メモ

「パッシブ冷却」により電源を喪失しても自然冷却で安全運用できるという小型原子炉が登場


2011年3月11日に発生した東日本大震災で、東京電力福島第一原子力発電所は高さ10mの津波を受けて非常用を含めた電源が壊滅状態となって原子炉の冷却ができなくなり最終的にメルトダウン(炉心溶融)へ到達。1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故と並ぶ国際原子力事象評価尺度「レベル7」の大事故となりました。こうした事故が起きないよう、電源喪失状態になっても自然冷却だけで安全に運用できるという小型の原子炉の開発が進められています。

Small Modular Reactors and Climate Change: The Case of Optimism - Nuclear Plant Journal January-February, 2019 Volume 37 No.1
http://digitaleditions.nuclearplantjournal.com/JF19/28/

Making Nuclear Energy Smaller, Cheaper And Safer : NPR
https://www.npr.org/2019/05/08/720728055/this-company-says-the-future-of-nuclear-energy-is-smaller-cheaper-and-safer

小型原子炉を開発しているのはNuScale Powerという企業。大型の原子炉を1基造る代わりに、モジュール化された原子炉を12基造ってあとで接続することにより、建設スケジュールが半分に短縮されるとのこと。

また、緊急時に故障する可能性があるポンプや発電機に依存しない「パッシブ冷却」設計を取り込み、原子炉を地下のプール内にある格納容器に設置することで、オペレーター不在時や電源喪失時でも安全な状態が維持されるようになっているそうです。

UAMPS Next Generation of Energy - YouTube


小型原子炉には、大型原子炉のように常時稼働させなくていいという利点もあるとのこと。比較的短時間で動作・停止が可能で、それぞれの原子炉ごとに最長2年の運用が可能なだけの燃料があるため、「充電なしで2年使えるバッテリーのようなもの」と表現されています。


アメリカでは原子炉の建設に原子力規制委員会の認証が必要ですが、NuScale Powerは2018年4月にフェーズ1レビューを通過済み。最初の発電所を2026年に建設・稼働させる予定だとのこと。

NuScale Power’s Small Modular Nuclear Reactor Becomes First Ever to Complete Nuclear Regulatory Commission’s Phase 1 Review | NuScale Power – Online Newsroom
https://newsroom.nuscalepower.com/press-release/company/nuscale-powers-small-modular-nuclear-reactor-becomes-first-ever-complete-nucle

ただし、科学者の非営利団体「憂慮する科学者同盟」に所属する原子力専門家エドウィン・ライマン氏は「NuScale Powerは自分たちの原子炉が安全で、大型原子炉と同じ基準を満たす必要がないと信じてる」と憂慮。「パッシブ冷却」設計でも問題が起きる可能性はあると主張しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
核融合発電所を15年以内に実現することを目指すMITの新たな研究がスタート - GIGAZINE

世界初・海に浮かぶ原子力発電所「アカデミック・ロモノーソフ」が完成 - GIGAZINE

最新の加圧水型原子炉「AP1000」や「EPR」がいよいよ中国で実戦投入、対して欧米では導入が停滞中 - GIGAZINE

「先進原子炉」商用化を促進する「原子力エネルギー革新能力法」がアメリカ議会で成立 - GIGAZINE

クリーンで安全性の高い次世代原子力発電「トリウム熔融塩炉」の実現に向けた実験がヨーロッパでスタート - GIGAZINE

ビル・ゲイツが「気候変動の解決には原子力推進が必要」と国の有力者たちへ積極的に働きかけている - GIGAZINE

原子炉を起動・停止する瞬間をGoProで撮影した貴重なムービーが公開中 - GIGAZINE

1万6000もの亀裂が見つかった老朽化の進む原子力発電所が今なお稼働を続けている - GIGAZINE

従来の核融合炉の10倍のエネルギーを生み出し原発よりもはるかに安全な核融合炉をロッキードが開発中 - GIGAZINE

20億年前の地球に存在した「オクロの天然原子炉」に学ぶ原子力エネルギーエコシステムとは? - GIGAZINE

in メモ,   動画, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.