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人間が労働力をAIに奪われないよう対抗するには「余暇」が重要かもしれない

by Artem Bali

近年めざましい進歩を遂げているAIやロボット分野の成長に従って、「自分の仕事がAIなどで自動化されてしまうのではないか」と危機感を覚えている人は多いはず。そんなAIやロボットによる仕事の自動化に対抗するため、「余暇を楽しむこと」が重要かもしれないと、ケロッグ経営大学院の心理学者であるAdam Waytz氏が述べています。

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https://sloanreview.mit.edu/article/leisure-is-our-killer-app/

Waytz氏は、「あなたがどんな未来予想を信じるにしろ、私たちは近い将来ロボットに仕事を奪われることを心配するべきです」と述べており、トラック運転手も弁護士も、ロボットの設計者すらも安全ではないとしています。そんな中で、人々にロボットが身につけられないようなスキルを身につけることが、自分の仕事を守る鍵になると教える人も現れているとのこと。

「ロボットやAIによって自動化されないスキルとはそもそも何なのか?」という疑問について、あらゆる知識やスキルを豊富に身につけることで、ロボットやAIによって自動化されにくくなるという主張もあります。しかしWaytz氏は、人々が常に新たな時代へ適応するために学習しなくてはならない現状では、このアプローチは持続可能ではないと考えているそうです。

by Steve Jurvetson

Waytz氏が考えるAIによる自動化に対抗できるスキルの1つが、人間の「社会性」だそうです。人間が持つ社会性は他人の感情を理解し、自分とは違う他人の視点から物事を観察することを可能にします。社会性というスキルによって、人々は同僚や顧客と共感的なコラボレーションを実現することができるのであり、多くの企業が従業員育成の際に社会性を訓練することに注力しているとのこと。

労働者の社会性が重視される風潮は、ロボットやAIによる自動化の波に対抗する動きになるかもしれないとWaytz氏は考えています。ハーバード・ビジネス・スクールのMichael Norton教授とWaytz氏が共同で行った研究では、社会的・感情的スキルを要求される仕事がロボットに置き換えられることに多くの人々が反発を覚えていると明らかになりました。一方で、データアナリストのような分析スキルが要求される分野においては、AIが仕事を代替することに人々はそれほど反発しませんでした。

また、ロボットやAIは同じ仕事を繰り返し行うことには優れていますが、予想外の変化やイレギュラーな事態に対応しづらいという弱点があります。たとえば、電気自動車メーカーのテスラで発生した生産遅延は、ロボットによるオートメーション化を進めたものの、ロボットが「予期せぬ物体の動き」に対応できないため生産プロセスにボトルネックが生じてしまったことが原因だとWaytz氏は指摘。

一方で人間は異常な事態に直面しても状況を見極め、複数の仕事を抱えながらのマルチタスクを行い、学習を行うことができます。そのため、Waytz氏は人間が持つ柔軟な対応力もロボットやAIに対抗する大きな武器になり得ると考えています。

by Fox

社会性と柔軟な対応力が求められている仕事は労働者にとってやりがいのあるものかもしれませんが、これらの高度な仕事は非常に疲れるものであるのも確かです。高度な労働に従事し続けると精神や身体に大きな負担となるため、高度な仕事に就く人々の離職率は高くなりがち。

そこでWaytz氏は、ロボットやAIに置き換えられにくい仕事に従事する人々にとって重要なのは「しっかりと余暇を楽しむこと」であると主張しています。「自分の仕事がいつ自動化されてしまうかわからない」という心配は、より精神に負担をかけて事態を悪化させてしまうおそれがありますが、余暇を楽しんで心に余裕を取り戻すことが労働者に優位をもたらすとWaytz氏は述べました。


すでに多くの組織が従業員の燃え尽き症候群を防ぎ、生産性を向上させるために余暇が重要であるという認識を持ちつつあります。Waytz氏によれば、企業は従業員により長い休暇を取るように勧め、勤務時間外は余暇を楽しむことに集中させようという施策をとっているとのこと。

たとえば自動車メーカーのダイムラーでは、休日に仕事関連のメール返信を行わなくて済むように、メールの自動返信機能を導入しています。ダイムラーでは休暇中の従業員に送信するメールは自動削除されるようになっており、送信者に「メールは自動削除され、受信者は応答しない」というメッセージが送られるそうです。

by bruce mars

Waytz氏は従業員にしっかりと余暇を楽しませることが燃え尽き症候群を防止するだけでなく、労働の自動化が進む時代に別の機能ももたらすと考えています。余暇を楽しむという行為はロボットやAIができないことであり、労働者が余暇を楽しむことでよりよい思考家や労働者になれる可能性があるとのこと。

かつてWaytz氏は、サンフランシスコのベイエリアでテクノロジー産業に従事する人々に、「人間にはできてロボットにはできないことは何ですか?」と尋ねたことがあるそうです。インタビューを受けたうちの1人であるベンチャーキャピタリストのHenry Wang氏は、「ロボットの思考はさまようことがありません」と述べ、それに対して人間は思考をさまよわせることができると答えました。気を散らすことなく仕事をし続けられることがロボットの利点ですが、人間は余暇の間に思考をさまよわせることで、ロボットやAIにはできないことを行える可能性があるとWaytz氏は述べました。

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in メモ,   ソフトウェア, Posted by log1h_ik

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