乗り物

「自動運転の普及は街の交通網をマヒさせてしまう危険性がある」という指摘


人工知能(AI)の発達によって、人間がまったく操作しなくても安全に公道を走行できる自動運転技術が実現しつつあります。自動運転技術の普及によって人間が運転から解放されるだけではなく、交通事故の減少や渋滞の減少も期待されるといわれていますが、それとは正反対の「自動運転車が普及すると至る所で渋滞が起こってしまって街中の道路交通網がマヒしてしまう危険がある」という主張をする研究者もいます。

The autonomous vehicle parking problem - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0967070X18305924


Mean streets: Self-driving cars will "cruise" to avoid paying to park
https://news.ucsc.edu/2019/01/millardball-vehicles.html


自動運転が当たり前になることで期待されているのが、駐車問題の解決です。「車は人間が運転しなければ動くことができない」という常識が自動運転によって覆され、人間が車を降りた後も駐車場や道路の脇に車を駐車させる必要がなく、そのまま決められたルートをぐるぐると回って待機することが可能になるかもしれません。この「オートクルージング機能」を利用すれば、都市部の高額な駐車料金を節約できる上に、渋滞の原因となる違法駐車も減ることが期待されています。


カリフォルニア大学サンタクルーズ校の准教授であるAdam Millard-Ball氏は交通マイクロシミュレーションモデルを用いて、自動運転車のクルージング機能によって駐車コストがどれだけ削減されるのかを分析しました。

Millard-Ball氏のシミュレーションによると、サンフランシスコ市内で2000台の自動運転車がオートクルージング機能を使うと、交通全体の流れはおよそ時速2マイル(約3.2km)にまで落ちるとのこと。サンフランシスコにある駐車場は60%が有料駐車場であり、1時間あたりの平均駐車料金はおよそ3ドル(約330円)であるのに対してオートクルージング機能の1時間あたりのコストは50セント(約55円)と低いものの、その代償としてサンフランシスコの道路は激しい混雑に見舞われるとMillard-Ball氏は論じています。

Millard-Ball氏は「乗客なしで10分以上運転することを禁止することは可能ですが、例えば自動運転車が荷物を宅配しているパターンもあるため、安易な規制は難しいものがあります」と指摘。代替案として、市内への車の乗り入れ料金設定を提案しています。例えばロンドンでは、運転手は市内中心部に入るために11.50ポンド(約1600円)の定額料金を支払う決まりとなっているとのこと。この乗り入れ料金を取るシステムは、シンガポールやストックホルムでも採用されているそうです。


「政策として、街へ車で乗り入れる際に価格を支払うような設定は実施が難しいものです。国民は昔から無料でできたことに代金を支払いたくないからです。しかし、今はまだ誰も自動運転車を所有していないので、自動運転車による公道の使用に対する代金請求に反対するような選挙区はありません」とMillard-Ball氏は述べ、「今こそ街全体の交通がマヒしてしまうという悪夢のシナリオを回避する時です。このアイデアは自動運転車が普及する前に実行するべきです」と主張しています。

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in 乗り物, Posted by log1i_yk

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