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13歳の少年はなぜオルタナ右翼に傾倒し、その後オルタナ右翼をやめたか

by Suleman Mukhtar

アメリカにおいて台頭する右翼思想のオルタナ右翼は、ドナルド・トランプ大統領を支持して多文化主義や移民への反対を主張する点が特徴だとされています。当時13歳だった息子がオルタナ右翼に傾倒していった経験を持つ母親が、その一連の経緯を明らかにしています。

What Happened After My 13-Year-Old Son Joined the Alt-Right
https://www.washingtonian.com/2019/05/05/what-happened-after-my-13-year-old-son-joined-the-alt-right/

◆きっかけは学校での出来事
この記事はワシントンのいろいろな情報を発信するエンタメニュースサイト・Washintonianに匿名で掲載されたもの。筆者である女性の息子・サムさんは地元の公立中学に通う普通の少年でした。サムさんの所属するグループはかなりリベラルな集団だったそうで、友人の中にはゲイをカミングアウトした子もいたとのこと。

ある日、サムさんの友人が仲間内で通用する冗談を言い、サムさんがそれを聞いて笑うというやり取りがありました。近くにいた女子生徒が2人の会話には性的な意味合いがあると誤解して、「これはセクハラだ」と教員に報告したそうです。


この出来事により、サムさんは生活指導教員によって次の授業中に教室の外へと連れ出されました。「法を破っている」とまで言われたサムさんは、学校駐在の警察官によって反省文を書くよう強要されました。このとき、拘束時間は実に8時間にも及んだとのことで、帰宅したサムさんの泣きはらした目を見た母親は、事情を知って学校への抗議を決めました。

学校側は両親からの抗議も、女子生徒から受けた苦情の詳細説明も拒否。サムさんの行為を「違法だ」と指摘した学校の管理者は「責任者として、そして娘を持つ父親として、少女を保護してケアすることが何よりも重要な義務である」と宣言したとのこと。結局サムさんは不本意ながら少女に謝罪の手紙を書くことに同意しましたが、ショックから体調不良などに見舞われるようになり、大人に対して強い失望を覚えていたそうです。

by Craig Adderley

◆オルタナ右翼との出会い
サムさんの両親も学校に対して深く失望し、これ以上サムさんを公立中学に通わせられないと決意し、私立中学へと転校させることにしました。しかし、以前の学校で大きく自信を砕かれて人々に失望し、友人とも離ればなれになってしまったサムさんは、新しい学校になじむことができなかったとのこと。

そんなサムさんにとって唯一の話し相手となったのが、Reddit4chanといったネット掲示板のユーザーたちでした。サムさんはオンライン上でささやかれている「女性はみんなウソつきだ」といった説に大きく共感し、やがて「イスラム教は本質的に暴力的な宗教だ」「ユダヤ人が世界の金融ネットワークを牛耳っている」といった怪しげな知識も吸収していきました。

オンラインのコミュニティに夢中になったサムさんは、やがて「男女の賃金格差が大きいという説はウソだ」「フェミニストが家庭を破壊する」「自分自身を守るには銃が必要だ」といった右翼的な主張や、「赤ちゃんを中絶する女性は罪に問われるべきだ」といった言葉に耳を傾けるようになったとのこと。これらの主張はサムさんが持つ従来の知識に反するものでしたが、ネットを通じて右翼的な主張を支持する多くの文言やデータの存在を知り、サムさんはオルタナ右翼的な偏見を強めていきました。

by bruce mars

◆オルタナ右翼コミュニティへの傾倒
共感力と観察力のある子どもを育てようとした両親の努力のおかげもあって、サムさんは先生や友人から「優しい人物」と評価されていました。しかし、ネット上の情報によって右翼的な思想を強めていったサムさんは、やがて母親に対しても自身の右翼的な主張を訴えるようになったとのこと。

「離婚した母親は自分の子どもを父親に会わせたがらない」という説や、「男性の権利を訴える運動が世界に正義をもたらす」といったサムさんの主張の発端となったのは、そもそも以前の学校で女子生徒の発言が無条件に信用され、サムさんの主張が受け入れられなかった一件です。サムさんの母親はそれまで「『女性よりも立場が弱い男性には保護が必要だ』という考えに基づき、男性が男性至上主義に傾倒する」ということが起きるとは想像もしていなかったそうです。

サムさんと母親の間の断絶は深くなり、サムさんはオンラインの右翼的なコミュニティにより強く没頭しました。オンライン上のコミュニティでは、サムさんが13歳の少年だと思う仲間はいなかったそうで、サムさんは仲間に一人前の大人だと認められることがうれしかったとのこと。また、インターネット・ミームを使った会話やコミュニティのリーダーから課せられる右翼的なコメント投稿も、サムさんのコミュニティに対する帰属感を強くしました。

by Soumil Kumar

◆訪れた転機
そんなサムさんの転機となったのが、電車で30分ほどの場所で開催されたトランプ大統領賛成派の集会を見物しに行ったことでした。2017年8月にはシャーロッツビルで白人至上主義者と反対派が衝突し、死傷者が出る事態に発展していたことから、サムさんの母親も「参加ではなく見物に行きたいだけ」と主張するサムさんに付き添って、現地まで付いていくことにしたとのこと。

実際に集会が行われている場所まで行くと、サムさんは参加者に「一体なぜあなたは集会に参加しているのですか?」と質問を始めました。その結果、参加している人たちは、主張が矛盾していたり、ただ不平を言いたいだけだったり、軍服のコスプレがしたいだけだったりして、サムさんを大いに失望させました。また、Redditで有名なオルタナ右翼と話をする機会があったそうですが、その人物もサムさんが想像していたような立派な人物ではありませんでした。


◆オルタナ右翼からの脱却
集会に参加してから数カ月の間に、ゆっくりとサムさんは公立中学での一件に巻き込まれる以前の性格に戻っていきました。サムさんはオンライン上の見知らぬ人々ではなく、学校の友人とメッセージをやり取りするようになり、学校のクラブにも参加するようになったそうです。学校の成績も向上して、家族との会話も増えました。

そんなある日の晩、サムさんは母親の寝室を訪れて「僕がカルトにハマった時、嫌いになった?」と尋ねたとのこと。サムさんの母親が「嫌いではなかったけれど、混乱はした」と答えたところ、サムさんは「僕は自分が嫌いだった。閉じ込められていて、自分がバカだと思った」と語り、最初のうちはオルタナ右翼の主張に疑問があったことも打ち明けました。しかし、自分の発言をしっかりと聞いてくれて、グループの一員として受け入れてくれたコミュニティのメンバーを好きになりたかったのだと語りました。

「僕がオルタナ右翼のコミュニティに参加する前、先生だって親だって自分の言うことに真面目に取り合ってくれなかった。僕はただ、自分の言うことを真剣に聞いて欲しかった。オルタナ右翼の人々は僕のことを合理的な人間として扱ってくれたし、僕のことを笑わなかった」とサムさんは述べたとのこと。サムさんはオルタナ右翼の思想から抜け出しましたが、サムさんの母親はその後もサムさんの言葉について考え続けているそうです。

by rawpixel.com

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in メモ, Posted by log1h_ik

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