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「夏休み」は貧困家庭の子どものメンタルに悪影響を及ぼす


夏休みなどの長期休暇は、普段学校に通っている子どもたちが放課後や週末の休みといった短い期間では経験できない、特別な体験ができる貴重な時間です。しかし、貧困家庭の子どもたちは夏休みにポジティブな経験が得られず、夏休み後のメンタルに悪影響を及ぼしていることが明らかになりました。

IJERPH | Free Full-Text | Socio-Economic Inequalities in Adolescent Summer Holiday Experiences, and Mental Wellbeing on Return to School: Analysis of the School Health Research Network/Health Behaviour in School-Aged Children Survey in Wales | HTML
https://www.mdpi.com/1660-4601/16/7/1107/htm

Poorer children’s summer holiday experiences linked with worse mental well-being
https://theconversation.com/poorer-childrens-summer-holiday-experiences-linked-with-worse-mental-well-being-114533

富裕層と貧困層の経済格差は世帯主だけでなくその子どもの生活にも大きな影響を与えており、子どもの間に広がる不平等は特に学校が長期休みの時期に拡大するとされています。学校で提供される給食を長期休み中は食べられなくなるほか、裕福な子どもたちが休みの間にあちこち遊びに行けるのに対し、貧困層の子どもたちはイベントに参加する費用を負担できません。


以前の研究でも、貧困家庭に生まれた子どもたちは裕福な家庭に生まれた子どもたちと比較して、より不幸だと感じていることが判明しています。また、夏休みなどの長期休暇が影響を与えるのは食事やイベントといったものだけにとどまらず、普段は学校で教育を受けられている貧困層の子どもが、夏休みになって(PDFファイル)学習機会を奪われてしまうこともわかっています。

その一方で、これまでのところ夏休みに体験するイベントの違いが子どもの幸福度に与える悪影響については、調査された研究がなかったとのこと。そこで、イギリスのウェールズに本部を置くカーディフ大学の研究チームは、貧困家庭の子どもたちと裕福な子どもたちが夏休みに経験するイベントの違いにより、9月になって学校が始まった際にどのような変化があるのかを調査しました。

by Yulianto Poitier

研究チームはウェールズに住む11歳~16歳の子どもたちが通う193の中等学校を対象に、夏休み中にどのような経験をしたかを尋ねるアンケート調査を実施しました。調査対象となった子どもたちの数は10万3971人におよび、調査は夏休みが終わってすぐの9月に行われたとのこと。

アンケートでは空腹を感じたまま寝ることになったり孤独を感じたりした頻度や、友だちと過ごしたり外で運動したりした頻度を尋ねました。これらの項目に加え、子どもたちの精神的な健康や幸福度を調査するための質問も行い、夏休みの経験が子どもたちのメンタルに与える影響について研究チームは分析しました。

アンケートの結果、やはり貧困家庭の子どもたちは夏休みの間に空腹や孤独を感じる頻度が高く、友だちと過ごしたり外で運動したりする頻度も低かったとのこと。そしてこれらの項目が、新学期に入ってからのメンタルの悪化にもつながっていることも判明しました。測定された項目の中で孤独感は幸福やメンタルヘルスとの関連性が最も高かったそうで、貧困層の子どもたちは裕福な子どもたちと比較して、2倍以上も孤独感を訴えていることが明らかになっています。

by mohammad hosein MOSAYEBI

近年、イギリスでは貧困層の子どもたちに対し、夏休みの間に金銭的な援助を行う慈善団体や政府の取り組みが増加しつつあるとのこと。こういった福祉政策を推し進めることで、子どもたちが夏休みの間に受ける不平等を解消していくことが重要だと研究チームは述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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