取材

長編VRアニメ「狼と香辛料VR」とVRミステリーADVゲーム「東京クロノス」の制作者トークイベント開催、支倉凍砂と小山恭平が制作秘話を語る


長編VRアニメとして近日公開予定の「狼と香辛料VR」の原作者・支倉凍砂さんや、VRミステリーADVゲーム「東京クロノス」のシナリオライター小山恭平さんが登壇したトークショー「狼と香辛料VR×東京クロノスクリエイターズトーク」がマチ★アソビ vol.22で開催されました。

画面の向こう側へ行くアニメ& ADV
http://www.machiasobi.com/events/vr.html

狼と香辛料VR | Spicy Tails
http://spicy-tails.net/saw-vr/

東京クロノス VRミステリーアドベンチャーゲーム
https://tokyochronos.com/index.html

「狼と香辛料VR」はライトノベル「狼と香辛料」の原作者・支倉凍砂さんが主催する同人サークル「Spicy Tails」が2019年6月3日にOculus Rift・HTCVIVE・Oculus Goなどで公開する予定のVRアニメです。Spicy Tailsは既に世界初の長編VRアニメーション「Project LUX」をリリースしており、その後に続く「狼と香辛料VR」もクラウドファウンディングサイトのCAMPFIREKickstarterで目標金額をはるかに超える合計約7200万円もの資金を集めるなど、国内外から期待を集めています。

VRで生き生きと動くホロの様子は以下のムービーで見ることができます。

SaW20190228 - YouTube


そして、支倉凍砂さんとクロストークを繰り広げたのは、「東京クロノス」のシナリオライター・小山恭平さん。東京クロノスはVR空間で繰り広げられるミステリーADVゲームで、2018年5月開催のマチ★アソビ vol.20にて制作発表されていました。

「楽園追放」のモーション監督など3人のクリエイターが集まり新作VR ADVも発表されたトークイベント「今こそアドベンチャーゲームの未来を語ろう。」


「狼と香辛料VR×東京クロノスクリエイターズトーク」が開催されたのは、徳島市内の東新町商店街にあるufotable CINEMAです。


イベントには「狼と香辛料」作者の支倉凍砂さん、「東京クロノス」シナリオライターの小山恭平さん、「東京クロノス」総合プロデューサーの岸上健人さんが登壇しました。


トークショーではまず、「狼と香辛料VR」が話題にのぼりました。「狼と香辛料VR」は完全なアニメーション作品ですが、「観る」のではなく、キャラクターの体温を感じるほどの臨場感とリアリティで「体験」するコンテンツだとのこと。現状のVRコンテンツはゾンビもののようなホラー作品が主流なので、かわいい二次元のキャラクターと一緒に新たなVR体験をして欲しい、との願いが込められた作品だということでした。


「狼と香辛料VR」は原作者の支倉さんがシナリオを書くだけではなく、キャラクターデザインも小説「狼と香辛料」のキャラクターデザインを務めた文倉十さんが務めるという、狼と香辛料のファンにはたまらない制作陣となっています。この布陣を同人サークルが実現してしまうということで、「とんでもないプロジェクトがある」と業界でも話題となっているそうですが、支倉さんからは「原作者が出資と企画をしたら、止める理由が誰にもない」と頼もしい一言。すでにSTEAMのストアページが公開されていて、リリース日も2019年6月3日に決定しています。


「東京クロノス」も、二次元のキャラクターとともにVRの世界に入っていけるという意味で「狼と香辛料VR」と共通したコンセプトを持つ作品です。2019年3月20日にOculus版とSTEAM版をリリースされるや否や、両プラットフォームのVR部門で売上ランキング1位に輝くなど、VRゲームとしてもビジュアルノベルとしても新しいタイプのADVゲームとして注目を集めています。


画面越しだったこれまでのゲーム体験をガラッと変えてしまうVRビジュアルノベルに仕上がっているとのことです。


VRコンテンツの新しい地平を切り開く2作品について語られたところで、メインの「クリエイターズトーク」のコーナーに突入。クリエイターとファンとの距離が近いマチ★アソビならではの突っ込んだ質問とギリギリな回答が繰り広げられることとなりました。


まず最初は壇上の岸上さんから、小説家を本業とするふたりに向けてVRのシナリオ作りと小説を書くことの違いは何かとの質問がありました。これに対して支倉さんは、ハードウェアの制約が大きなポイントだったと回答。

というのも、VRゲームでは同時に登場させられるキャラクターは2名が限度で、舞台も広い草原などは作れず広めの部屋が精一杯。このために、「狼と香辛料VR」は主人公・ロレンスとホロの2人で織りなす物語になったとのこと。


アニメーション作品を作った支倉さんが「現状のマシンスペックから何ができるかを考える」というゲーム制作に近い姿勢でシナリオ作りに臨んだ一方で、ADVゲームのシナリオを作った小山さんはあまり制約を感じなかったそう。

