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まったく異なる運命を歩んだ2人の少年ハッカーの物語

by pxhere

1983年10月に、18歳の少年と14歳の少年がハッキングの疑いによりFBIの家宅捜査を受けました。アメリカに住む10代の若者が結成したハッカー集団「インナー・サークル(The Inner Circle)」に所属していた2人ですが、FBIにより家宅捜査を受けた後の運命は全く異なるものでした。そんな2人に取材を行ったライターのマット・ノバク氏が、PCの技術と知識で結ばれていた2人のその後の人生をつづっています。

The Untold Story of the Teen Hackers Who Transformed the Early Internet
https://paleofuture.gizmodo.com/the-untold-story-of-the-teen-hackers-who-transformed-th-1770977586

◆ビルの場合
1983年10月12日、当時18歳のビル・ランドレスがいつものようにハッキングした電話回線でクリスに呼びかけると、クリスは切羽詰まった様子で「今FBIがうちに押しかけてきたところなんだ。だからもう電話してこないで」と答えました。これがビルとクリスが交わした最後の言葉になりました。ビルがFBIに逮捕されたのはその翌日のことです。

by stevanovicigor

ビルの両親は半ばヒッピーのような生活を送っており、特に父親はLSDコカインを集めるために、カリフォルニア州サンディエゴの自宅からロサンゼルス郊外に足を運ぶような人物でした。このため、前日にクリスから話を聞かされていたにもかかわらず、12人のFBI捜査官が家を取り囲んだ時も、この家の一体だれが逮捕されるのか当時のビルには見当が付かなかったとのこと。

ビルが逮捕された1983年当時、ハッキングそのものを直接裁く法律はありませんでした。それでも、通信に関する法規定の拡大解釈によりビルは有罪判決を受け、87ドル(当時のレートで約2万円)の賠償金と3年の保護観察処分を言い渡されました。この事件の後ビルの家族はアラスカ州に引っ越しましたが、ビルは家族と離れてカリフォルニア州の友人宅に転がり込むと、カリフォルニア大学に入学。しかし、学生生活は長続きせず、また金銭にも窮するようになったビルは、友人の勧めで1985年に「Out of the Inner Circle: A Hacker's Guide to Computer Security」という本を出版します。


この本はベストセラーになったので印税で2年ほど生活することができましたが、資金が尽きてからは職を転々としつつサンディエゴ・ロサンゼルス・サンタバーバラなどで路上生活を送ってきたとのこと。また、長年にわたり精神疾患に悩まされ続けており、精神安定剤や医療用大麻を服用しているそうです。

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ノバク氏がクリスについて質問するとビルは「実は、クリスとは直接会ったこともないし、あれ以来連絡を取ったこともないんだ」と答えました。それでも、電話回線を通じてはぐくんだ友情は今でも覚えているとのことです。

◆クリスの場合
1983年10月15日、FBIは「国防総省のARPANETに侵入し、合計50万~100万ドル(当時の日本円で1億1600万~2億3200万円相当)の被害を与えたグループのリーダーである『The Cracker』という人物を特定した」と発表しました。しかし、FBIは家宅捜査を実施してPCなどを押収しただけで「The Cracker」を逮捕せず、名前や住所も公表しませんでした。

by Brian Klug

この「The Cracker」こそ当時14歳のクリスです。クリスやその共犯者があまりにも若く、世論もクリスらに同情的だったため、FBIは逮捕や訴追に踏み切ることができませんでした。

実は、クリスという名前も本名ではありません。「正体を明かさない」という約束でクリスがノバク氏に電話で語った人生は、順風満帆そのものでした。クリスはノバク氏に対し「学校では大変な人気者になり、ガールフレンドもたくさんできました。そう、まさにいいことずくめでしたよ」と笑いながら語ったとのこと。クリスはその後デトロイトの郊外に家を建てて家庭を持ち、具体的な職業の明言は避けたものの、「PC関連の仕事に就いている」とのことです。

by Wavebreakmedia

なお、アメリカで最初にハッキングを規定した「Counterfeit Access Device and Computer Fraud and Abuse Act(偽造アクセス機器とコンピュータ詐欺・濫用に関する法律)」が制定されたのは、ビルが逮捕された翌年の1984年のことでした。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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