生き物

ふ化する前の鳥の卵がコミュニケーションを取っていることが判明

by Nicholas Turland

鳥は鳴き声で求愛行動などのコミュニケーションを行うことが知られていますが、ふ化する前の「鳥の卵」も他の卵たちと独自のコミュニケーションを行い、他の卵に影響を与えていることが判明しました。

Bird embryos perceive vibratory cues of predation risk from clutch mates | Nature Ecology & Evolution
https://www.nature.com/articles/s41559-019-0929-8

We Just Learned Baby Birds Communicate With Each Other From Inside Unhatched Eggs
https://www.sciencealert.com/baby-birds-can-communicate-with-each-other-from-inside-their-unhatched-eggs

スペイン・ガリシア州にあるビーゴ大学の研究チームは、「鳥の卵は殻を割ってふ化する以前から、外界の情報に基づいたコミュニケーションを行っているのではないか」と考え、実験を行いました。研究チームはガリシア沿岸にあるサルボラ島キアシセグロカモメの繁殖コロニーから、野生の卵を集めて実験に使用したとのこと。サルボラ島の繁殖コロニーには、キアシセグロカモメや卵にとっての天敵となるミンクなどの捕食者が存在しています。

by Alvesgaspar

研究チームは卵を3つのグループに分割してふ化器の中に入れ、その後それぞれのグループを「実験群」と「対照群」に分割しました。以下の画像は実験に使用された卵たちを表した図で、6つのグループが黄色(実験群)と青色(対照群)に分割されているのがわかります。ふ化器の中は3個で1列となっており、研究チームはこの3個のうち特定の2個の卵を、1日4回ふ化器から取り出して防音室の中に一定時間入れたそうです。実験によって取り出された卵は、以下の図で色濃く描かれています。


実験群の場合、取り出された卵は防音室の中で「捕食者の存在を示唆する音」を聞かされました。一方、対照群は防音室の中で音を聞かされることはありませんでした。卵は一定時間が経過すると防音室から取り出され、ふ化器の中に元どおり戻されたとのこと。それぞれの卵はお互いに殻同士が触れる位置に置かれたそうです。

研究チームがふ化器の中の卵を観察したところ、捕食者の存在を示唆された実験群の卵は、静かな防音室に置かれた対照群の卵よりも高い頻度で振動することを発見しました。さらに実験群のグループは定期的にふ化器から取り出された卵もそうでない卵も、対照群の卵よりふ化するのに時間がかかったとのこと。

ふ化した後のヒナの行動も、実験群と対照群では違いが見られたそうです。実験群のヒナは対照群のヒナよりも鳴き声が小さく、より身を小さく屈める傾向がありました。また、生理学的な違いも両者には見られたそうで、実験群のヒナは高いレベルのストレスホルモンを分泌し、細胞当たりのミトコンドリアDNAが少なく、脚が短いという特徴まで見られました。

by Contando Estrelas

研究チームによれば、このヒナの生理学的変化は一種のトレードオフになっている模様。ストレスホルモンの増加やミトコンドリアDNAの減少はヒナの危機対応能力を上げる一方で、細胞のエネルギー生産能力を減少させ、ヒナの成長に悪影響をおよぼしたというわけです。

なお、統計的な分析によりこれらの変化はふ化するまでの時間だけに起因するものではなく、「所属するふ化器の卵たちが捕食者の存在を示唆する音にさらされたかどうか」も、ヒナの特徴に影響していることが確認されました。今回の実験では、「実験群のふ化器に入っていたものの、直接防音室で捕食者の音を聞かなかった卵」からかえったヒナまで、防音室に入った他のヒナたちと同様の変化を見せています。そのため、捕食者の音を聞いた卵が発する振動が他の卵に影響を与え、ふ化までの時間やさまざまな生理学的変化などが引き起こされたと研究チームは考えています。

「私たちの実験結果は、明らかにふ化する前の卵たちが捕食者の有無といった危険に関する情報を、まだふ化していない卵の中の兄弟たちと交換していることを表わしています」と、研究チームは述べました。

by Allan Hopkins

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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