ただし、物語の目線となるキャラクターとプレーヤーが同一の存在なので、心理描写などを通じてユーザーにキャラクターと同じ気持ちになってもらうのが大変だったという作家ならではの苦労があったとのこと。例えば、プレーヤーは普通、ほかの人に突然殴りかかったりはしませんが、ゲームのシナリオではキャラクターに突拍子もない行動を起こさせなければならないため、回想シーンを入れたり、プレーヤーをあえて心理的に追い詰めるような演出を駆使して物語を作ったと語りました。


岸上さんの質問が終わったところで、マイクは会場のファンへ。ファンからは「VRの制約により書けなかったシナリオは何か」との質問が飛び出ました。支倉さんが実現させたくても実現できなかったと語ったのは、「柔らかい物に触れること」だったとのこと。エンジニアの方がいい感じに弾力を持ったぬいぐるみを実装してくれたのですが、ゲーム内でそれを触ると、なにか違う…という感じが出てしまって難しかったそうです。


小山さんからは、キャラクターに全力疾走させようとしても、プレーヤーが酔ってしまうのでできなかったとの回答。また、プレーヤーは基本的に身を起こした状態でプレーするので、キャラクターに仰向けに寝るような姿勢を取らせることもできなかったとのことです。

「クリエイターになったきっかけは?」という質問では、小山さんが友人のすすめで「秒速5センチメートル」を見たことと回答。ここからアニメやライトノベルにはまっていきクリエイターになろうと思ったとのことですが、それまで本をほとんど読まなかった高校時代の小山さんが、初めて高校の図書館で手にしたのが「狼と香辛料」だったそうです。


支倉さんが作家になった経緯は既によく知られているなためか、さらに一歩踏み込んで、「VR作品を作ろうと決めたきっかけ」を回答。そこでは、なろう系初音ミクなど「まさかそんなに流行しないだろう」と何度もブームを逃してきた苦い経験があったとのこと。特に初音ミクについては、ブーム当初から始めていれば「いまごろ米津玄師くらい有名になれてたのになあ」と冗談を飛ばし、会場を爆笑の渦に巻き込んでいました。


そこで、「これはすごいものが来そうだ」と見込んだVRでアニメーション作品を制作しようと決心したとのこと。そんな支倉さんが是非VRで観たいと期待しているのが「ゆるキャン△」。VR空間でたき火をはさんだ向かいに志摩リンちゃんがいれば何も要らない、と熱く語る支倉さんに会場のファンも大きくうなずいていました。

そんな期待とは裏腹に、VRコンテンツはあまりに新しい形態のため、版権管理の際にも「これはゲームなのかアニメなのか」と担当者が混乱するので、既存のコンテンツホルダーはいまいち動きが鈍いそう。そういった困難さから来るVRコンテンツの停滞感を、原作者だからこその強みで突破口を開いてくれる「狼と香辛料VR」に、会場の期待は高まっていきました。


会場では今回のトークショーが世界初公開となる新情報も発表されました。その最初のひとつが、東京クロノスを制作したMyDearestと、ねんどろいどやfigmaなどのフィギュアシリーズで有名なグッドスマイルカンパニーのコラボレーションです。今後は製作委員会に近い体制で、グッズ化なども視野に入れた展開が企画されているとのことです。


新情報の2つ目は東京クロノスのノベライズ決定です。執筆するのはもちろん今回登壇した小山さん。出版は7月末の予定とのことで、締め切りが迫る中駆けつけてたのはこの発表のためでもあるということでした。


????マチアソビイベント 大盛況のうちに終了‼︎????

「狼と香辛料VR × 東京クロノス」クリエイターズトーク終了しました!!会場の方からの沢山の質問から、拡散NGの話まで大盛り上がりでした!!

皆さん、#狼と香辛料VR#東京クロノス 買いましょうね!!PSVR版にもご期待ください!!#マチアソビ pic.twitter.com/LTZi0lhz4z

— 「東京クロノス」公式 (@tokyo_chronos)


なお、マチ★アソビ vol.22では「東京クロノス体験会」も実施されていました。


無料でもらえるパンフレットはこんな感じ。


会場では実際にVRゴーグルを装着してゲームを体感することができました。


そしてこれが徳島駅前ポッポ街商店街のグッドスマイルカンパニーブースです。


会場には実際にフィギュアのパーツを成形するために使用された金型などが展示されていましたが……


ブースの入り口付近で東京クロノスのポスターも発見。


ポスターの横に貼られた付せんで、グッドスマイルカンパニーと東京クロノスとのコラボが告知されていました。仮想現実が舞台の東京クロノスと、現実世界でのフィギュアを作るグッドスマイルカンパニーの、両者の強みを生かしたコラボレーションから今後は目が離せなくなりそうです。

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in 取材,   アニメ,   ゲーム, Posted by log1l_ks

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