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Spotifyのおかげでインディーズのミュージシャンが音楽でお金を稼げるようになっている


SpotifyやApple Musicのような音楽ストリーミングサービスは、人々が音楽を聞く方法や音楽シーンに大きな変化をもたらしているほか、ミュージシャンが音楽で収益を得るための新たな方法になっています。インディーズのミュージシャンであるスティーブ・ベンジャミン氏が、「Spotifyのおかげで音楽から収入を得られるようになった」という自身の体験をまとめています。

How Spotify & Discover Weekly Earns Me $400 / Month — Steve Benjamins
https://www.stevebenjamins.com/blog/spotify-and-discover-weekly

ベンジャミン氏は2013年から音楽をインターネット上でリリースしてきましたが、長い間再生数は低い水準で推移していました。ところが、2017年にSpotifyで自身の音楽をリリースするようになってから、急激に再生数が伸びたとのこと。以下のグラフはベンジャミン氏の音楽が1週間にどれだけ再生されたのかを表しており、Spotifyに登録してからは1週間の再生数が1万回を超えることも増え、グラフの最後の方では毎週のように数万回以上の再生数が得られていることがわかります。


そして、ベンジャミン氏が1カ月あたりに音楽から得ている収入の推移を表したグラフがこれ。2018年の6月以来、毎月200ドル(約2万2000円)以上の収益を得ており、2018年12月以降は1カ月あたり400ドル(約4万4000円)以上の収入がある模様。ベンジャミン氏はツアーに参加せず、グッズの販売もしておらず、レーベルにも所属していません。音楽からの収入はほぼ全てSpotifyから得ているとのこと。


Spotifyに登録する以前のベンジャミン氏の宣伝状況は「ひどい物だった」とのことで、音楽系のブロガーにEメールを書くのに数時間を費やし、時折ブログに取り上げられては瞬間的に再生数の増加を得るだけだったそうです。

以下のグラフの、矢印で示されている部分が音楽ブログに取り上げられたタイミング。確かにブログに取り上げられると再生数が増加する効果がありましたが、急速に再生数は減少し、やがて元の低水準に戻ってしまっていることがわかります。


しかし、ベンジャミン氏がSpotifyに登録してみたところ、状況は大きく変化しました。Spotifyは毎週月曜日にユーザーの好みに応じたプレイリストをオススメしてくれる、「Discover Weekly」というサービスを提供しています。ここでベンジャミン氏の楽曲が紹介されると、かなりのユーザーが自身の楽曲を再生してくれるだけでなく、「一貫した再生数が維持される」という驚くべき効果もみられたとのこと。

ベンジャミン氏はDiscover Weeklyのために何もしておらず、PCの前で読まれるかどうかもわからないEメールを書く必要もありませんでした。月曜日になると自動的に新たなユーザーへとベンジャミン氏の楽曲が紹介され、紹介されたユーザーの中にはベンジャミン氏の楽曲を聞いてくれる人が少なからず存在していました。以下のグラフの、矢印で示された箇所がDiscover Weeklyで紹介されたタイミングです。


また、再生数のデータよりもさらにベンジャミン氏が驚いた点として、「自身の楽曲が世界中の思いも寄らぬ場所で聞かれている」という事実だそうです。たとえば友人から「スロベニアのカフェで君の作った楽曲が流れてきたよ」と報告を受けたり……


YouTubeにベンジャミン氏の楽曲のピアノカバーが投稿されたり。

We Used To Live


We Used To Live (Steve Benjamins Piano Cover)


友人が偶然ベンジャミン氏の楽曲を聞くこともあり、これまで届かなかった範囲にまで自身の楽曲が届いているという手応えを、ベンジャミン氏は感じているとのこと。


これに加え、ベンジャミン氏はリスナーから毎週のようにTwitterのダイレクトメールやEメールで、「曲を聞いたよ!」「歌詞の意味を教えて欲しい」「友だちにあなたの曲を紹介しました!」といったメッセージを受け取っているそうです。ベンジャミン氏は、「これはクレイジーなことです」と述べ、リスナーからの反応をもらった時の喜びをうまく伝えるのは難しいとしています。リスナーからのメッセージはベンジャミン氏に「もっと音楽を作りたい」というモチベーションを与え、足取りを軽くしてくれるとのこと。

Spotifyのプレイリストには、Discover Weeklyのようなアルゴリズムによって作られたもの、Spotifyの公式エディターによって作られたもの、リスナーによって作られたものの3種類があります。一般的に、「Discover Weeklyで紹介されるには、Spotifyの公式エディターによって紹介されなければならない」と思われていますが、実はベンジャミン氏のBamBooというバンドは公式エディターに紹介されたことがないにも関わらず、Discover Weeklyで紹介されたそうです。

もっとも、ベンジャミン氏の個人制作楽曲は公式エディターによって取り上げられたことがあるそうで、「公式エディターに紹介してもらえる最良の方法は、シングルレコードをリリースすることです」と述べています。Spotifyではアルバムやシングルレコードをリリースする4週間前に、レコードの中から1曲を選んで送付する必要があります。公式エディターはレコードごとに提出された1曲を聞いて、楽曲をプレイリストで紹介するかどうか判断しているとのこと。ベンジャミン氏は、「1年に10曲入りのアルバムを1枚リリースすると、エディターに聞いてもらえるのは1曲だけです。しかし、こまめにシングルをリリースすれば、その度に楽曲を聞いてもらえます」とアドバイスしました。

また、ベンジャミン氏が発見したDiscover Weeklyで紹介されやすい楽曲の傾向とは、「リスナーが楽曲をセーブする割合が高い」楽曲だったとのこと。このほかにもインディーズのアーティストには、「影響力のあるリスナーのプレイリストに追加する」という活動を行うプロモーション企業が営業をかけてくることもあるそうで、ベンジャミン氏が少しだけ試してみたところ「それなりの成果が得られた」と述べています。


ベンジャミン氏はApple Musicにも登録しているそうですが、Spotifyと比較するとかなり再生数に違いがある模様。SpotifyとApple Musicにおける再生数を比較した以下のグラフを見ると、Apple Musicは一貫して再生数が低迷していることがわかります。ベンジャミン氏はこの違いについて、SpotifyにはDiscover Weeklyが存在している点が大きいと考えています。


生きるために必要な金額の全てを音楽から得ようと思うと、SNSでのアピールやツアー、グッズの販売といったあらゆることを行う必要があります。しかし、ベンジャミン氏はわずらわしい企業的な活動にとらわれることなく、音楽を作ることだけでミュージシャンが生活できる状態が理想だと考えているとのこと。

もちろんベンジャミン氏が音楽から得ている1月あたり数万円の収益だけでは、生計を立てることはできません。しかし、ベンジャミン氏は通常の仕事を終えた後の夜に音楽だけを作って、少しのお金を稼げている現在の状況が気に入っているそうです。「私は楽曲を聞きたい人のために音楽を作っていて、それ以外のことはボーナスです」とベンジャミン氏は述べています。

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in メモ,   ネットサービス,   動画, Posted by log1h_ik

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