取材

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』最終章舞台挨拶レポート、「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」への40年越しの返事


宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第七章「新星篇」<最終章>の劇場上映が2018年3月1日(金)からスタートしました。初日から多くのファンが集まり、羽原信義監督とシリーズ構成・福井晴敏さんによる舞台挨拶は大いに沸きました。

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち
http://yamato2202.net/

イベントの司会進行を担当した小林治さんと羽原監督、福井さん。


MC・小林治さん(以下、小林):
お二人は第一章から第六章でも初日舞台挨拶に立っていただいていますが、最終章、どんなお気持ちですか?

監督・羽原信義さん(以下、羽原):
僕はもう魂も残っていないです。感無量です。

シリーズ構成・福井晴敏さん(以下、福井):
長かったですね。第一章の初日舞台挨拶のときは「行くよ!」と言っていた息子に「明日どうする?」って聞いたら「俺はいいや」って。時の流れは残酷です。

小林:
およそ2年かけて全七章を上映ということで、制作期間だともうちょっと長くなるでしょうか。お二人が『2202』に最初に触れたときというのは、羽原さんは福井さんの企画書を目にして、というお話でしたが。

羽原:
そうです。福井さんが参加するということを知らず、岡さんと2人でああでもないこうでもないと話をしていたら、福井さんから『2202』という企画書が出てきて「ああぁ!」と(笑)

福井:
知らないところで戦わされていたんです。

小林:
『2202』でいうと地球とガミラス、ヤマトとアンドロメダの関係のようでもありますが、お二人が今回、組んで良かった点はどんな点ですか?

羽原:
初めてのタイプの方だったので、最初は怖かったのですが、本読みの時点で変なTシャツを着ていたので、かなり救われました(笑) ホンワカさせられました。

小林:
福井さんから見て、羽原さんはどうでしたか?

福井:
トータルで考えたときどういった役割だったかというと、ファンも含めての「お母さん」でしたね。

羽原:
お父さんじゃなく!?

福井:
ギスギスするかもしれないところでも、この天然のキャラクターでいてくれたおかげでごまかせた点もありましたね。

小林:
羽原さんが最初に福井さんのプロットを見たときの印象はどうでした?

羽原:
タイトルに「愛の戦士たち」とついていたので、「今、『愛の戦士たち』ってつけるの!?」って驚きました。

小林:
羽原さんたちのはそういう感じのではなかった?

羽原:
全然違うものでした。オリジナルでは2201年ですから、まさか『2202』と来るとは思わなかったですし、タイトルも当時から今のロゴと同じく最後の「2」が大きくて、薄目で見たら「ヤマト2」っぽい感じだったのでビックリしました。

福井:
当時の企画書を読み直してみたら、寸分違わぬといっていいほどにそのままでした。そこに羽原さんと岡さんがやっていた要素を合流させて「いいとこどり」しました。中央を貫くものは、3年半前から見えていた感じです。

小林:
第一章の時から、「2」であるかもしれないけれど「さらば」であるかもしれないし、でも、ロゴの0が「φ」になっているように、両方とも違うかもしれないという話をされていましたが……。

福井:
正解は「どちらでもない」でしたね。

小林:
第2話で「時間断層」というのが出てきて、僕自身、作品のファンとして「なんだこれ?」というのと、「コスモリバースを使うとああなるのか、確かにいいことだけじゃないよね」と納得する感じ、そして「どうするんだろうコレ?」と、いろんな感覚がありました。お二人が「自分たちがこの作品に加えたものは持って帰る、次にバトンタッチはしない」とインタビューの中で触れられていたのを見かけましたが、それも含めて、このラストは腑に落ちるものがありました。

福井:
「散らかしたものは片付ける」ということでね。

小林:
「あそこまでやらなくていいじゃん」と思っていましたが、最終話の古代のあのしょんぼり感、戻ってこなくてもいいと思うほどの感じを出すための試練だったんですね。羽原さん、ひどかったですよね。

羽原:
コンテチェックしていて、「本当にひどいなこの脚本、ずいぶんなことするな」と思いつつ、「でも、こうやるなら、もうちょっとひどくしないと」って手を入れたりしました。

(会場笑)

羽原:
最後に古代が思い悩むところに繋がるわけですからね。

小林:
このシリーズでまさに「キーマン」だったキーマンですが、出すという話は福井さんの方から?

羽原:
はい、当初のプロットからいました。脚本を読んでいて、神谷浩史さんの声で聞こえてきたのが僕の中での勝因ですね。「わかった」感じがあり、広げられるなと思いました。

小林:
福井さんと岡さんの上げてくるシナリオはすごいボリュームだったと聞いています。

羽原:
もうそれはアイデアの宝庫でした。シナリオは特別限定版Blu-rayの特典として付属しているので、ぜひ読んでいただければと思います。ヤマトって音楽を聞かせたり、メカを見せたりという間が大事で、それをやっていくとどうしても入らないという部分があるので、はしょった部分はあります。

福井:
「機動戦士」だったら入るんですけれどね。

羽原:
ビュンビュンと飛び回りますからね

(会場笑)

