもしれない」説が急浮上


これまでの定説では、最初に北アメリカ大陸にやってきた人類は1万3000年前に栄えたクローヴィス文化の時代の人々だとされてきました。そんな中、新たにアメリカで発見された石器の分析から、これまでの常識を覆す新説が浮上しています。

Late Upper Paleolithic occupation at Cooper’s Ferry, Idaho, USA, ~16,000 years ago | Science
https://science.sciencemag.org/content/365/6456/891

Stone tools suggest the first Americans came from Japan | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/08/16000-year-old-site-in-idaho-indicates-people-sailed-around-the-ice-sheet/

15,000-year-old Idaho archaeology site now among America’s oldest
https://www.nationalgeographic.com/culture/2019/08/coopers-landing-idaho-site-americas-oldest/

First Americans arrived at least 16,000 years ago, and probably by boat | NOVA | PBS | NOVA | PBS
https://www.pbs.org/wgbh/nova/article/coopers-ferry-first-americans/

1930年代に、アメリカのニューメキシコ州にあるクローヴィスで後期氷河期のものと見られる遺跡が複数発見されました。さらに、その後の調査で北アメリカ大陸全土に分布する約1万3000年前のクローヴィス層という地層から、尖頭器をはじめとする石器などが多数発掘されたことから、この時代に栄えた石器文化はクローヴィス文化と呼ばれています。

by Bureau of Land Management

こうした多数の発見から、クローヴィス文化の人々がアメリカで栄えた最初の人類だとする「クローヴィス・ファースト」という説がこれまで有力視されてきました。また、この説では、アメリカの先住民の起源として「アフリカで発生した人類は、氷河期後期に氷が溶けて通れるようになっていたベーリング地峡を通ってアメリカにやってきた」と説明されています。

しかし、その後クローヴィス層よりも古い地層からも人類の痕跡が見つかるようになり、「クローヴィス・ファースト」仮説に疑問がなげかけられるようになりました。そんな中、オレゴン州立大学の人類学教授であるローレン・デイビス氏は、アイダホ州西部にある「クーパーズ・フェリー遺跡」から石器や炭、動物の骨などの遺物を発掘しました。放射性炭素年代測定によると、これらの遺物の多くは約1万5000~1万6000年前のものだとのことです。

以下の図は1万6000年前のクーパーズ・フェリー遺跡周辺をシミュレートした地図で、地図北部の水色で示されている部分は氷床です。


ニューハンプシャー大学で地質学を研究しているアリア・レスネク氏は今回の発見について「これは本当にエキサイティングです。おそらく、北米における最も古い人類の痕跡の一部だと思われます」とコメント。また、遺物の年代から「アメリカ大陸最初の人類が、氷に覆われていない陸路でやってきたという考えは基本的には排除されると考えられます」と話しています。

というのも、1万6000年前のベーリング地峡はほとんど氷に閉ざされており、人類が移動できる状態ではなかったと考えられているためです。このため、レスネク氏は「アメリカに最初にやってきた人類は、氷のない陸路ではなく、太平洋沿岸を通ってやってきたのではないか」という説を提唱しています。

以下の図で赤色の矢印で示されているのが、かねてからの定説だった「氷のない陸路」ルートで、オレンジ色の矢印が最近提唱された「太平洋沿岸ルート」です。レスネク氏は、「太平洋沿岸なら約1万7000年前のころには氷が溶けていたので、アメリカにやってきた最初の人類はこのルートを船で通ったのではないか」と考えています。


また、デイビス氏らは今回発見された石器が、日本で発見された同年代の石器と酷似していることを発見しました。以下の図はクーパーズ・フェリー遺跡で発見された石器の写真と、北海道の白滝遺跡から出土した石器のイラストを比較したものです。大きさや形状がかなり似ているのが一目でわかります。


ワシントン大学の考古学者であるドナルド・グレイソン氏は「古代の遺物に類似性があったとしても、かなり複雑なものが似ていない限り、関連性があるとみなすべきではありません」と話し、クーパーズ・フェリー遺跡の石器と白滝遺跡の石器が似ているとの指摘に対して慎重な姿勢を示しました。

一方、サンディエゴ州立大学の考古学者であるトッド・ブライエ氏は「非常に興味深いつながりです。当面の課題は、クーパーズ・フェリー遺跡の石器を世界で見つかった初期の遺物と比較してみることです」と話し、今後の研究次第では、新しい洞察が示される可能性があるとの意見を述べました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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