アート

手のひらサイズに1年の暦をまとめた美しすぎる「ミニチュア年鑑」は富の象徴だった


技術が発展した現代では、スマートフォン1つで日付や時間、1週間後の天気からおいしいカレーの作り方までさまざまな情報を瞬時に手に入れることができます。しかし、スマートフォンが存在しない時代の人はカレンダーの代わりに、暦を書き記した年鑑を持ち歩いていました。そんな年鑑の中でも、特に手のひらサイズの小さなミニチュア年鑑は王侯貴族が財を尽くして作り上げたものも存在し、現代でもなお骨董芸術品として高い評価を得ているとAtlas Obscuraが解説しています。

For Centuries, Know-It-Alls Carried Beautiful Miniature Almanacs Wherever They Went - Atlas Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/miniature-almanacs


数千年前の古代バビロニアでは、粘土板に彫られた年鑑が使われていた痕跡があるそうです。粘土板に刻まれた暦の精度は低く、実用に耐えうるものではなかったものの、ここから人類は「暦を何かに書き記して日常的に使うようになった」と、ケンブリッジ大学の歴史研究家であるローレン・カッセル氏は述べています。

農耕技術が進化するにつれて、穀物を刈り取る時期や、種をまくべき日を把握したいという人がヨーロッパを中心に増えました。そこで、ヨーロッパでは古代から中世にかけて、キリスト教の儀式を軸にした暦と年鑑が作成されました。14世紀から16世紀には、年鑑は1年でおよそ40万部も刷られたとみられていて、この部数を超えるのはおそらく聖書のみだろう、と歴史家のバーナード・キャップ氏は推測しています。


もちろん年鑑は1年の暦を載せたものである以上、365日という有効期限があり、12月になると廃棄されてしまうもの。それにも関わらず、中世から近世のヨーロッパでは非常に高価で美しい年鑑が数多く作られ、上流階級の間で手のひらサイズのミニチュア年鑑を持つことが当たり前となりました。

例えば、以下の画像は1785年に作られた年鑑。小さな年鑑本体を収納するケースは、なんと象牙と貴金属でできています。


以下の暦は巻物状のミニチュア年鑑で、1792年にロンドンで制作されたもの。暦が印刷された巻物を収めるケースは、やはり象牙でできています。こうした年鑑には天気予報や時刻表、潮汐表、貨幣・重量・距離の単位換算表などが書かれているとのこと。


パトリシア・ピストナー氏はこうしたミニチュア年鑑を収集するコレクターの1人で、何十種類ものミニチュア年鑑を所有しているとのこと。もともとはピストナー氏がドールハウス用のミニチュアを探していた時に18世紀のフランスのミニチュア年鑑に出会ったのがきっかけで、そこから34年かけて収集活動を続けているとのことですが、まだ95種類しか見つけられていないとピストナー氏は述べています。


以下のミニチュア年鑑はシルクと金の刺しゅうで作られたもので、中央には子どもの肖像画が描かれています。ピストナー氏が30年以上かけて集めたコレクションはどれも非常に手が込んでいる上に高価な素材がふんだんに使われていて、ミニチュア年鑑には「暦を知る」という目的以外にも、持ち主の富裕ぶりを誇示する目的もあったのではないかと考えられています。


「ミニチュア年鑑は永遠に続くわけではありませんが、貴族たちは少なくとも1年以上はこだわりのアイテムを持ち歩いていました。ミニチュア年鑑はスマートフォンと同様に持ち運びが可能ですが、スマートフォンの倍以上も美しいものです」とAtlas Obscuraは述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
アニメ「ラブライブ!」の公式サイトが何者かによって乗っ取られる、原因は「ドメイン移管の承認」か - GIGAZINE

なぜか大量のガーフィールド電話が次から次へと流れ着くビーチの謎 - GIGAZINE

なぜ古代の人々はそら豆を「死の象徴」として恐れていたのか? - GIGAZINE

1000年前のヴァイキングが愛した伝説のボードゲーム「ネファタフル」とは? - GIGAZINE

メッセージを暗号化して「音」の一つ一つに置き換える遊びが大作曲家たちによって行われていた - GIGAZINE

大昔にまな板として敷かれていた本が今や世界に4冊しかない本としてユネスコ記憶遺産に登録されている - GIGAZINE

in アート, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.