サイエンス

どのようにして謎の電波シグナル「ペリュトン」の原因が電子レンジだと判明したのか?

by Erkin

オーストラリアにあるパークス天文台は口径64mの電波望遠鏡を核とする電波天文台であり、宇宙から届く電磁パルス「高速電波バースト(FRB)」の観測などを行っています。そんなパークス天文台では「ペリュトン」という奇妙な電波シグナルも検出されているのですが、長年にわたって何が原因で発生する電波シグナルなのかは謎でした。そんなペリュトンの発生原因が「電子レンジ」だったと突き止められるまでの経緯について、スウィンバーン工科大学で宇宙物理学を研究するEmily Petroff氏がまとめています。

How we found the source of the mystery signals at The Dish
https://theconversation.com/how-we-found-the-source-of-the-mystery-signals-at-the-dish-41523

高速電波バーストが初めて検出されたのは2007年のことで、2001年のデータを綿密に解析した結果、6年後になって高速電波バーストが観測されていたことが判明したという経緯があります。このことから当時は、他の古いデータセットについても調査を行うことで、別の高速電波バーストが発見できるかもしれないと期待されました。


スウィンバーン工科大学の博士課程に在籍していたSarah Burke Spolaor氏は、研究の一環として古いデータセットを調査し、高速電波バーストの観測記録を探しました。その結果、当初の目的だった高速電波バーストは発見できなかったものの、奇妙な電波シグナルを発見したとのこと。この謎の電波シグナルが「ペリュトン」と名付けられることとなります。

ペリュトンは高速電波バーストと似た波長を持っていたものの、宇宙ではなく地球上で発生している電波シグナルであることが確認されました。Burke Spolaor氏らの研究チームは、一体なぜペリュトンが発生してしまうのかの原因を突き止めようとしましたが、1998年から2002年までのデータ中でペリュトンが観測されたのはわずか11回であり、原因の究明は容易ではありませんでした。

by Startup Stock Photos

2011年の論文においてBurke Spolaor氏らは、ペリュトンの原因が雷や太陽フレアなどの爆発現象、地球上の天候といったものが原因かもしれないと示唆しましたが、決定的な関連性は見出せなかったそうです。この一方で、2012年に提出された論文では、ペリュトンの発生原因が人間だという可能性が指摘されています。

奇妙なことに、2011年から2014年の間に高速電波バーストの発見例は増加しているものの、その期間中にペリュトンは観測されませんでした。しかし2015年1月、いきなり3つものペリュトンが観測されたとのこと。当時のパークス天文台では既にデータ処理技術が格段に進歩していたため、ペリュトンは発生から1日以内に発見されたそうです。そこでPetroff氏らはパークス天文台のスタッフと協力して、ペリュトンの原因を突き止めることにしました。

by Tamsin Slater

パークス天文台のスタッフらは、ペリュトンが観測された時に不審な出来事はなかったと証言しました。しかし、2014年12月に設置されたパークス天文台周辺の電波障害を検知するRFIモニターから、ペリュトンが観測された時にパークス天文台周辺で2.5GHz周波数の電波が放出されていることが明らかとなりました。

2.5GHzの周波数は多くの家電製品から発生しますが、中でも有名なのは電子レンジです。そこでPetroff氏らは電子レンジを使用することでペリュトンが観測できるのかを実験しましたが、最初のテストではペリュトンの発生は観測されなかったとのこと。

しかし最初の発見から2カ月ほど経過した2015年3月17日、通常とは違い電子レンジのある部屋のドアを開け放したままにし、電子レンジから天文台の受信機まで一直線のラインを保持した状態でレンジを稼働させると、ペリュトンが観測されることが判明。こうして長年にわたって謎だったペリュトンの発生原因が突き止められました。「宇宙人」や「宇宙の謎の解明」を求める多くのメディアにとっては面白くない結果かもしれませんが、Petroff氏は今回の科学的原因の発見に満足していると述べています。

by Ben Babcock

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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