羽原:
新しいヤマトを作ろうという気持ちで、福井さんから「海外ドラマみたいなスピーディな感じ」という提案があったのですが、コンテの段階で切るというひどいこともやりました(笑)

小林:
毎回、章が終わるたびに「なぜここで終わるんだ!」と皆さん思わされましたよね(笑) いよいよこの最終章は23話から26話で構成されていますが、25話でいったん終わって、そこからが真骨頂ですね。

羽原:
終わったと思っていたら「あれ?まだ時間がある?」という。

小林:
演出のテンションなんかも変わっているのでしょうか。演説が多めで「聞かせていく」感じがありました。

羽原:
そこはもう、役者さんに頼った部分です。

福井:
やっぱり役者さんは大したものです。演技は「カロリー」で、1日に使える量って決まってるんです。アフレコではテストをやってから本番に入りますが、本番で全然違うものが出てきて、「セーブしていたんだな」と感じることがあります。最終話だと、大塚芳忠さんが「本番でカロリーを使い切るから、今日は喋らないようにする」というぐらいに調整していたんだなと思うほどで、これで終われたなと思いました。

羽原:
僕は、森雪のところですね。アフレコの時、チェックの時と、監督なのに一体何回泣いたんだろうか(笑)

福井:
アフレコブースでグスグス言っているときには、俺もどうかと思いつつ(笑)

羽原:
だって、泣いちゃうんですもん。

小林:
第2話ですでに雪から「古代進は地球を救ったぞ」というセリフが出てきていますが、あれは福井さん、伏線を張っていたんですか?

福井:
さすがに第2話を書いた時点では考えていませんでした。最終話で「ああー、これだぁ」と思いました。

小林:
まさかここで、と思わされました。今回の第七章は、そういった「あのときの伏線がここで!」というのが多かったと思います。まとめるのは大変だったんじゃないですか?

福井:
「気がついたらそういう設定にしていた」という部分があり、企画書を読み返したとき「この時点でこうしようと思っていたわけはないもんな……」と思いました。これはやっぱり「縁」です。物事がうまくいくときというのは、そういうのがあるんですね。

小林:
最後に、第一章の時に福井さんから「単なるリメイクではなく、この時代に作る意味がある」というお話がありました。改めてそのことについてうかがいたいと思います。

福井:
古代を見ていただければお分かりになると思いますが、古代は今回、ひどい目にたくさん遭います。それを「ひどい」と感じるのは、皆さんも同じ経験をどこかでしてきたからこそです。子どもたちがターゲットの作品ならまた違うのですが、人生経験を積んだ人がメインターゲットの作品であれば、アニメとはいえ演出力も画力も上がっているから、こういった話がやれるんじゃないかと考えました。我々の世代はバブル崩壊以来、未来に裏切られてきた世代です。毎日生きづらさがたまっていくなかで何をよすがに明日を生きるのか。少なくとも、フィルムの中ではカタルシスを得られるものをと考えました。40年前の古代進は「こんなに苦労し、絶望する未来に汲みするぐらいなら死ぬ」と、森雪とともに理想に殉じたわけです。でも今回、古代進に対して「生き続けるならこういう奇跡があるかもしれないよ」と立証できれば、「さらば」に対する返答になるかという気持ちでした。受け取られる方は様々だと思いますが、何をしたかったかというと「さらば」に対して40年ぶりに返事を書いたというのが自分の答えです。

(会場拍手)

小林:
あのとき、沢田研二さんの曲を聞いて終わったわけですが、今回もまた同じく「ヤマトより愛をこめて」が使われています。第一章で使って最終章でも、とは思いませんでした。

福井:
もともと最後に使うことが決まっていて、第一章でも使おうという話になりました。同じ歌詞、同じ曲なのに、まったく違って聞こえるのではないかというところが狙いでした。

小林:
こういった話を噛みしめて2度目、3度目と見ると、セリフや歌から感じられるものがあるのではないかと思います。

福井:
最後までこんな過酷なドラマにお付き合いいただきありがとうございます。おかげさまで、前売りやソフト売上状況など、リメイクシリーズで過去最高の数字となっています。さらなる上を目指していきたいと思っていますので、皆さま引き続き今後ともよろしくお願いします。

羽原:
まさかこんな未来が待っているとは、子ども時代には思っていませんでした。こうして皆さんと一緒に長い旅ができたのが、僕にとっての宝物になりました。よろしければ、最終回を見た後にまた第1話から見直してもらえると、また違った目線でご覧いただけるかと思います。ぜひヤマトをこれからも愛してやってください。本日はどうもありがとうございました。


小林:
ぜひ大きなスクリーンで楽しんでください。本日はありがとうございました。

新宿ピカデリーではエントランスに3mサイズのアンドロメダとヤマトが展示され、多くの人がカメラを向けていました。


「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」は絶賛公開中。3月8日(金)からは先着入場者プレゼント(複製キャラ原画/メカ設定線画/『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』キャラ設定画)が第2週目のものに切り替わり、「山本玲」「キーマン」「さらば宇宙戦艦ヤマト<古代進&島大介>」となっています。公開劇場は以下のページで確認してください。

シアターリスト┃宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち
http://yamato2202.net/theaters/index.html

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in 取材,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

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