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microSDカードの「A2規格対応」にパフォーマンス向上の意味はないとエンジニアが主張


シングルボードコンピューターの「Raspberry Pi」は、ストレージとしてSDカードまたはmicroSDカードを使用しています。高速な読み書きが可能とうたわれる新しい規格を使えば、Raspberry Piの性能も向上すると考える人も多くいますが、ソフトウェアエンジニアのジェフ・ギーリングさんは、「高速な読み書きが可能といわれる『A2』規格対応のmicroSDカードは、Raspberry Piにとっても他のデバイスにとってもいい選択肢ではない」と主張しています。

A2-class microSD cards offer no better performance for the Raspberry Pi | Jeff Geerling
https://www.jeffgeerling.com/blog/2019/a2-class-microsd-cards-offer-no-better-performance-raspberry-pi

Raspberry Piは汎用コンピューターとして、非常に小さなファイルを読み書きします。そのため、従来のシーケンシャルアクセス速度を基準とした、「1秒間に10MB以上の読み書きが可能」「1秒間に30MB以上の読み書きが可能」といったmicroSDカードのスペックが役に立たず、特定のmicroSDカードがRaspberry Piに適しているのかどうかを判断するのは難しかったとのこと。

しかし近年ではスマートフォンやタブレットの追加ストレージ、あるいはRaspberry PiのようなデバイスのシステムブートボリュームにmicroSDカードを使用する人が増えています。これらのシナリオではシーケンシャルアクセス速度ではなく、記憶装置内にある目的のデータへ直接アクセスするランダムアクセス速度が重要となります。

そこで業界指針となるメモリカード規格を策定する規格団体のSDアソシエーションは、「A1」および「A2」というアプリケーションパフォーマンスクラスを策定し、それぞれのクラスにおけるランダムアクセス速度の最低基準を明確にしました。以下の画像がA1とA2の性能表。1秒当たりにディスクが処理できるI/Oアクセスの数を表わすIOPSは、A1で読み込みが1500IOPS、書き込みが500IOPSで、A2だと読み込みが4000IOPS、書き込みが2000IOPSとなっています。


この種のパフォーマンス基準は非常に役立つとして、ギーリングさんはさっそく複数のA2規格対応microSDカードを購入し、Raspberry Piに搭載した場合にどれほどの性能があるのかをチェックすることにしました。なお、4Kファイルの書き込み速度における2000IOPSという数値は、古いシリアルATA上のSSDに匹敵するスペックだとのこと。

ギーリングさんはもともと所持していた古いmicroSDカードの「SanDisk Extreme 16GB」「Samsung microSD PRO Plus 32GB」「Samsung microSD EVO Plus 32GB」と、新たに購入した「SanDisk Extreme 64GB A2」「Lexar Pro 128GB A2」を使ってベンチマークテストを実施。


テストの結果を表したグラフが以下です。上のグラフが4Kファイルの読み込み速度、下が書き込み速度となっており、A2規格に対応したmicroSDカードはいずれもSDアソシエーションが策定した最低基準を下回る結果となりました。Lexar Pro A2の読み込み速度を除けば基準の半分にも満たないというだけでなく、数年前に購入した古いmicroSDカードの方がスペックが高いケースも見られます。


今回の結果はRaspberry PiにmicroSDカードを搭載してベンチマークテストを行いましたが、ギーリングさんは他のデバイスにmicroSDカードを搭載したら違いが出るのかも調べました。ギーリングさんはCore i7搭載の13インチMacBook Proと、Core i5搭載の13インチMacBook Proでも同様にベンチマークテストを実施しましたが、結果はほぼ変わらなかったとのこと。

また、ギーリングさんはmicroSDカードリーダーをUSB Type-Cハブで接続したり、SamsungやLexar製のSDカードリーダーを使用したり、MacBook Pro内蔵のSDカードリーダーを使用したりとさまざまな条件も試したそうですが、A2規格対応のmicroSDカードのパフォーマンスは一貫して低かったとしています。

結論としてギーリングさんは「A2規格はクソです」と結論付けており、もしもmicroSDカードメーカーやSDアソシエーションが自分の意見に反論したい場合は、A2規格対応のmicroSDカードがうたわれている通りのスペックを発揮する方法を教えて欲しいと主張。「A2規格対応」とうたわれているmicroSDカードは従来のmicroSDカードの2倍近い値段となっていますが、ギーリングさんは「A2規格対応microSDカードを買わないで、差額分のお金を節約してください」と述べました。

by Diego Torres Silvestre

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in ハードウェア, Posted by log1h_ik

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