サイエンス

史上初の「ブラックホールの撮像」に成功、太陽の65億倍の質量で地球から5500万光年の銀河M87に存在


ブラックホールは光さえ脱出できないほど強い重力を持った天体で、通常の手段では観測することができません。「イベントホライズンテレスコープ(EHT)」は、そんなブラックホールの姿をとらえるべく世界中に設置された巨大電波望遠鏡を連携させる国際プロジェクトで、日本の国立天文台も参加しています。そのEHTが2019年4月10日22時から、研究成果についての記者会見を世界同時配信します。

Event Horizon Telescope Japan | EHT-Japan
https://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/

4月10日(水)22時、イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・プロジェクトと #国立天文台 ほかは、EHTによる研究成果についての記者会見を行います。国立天文台はこの記者会見をライブ配信します。 https://t.co/FVtpocjZ2Z
YouTube:https://t.co/XQGSw7fJvp
ニコ生:https://t.co/bHUlq9O2fB

— 国立天文台 (@prcnaoj)


EHTが今回公開するのは、地球が位置する天の川銀河の中心で膨大なエネルギーを放出している領域の観測結果です。「いて座A*(エー・スター)」と名付けられたこの領域には、近傍にある天体の挙動から超大質量ブラックホールが存在すると推測されていて、1974年に発見されて以来、世界中の天文学者の注目を集めてきました。

ブラックホールの重力は空間をゆがめてしまうほど強力なため、光を含む電磁波が脱出することができず、直接観測することは不可能だといわれています。そこでEHTは複数の電波望遠鏡を連携させる「Global mm-VLBI Array (GMVA)」というプロジェクトと共同して、アメリカ・チリ・南極などにある合計8つの電波望遠鏡をつなぐネットワークを構築。「地球規模」の仮想的な超巨大望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡2000倍もの解像度を誇り、8000マイル(約1万3000km)のかなたにある野球ボールの縫い目の数を数えられるともいわれています。

以下の画像は、参加している電波望遠鏡の位置関係を示したインフォグラフィックです。

by ESO/O. Furtak

超巨大望遠鏡を作り出したEMTはまず、地球から約2万6000光年離れた「いて座A*」にある超大質量ブラックホールの「事象の地平線(イベント・ホライズン)」に飲み込まれる星間ガスを観測しました。そして、光速に近い速度で運動し、数十億度にも達する温度のプラズマが放出する電磁波からブラックホールの影である「ブラックホール・シャドウ」をとらえ、その輪郭からブラックホールの姿を浮き彫りにしようとしています。

by Hotaka Shiokawa

EHTの発足当時は、一晩で平均して1ペタバイト(1000TB)以上にもなる膨大な観測データを統合し処理することができませんでしたが、技術の発達により観測データを成果として形にする見通しが立ったとのこと。その成果を発表する記者会見のライブ配信は2019年4月10日22時からアメリカやベルギーなど世界6カ国から同時配信される予定で、日本においても同時刻から国立天文台がYouTube Liveニコニコ生放送で見ることができます。

◆追記 2019/04/11 09:10
実際に発表されたブラックホールの姿がこれです。なんだかおぼろげな画像に見えますが、これまで理論上の存在だったブラックホールを、CG合成やシミュレーションではなく実際の観測結果として撮像することができた点において画期的な画像だとのこと。撮影対象となったのは、地球から比較的近いために最も大きく見えるとされる「いて座A*」ではなく、おとめ座銀河団の「M87」でした。

by EHT Collaboration

上の画像に写っているのはブラックホールに吸い込まれている超高温のプラズマガスが放つ電磁波です。ブラックホールに近づいた電磁波はブラックホールに吸収されてしまいますが、ブラックホールの重力で空間がゆがめられた結果、本来地球の方向に飛んでくるはずではなかった電磁波がブラックホールの周囲を回り込むようにして縁取るため、リング状に見えます。リングの中心の黒い影がブラックホール・シャドウで、ブラックホールの表面ともいえる「事象の地平面」はブラックホール・シャドウの約40%ほどの大きさだと見られています。

by Nicolle R. Fuller/NSF

同じM87を可視光で観測した結果がこれです。

by NASA, ESA, and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)

ブラックホールが非常に強いエネルギーを放っていることと、今回公開された画像より倍率が低いため、可視光で撮影した画像では真っ白に光る点のように見えています。


今回公表された画像は8基の電波望遠鏡を使用して観測されましたが、今後さらに電波望遠鏡を追加し、より鮮明な画像やムービーを撮影していく方針とのことです。

by NRAO/AUI/NSF

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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