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Appleのティム・クックCEOが「ハイテク企業は混乱の責任を取るべきだ」と卒業式のスピーチで主張

by Fortune Photo

2019年6月16日、スタンフォード大学の卒業式で開会スピーチを行ったAppleティム・クックCEOが、「シリコンバレーのハイテク企業は、世界に混乱をもたらした責任を取るべきだ」と言及して話題となっています。

2019 Commencement address by Apple CEO Tim Cook | Stanford News
https://news.stanford.edu/2019/06/16/remarks-tim-cook-2019-stanford-commencement/

Tim Cook takes aim at tech companies for creating 'chaos'
https://thenextweb.com/apple/2019/06/17/tim-cook-takes-aim-at-tech-companies-for-creating-chaos/

クックCEOは「スタンフォードとシリコンバレーのルーツは一緒に折り込まれています」と述べ、スタンフォード大学の卒業生や中退生らが現在のシリコンバレーを形作るハイテク企業の成長に、大きな役割を果たしてきたと指摘。カフェインやソースコード、楽観主義と理想主義、信念とクリエイティビティに支えられて、シリコンバレーは社会をよりよくするために技術を使用してきたと語りました。


その一方で、必ずしもシリコンバレーのハイテク企業が社会にもたらした結果は、素晴らしいものだけではなかったと認めています。テクノロジーの発達は社会の様相を激変させ、テクノロジーが引き起こしたさまざまな危険が楽観主義を揺さぶっているとのこと。

データの侵害やプライバシーの流出、ヘイトスピーチの拡散やフェイクニュースなど、時にテクノロジーの発達は人々に害を与える結果をもたらします。そんな中でハイテク企業の多くは、「自分たちは有害な結果を引き起こそうとしていたのではない」として、テクノロジーが結果として害を引き起こしたとしても、当初の善意がそれを免除すると考えがちだとクックCEOは述べています。

by Pixabay

しかし、クックCEOは制作者が意図したかどうかに関わらず、テクノロジーを生み出した責任は制作者が負うべきだと指摘。「もしあなたがカオスを創造したのなら、あなたはカオスに対する責任から逃れることはできません」と述べ、責任を取ることは物事をより深く考える勇気をもたらすとしました。

クックCEOはテクノロジー企業が生み出した問題として、何よりもプライバシーが重要だと主張しています。生活の多くがネットサービスやスマートフォンなどのデバイスに集約され、マーケティングなどに利用されています。もしもそのデータがハッキングされて流出すれば、人々は多くのものを失う危険性があるとのこと。そうしたリスクにさらされると、人々はよりリスクの少ない選択を人生において採用しがちとなり、新たなアイデアの発想や創造を阻害するといった弊害が考えられるとクックCEOは指摘しています。

以前からクックCEOはデジタルプライバシーの保護を強く訴えており、過去には「iPhoneのロックを解除するツールを開発してくれ」というFBIからの要求を、「Appleのセキュリティ面での信頼性を壊す行為だ」として拒否するといった行動も取っています。Appleは他のハイテク企業とは一線を画した強いプライバシー保護を強みの一つとしており、スピーチの中でもその主張がにじみ出た形です。

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また、自らがゲイであることを認めているクックCEOは、スピーチ中で1969年に発生した同性愛者らの警察に対する反乱事件、ストーンウォールの反乱にも触れています。そして、近年ではLGBTの権利が広く認められるようになった以前には、こうした過去の人々による小さな積み重ねがあったことを指摘し、何か優れた物事を打ち立てたいなら、少しずつの積み重ねを繰り返すことが重要だと述べました。

さらにスピーチの終盤では14年前の2005年にスタンフォード大学で伝説的なスピーチを行ったスティーブ・ジョブズ氏にも言及し、クックCEOはがんの進行したジョブズ氏と面会しても、きっとジョブズ氏がAppleを導いてくれるはずだと信じていたとのこと。しかし本当にジョブズ氏が亡くなってしまい、これまでの人生で感じたことがないほどの孤独に陥ったクックCEOでしたが、落ち着いた時には「自分がなれる最高のバージョンにならなければならない」と決意し、夢中になって働いてきたそうです。

クックCEOはスタンフォード大学の卒業生らに対し、世の中には自らが責任を負うことなく信頼を得たいとする人々や、何事も成し遂げていないのに栄誉だけを得たいと望む人々が多すぎると主張。孤独の中にも自分のビジョンを見つけ出し、生み出したものに責任を負いつつ挑戦することで、他の人とは異なる価値のある何かを世の中に残して欲しいと訴えてスピーチを終えました。

by Startup Stock Photos

なお、スタンフォード大学が公開したクックCEOの卒業式スピーチは、以下の埋め込みムービーから見ることができます。

2019 Stanford Commencement address by Tim Cook - YouTube

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