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無人の軍事用ロボットによる戦闘行為は既に起こっているという指摘

by Anguskirk

大きな戦果を期待される「無人軍事用ロボット」に関する倫理的問題は、長らく議論の対象となっています。戦争倫理などに詳しいランカスター大学哲学科準非常勤講師のマイク・ライダーさんは軍事用ロボットが直面する倫理的問題について解説しています。

US Military Changing ‘Killing Machine’ Robo-tank Program After Controversy - Defense One
https://www.defenseone.com/technology/2019/03/us-military-changing-killing-machine-robo-tank-program-after-controversy/155256/

Killer robots already exist, and they’ve been here a very long time
https://theconversation.com/killer-robots-already-exist-and-theyve-been-here-a-very-long-time-113941

アメリカにおける「軍事用ロボット」の概念は新しいものではありません。起源を辿れば、第二次世界大戦中に開発された「近接信管」は「ある種の『ロボット』と言える」とライダーさんは主張しています。近接信管は、目標に着弾しなくても一定の範囲内に着弾すれば砲弾を炸裂させて目標物にダメージを与えることができるというもの。近接信管のようなロボット的な技術は数多く存在していることから、ライダーさんは「軍事用ロボットは既に戦争に使用されている」と主張しています。それでは今、何について議論すべきなのかというと、「軍事用ロボットをなぜ使うのか?」そして「どのように運用するのか?」さらに「使われるのであれば人間はどのように軍事用ロボットと関わるべきなのか?」という点だとライダーさんは語っています。

by NATO North Atlantic Treaty Organization

現代的な軍事用ロボットが開発され始めたのは2003年からです。2003年、アメリカ国防省は「SWORDS」と呼ばれる銃器を取り付けた爆弾処理ロボットを開発。2007年のイラクでは実践投入されましたが、不具合によりSWORDSは配備されなくなりました。SWORDSの失敗を受けてアメリカ軍の軍事用ロボット研究は下火になりましたが、一方で軍事用ロボットに関する倫理的な議論は盛んに行われるようになりました。2012年、軍事用ロボットをどのように扱うかをとりまとめたアメリカ国防総省指令の「3000.09」を、当時のバラク・オバマ大統領が策定します。

初期の軍事用ロボットはあくまで人間がコントロールすることが前提となっていましたが、軍事ドローンなどの次世代機は「人間のコントロールなしでも稼働する」ものとなっています。軍事ドローンは搭乗者が不要の無人機であるため、パイロットの生命のリスクといった類の軍事的コストを削減できます。無人機による軍事行為は常に議論の的となっていますが、政治的には「軍事行動で死者が出るよりははるかに少ない批判で済む」とライダーさんは語っています。

by U.S. Army Garrison - Miami

無人軍事用ロボットにおける「人間の役割」について、ライダーさんは「オペレーターとして無人軍事用ロボットを監視すること」としています。しかし、オペレーターがいようがいまいが無人軍事用ロボットが敵を殺すことができることも確かであり、「『無人軍事用ロボットが自動で敵を殺すこと』と『オペレーターありの軍事用ロボットが敵を殺すこと』に何の違いがあるのだろうか」と疑問を提起しています。

さらに、ライダーさんは「人間の存在は軍事用ロボットにとっての『アリバイ』や『倫理的なカバー』になっている」と指摘。現代の軍事用ロボットは人の手がほぼ要らないため、オペレーターの存在は「軍事用ロボットの動作を監視し、ロボットが無人の状態に置かれていないと世間にアピールするための言い訳」だとしています。こういった現状について、ライダーさんは「軍事用ロボットの活動が人間の命令によるものであると考えることは慰めになるかもしれません。しかし、実際問題として無人軍事用ロボットは既に使用されており、批判する前に事実を認めなくてはいけません」と語っています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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