2019年03月20日 21時00分ゲーム

ニュージーランド銃乱射事件で亡くなった元プロゲーマーのフットサル代表選手兼先駆的なアプリ開発者とは？

2019年3月15日にニュージーランド南部のクライストチャーチにあるモスクで発生した銃乱射事件では、少なくとも50人の死者および50人以上の負傷者が出ました。犠牲者のひとりであるアッタ・エレイヤン氏(33歳)は、クウェート出身のニュージーランド人男性で、対戦FPSゲーム「カウンターストライク(CS)」のプロプレイヤーでありながらフットサルのプロ選手でもあるという一風変わった経歴を持つ人物でした。

Remembering Atta Elayyan, CS:S pro and victim of Christchurch Shooting
https://www.dailyesports.gg/remembering-atta-elayyan-christchurch-shooting-victim/

エレイヤン氏はクウェート出身のニュージーランド人で、「crazyarab」という名前でカウンターストライクなどのゲームを遊んでいたという人物。最初にカウンターストライクで遊び始めたのは2002年頃で、当時12歳だったというエレイヤン氏は「仲間から招待された」と記しています。

2006年に公開された、エレイヤン氏がCSをプレイするムービーがYouTube上には記事作成時点でも残っています。

crazyarab pwns at GotGames invite Comp - YouTube

カウンターストライクのバージョン1.3から1.6にかけては有名チームに勝利したことはなかったとしていますが、「CS：S」でついに著名チームに勝利するに至ったとのこと。当時所属していたCSのチームが解散したあとは、「NewType」というチームに所属し、プロゲーマーとして活躍。所属チームは最終的にオーストラリアのトップチームのすべてを倒すほど強いチームへと進化していったそうです。

ニュージーランドを拠点に活動していたCSチーム・NewTypeの写真。右下でしゃがんでいるのがエレイヤン氏です。

エレイヤン氏が所属していたCSチーム・NewTypeの輝かしい戦績は以下のページにまとめられています。

Newtype Results - Gameplanet Forums Newtype
https://www.gpforums.co.nz/threads/258109-Newtype-Results

優れた成績を残したのち、エレイヤン氏は2008年にチームを去り、プロゲーマーとしてのキャリアを終わらせたそうです。

エレイヤン氏は大学でコンピューターサイエンスの学位を取得するために学業に専念するようになり、その結果としてCSから徐々にフェードアウトしていく結果となったとしています。大学卒業後はコンピューターセキュリティ企業のFireTrustでUXデザイナーとして働き、その後間もなく「Chatflow」というサービスを開発しながら起業を目指しました。2010年には友人のマイク・チュン氏とWindows向けのメディアソリューション企業「Lazyworm Applications」を設立しています。

Lazyworm ApplicationsはMetroTubeやTweetro＋といったWindows向けの人気アプリの開発を続け、MicrosoftやMediaworks、Aramexといった大企業と密接な協力関係を築きます。Microsoftのソフトウェアエンジニアであるナイジェル・パーカー氏は、「MetroTubeはある時点ではWindows Storeで最も人気の高いアプリだった」と語っています。

MetroTube for Windows Phone 8 - YouTube

2012年9月に開催されたMicrosoft Igniteの基調講演の中では、ニュージーランドで最も人気の高いWindowsアプリ開発者のひとりとしてエレイヤン氏が紹介されています。

New Zealand Windows app developers - YouTube

さらに、2017年と2018年にはCIOによる「ニュージーランドで最も革新的なテクノロジーおよびデジタルリーダーのひとり」にエレイヤン氏が選出されています。

エレイヤン氏はプロゲーマーから先駆的なアプリ開発者へと転身したわけですが、彼の隠された姿が他にもありました。エレイヤン氏はニュージーランドのフットサル・ナショナルチームである「Futsal Whites(フットサル・ホワイツ)」で最初のゴールキーパー(GK)となった人物でした。

Rest in peace Atta. We can't understand the hate, but we do know the love of our futsal community and you won't be forgotten.
Futsal people, our people pic.twitter.com/xuLfZKzlhz
— Futsalplanet.com (@futsalplanet97)

ニュージーランドサッカー協会によると、エレイヤン氏は「フットサルコミュニティの中で非常に人気のある人物」だったそうで、クライストチャーチを本拠地とするカンタベリー・ユナイテッドFCのフットサルチームにも所属していたそうです。Stuff.co.nzによれば、事件の前日にエレイヤン氏は親友のRonan Naicker氏とクライストチャーチにある少年フットボールチームのための道具をそろえており、週明けにはクライストチャーチ・ボーイズ・ハイスクールでフットサルのコーチをする予定となっていたそうです。

QUOTE | @NZ_Football Futsal Development Manager @margetts_josh: “To Atta’s family, we are deeply sorry for your loss. We can’t imagine what you are going through, but please know we love you and we are here for you during this incredibly difficult time.” #RIPAtta @MainlandFooty pic.twitter.com/tCcileWiUK
— New Zealand Football (@NZ_Football)

フットサル・ホワイツは公式サイト上でクライストチャーチで起きた銃乱射事件の被害者を追悼しています。

NZ Football mourns Christchurch losses
https://www.nzfootball.co.nz/newsarticle/74347?newsfeedId=569000

エレイヤン氏はカンタベリー・ユナイテッドFCで2度の全国選手権優勝を果たしており、さらに年間最優秀賞も受賞しています。

#FutsalNationalLeague champions + @NZ_Football @NZFFutsal player of the year... What a weekend! Go @MainlandFooty! pic.twitter.com/rxR1ZsfpzV
— Atta Elayyan (@attaelayyan)

エレイヤン氏が銃乱射事件の被害者のひとりであると明らかになって以降、地域コミュニティだけでなくフットサルのチームメイトやゲーマー、友人らから多くの支援の声が集まっています。CSのプロチームNewTypeでチームメイトだったAtvar氏は、「2005年から2009年にかけてCSでアッタと知り合ったことを誇りに思います。彼はコミュニティの中で最も親切で、そして親しい仲間のひとりでした。彼が誰かについて悪口を言ったことを見たことは一度もありません。彼との2～3年間のプレーで、彼が誰かに怒りを向けた瞬間を見たことがありません」「私たちが一緒に遊んで過ごした時間を大切にし、できる限りあなたの最高のクオリティをまねしたいと思っています。彼は本当にCSコミュニティで私たちにとって最高の存在でした。そして、私はあなたがいなくなって本当に寂しいです」とゲームフォーラム上のGameplanetで語っています。

エレイヤン氏は銃乱射事件に遭遇した際に自身の父親と一緒にいたそうですが、父親は一命をとりとめています。エレイヤン氏は妻のフラー氏と2歳の娘アヤちゃんを残したまま逝ってしまったため、クラウドファンディングサービスのGivealittleではエライヤン家への寄付が募られており、記事作成時点では約1400人から13万5000ドル(約1500万円)以上が集まっています。

Help Atta Elayyan's Family - Victims of the Christchurch Shootings - Givealittle