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なぜLED電球の寿命はだんだん短くなっているのか?

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LED電球が世の中に登場した初期のころは、パッケージの箱に「5万時間もの長寿命」「10万時間使用可能」などとうたわれていました。しかし、記事作成時点では販売されているLEDの多くが7500~2万5000時間程度の寿命となっています。「なぜLED電球の寿命は当初よりも減っているのか?」という疑問について、エンジニアのTed Yapo氏が解説しています。

What Happened to the 100,000-Hour LED Bulbs? | Hackaday
https://hackaday.com/2019/02/05/what-happened-to-the-100000-hour-led-bulbs/

Yapo氏によると、電球の寿命を語る際にはかつて白熱電球の生産と販売を支配するために結ばれた国際的カルテル「ポイボス・カルテル」について避けて通れないとのこと。第1次世界大戦後の1924年に結ばれたポイボス・カルテルは、アメリカ・フランス・ハンガリー・イギリス・ドイツといった複数の国の企業によって結ばれ、白熱電球の寿命が1000時間を超えないようにするという規制を設けました。

ポイボス・カルテルが結ばれる以前は1500時間~2500時間以上の寿命を持つ白熱電球もありましたが、カルテルは「長寿命の白熱電球は効率を下げ、光量にも問題が出る」として、参加企業が1000時間を超える寿命の電球を売らないように取り決めを結びました。カルテルは白熱電球の寿命をおよそ半分にし、11~16%程度明るさを増やすだけで、以前の倍の売り上げを達成することができたそうです。

メンバー企業が販売する電球は常時検査され、寿命が1000時間よりも著しく短かったり、著しく長かったりすると罰金が科せられるシステムでした。この罰金契約については外部に公表されず、電球の寿命が一律で1000時間程度であることには、効率性などの面での理論的根拠があると見せかけられていたとのこと。カルテルは第二次世界大戦時に機能不全となりましたが、20年近くにわたって白熱電球の発展を妨げ続けたとYapo氏は述べています。

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電球のパッケージに「寿命は1000時間」と書かれている場合、この「寿命」とは平均定格寿命のことを指します。これは規定の条件下で試験した際の平均寿命値を示したものであり、「電球の初期サンプルのうち50%が寿命を迎えた時点」が、平均定格寿命となるそうです。つまり、全電球のうち半数程度しかパッケージに書かれた寿命を達成できず、残りの半数はパッケージの寿命を超えて光り続けます。

LED電球の寿命について考えるために、実際のLED電球の仕組みについて考える必要があります。Yapo氏は同じA19型のLED電球でありながら、寿命が「7500時間」「1万5000時間」「2万5000時間」という3種類の電球を購入し、中身を確認してみたとのこと。

以下の画像にある3種類のLED電球は、左から「7500時間」「1万5000時間」「2万5000時間」の寿命となっています。LED電球は光を発するLEDチップだけでなく、電源から送られる交流電流を直流電流に変換するLEDドライバ、電解コンデンサなどの部品から構成されているとのこと。寿命が7500時間のLED電球はLEDチップとLEDドライバが同じボード上に存在している一方、1万5000時間や2万5000時間の寿命を持つLED電球はLEDチップとLEDドライバが熱的に切り離されていることがわかります。


LED電球がさまざまな部品を備えている以上、故障する原因はLED電球にとって最も重要といえるLEDチップだけでなく、他の部品にもあると考えられます。アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)はLED技術の研究開発を支援しており、LEDランプの寿命と故障原因に関するデータも収集しているとのこと。

以下の画像は、DOEが収集した5400個もの屋外に設置されたLEDランプの故障原因を円グラフにしたもの。興味深いことに、LEDチップ自体が原因となって故障した割合は全体の10%に過ぎず、59%はLEDドライバの故障によってLEDランプが故障していることがわかりました。故障原因の31%を占める機械を保護するハウジングの問題は、屋内使用のLED電球を考える際には必要ありません。このデータは、LED電球の寿命について重要なのはLEDチップではなく、LEDドライバであることを示しています。


LED電球の寿命は、構成部品のうちどれか一つの寿命以上にはなりません。LED電球を構成する部品の中で最も寿命を制限しているのが、半導体と電解コンデンサであるとYapo氏は主張しています。この2つはいずれも高温によって故障する確率が上昇し、周囲の温度がおよそ10度下がると寿命が2倍になるとのこと。

Yapo氏が購入した3種類のLED電球のうち、最も寿命が短いものはLEDチップとLEDドライバが同じボード上に存在しており、LEDチップの熱が非常に伝わりやすい状態でした。この構造により、LED電球の寿命が短くなっているとYapo氏は述べています。残りの2種類はLEDチップとLEDドライバが離れて設置されているため、熱による故障に強くなっているそうです。

また、1万5000時間の寿命を持つLED電球と2万5000時間の寿命を持つLED電球では、電解コンデンサの上限温度に違いがあり、1万5000時間の方では105度、2万5000時間の方では130度となっています。この違いが、それぞれのLED電球の寿命を左右しています。

by KlausHausmann

白熱電球も寿命を迎えてパッと消えてしまうまでに、ゆっくりとその明るさが減っていくものであり、寿命の時点では使い始めから10~15%ほど明るさが減っています。同様にLED電球も古くなるにつれて明るさを失っていき、十分な明るさを提供できなくなってしまいますが、「光がなくなってしまう」ということはありません。

そこで、業界でLED電球の寿命を考える際には「故障して光らなくなってしまう」時点の他に、「明るさが当初の70%にまで低下してしまった」時点を、「LED電球が寿命を迎えた」と決めているそうです。明るさが当初の70%にまで低下してしまうと、誰でもその違いに気づきそうなものですが、電球はゆっくりとその明るさを減らしていくために、ほとんどの人は明るさが減っていることに気がつかないとのこと。

また、白色LEDの多くは青色LEDと蛍光体を組み合わせて白色を表現していますが、蛍光体は高い温度にさらされるために経年劣化し、次第に色が変わってしまうことがあります。この色が変わるメカニズムについては十分に理解されておらず、色の安定性や劣化の予測を行うことは難しいそうです。しかし、明るさの減少と色の変化がLED電球に与える影響は少なくありません。こうしたLEDの寿命に影響するさまざまな要因が時間とともに判明したことが、登場初期と比べて近年のLED電球の寿命が短くなっている理由となっています。

by Shawn Harquail

Yapo氏は自宅の電球を2010年にLED電球へと変えたため、2019年時点で実に8年以上も同一のLED電球を使い続けています。そこで、最もLED電球を使う頻度が高い台所のLED電球と、使用頻度の低い他の部屋のLED電球を取り外し、それぞれの明るさがどれほど違うのかを確かめてみました。それぞれのLED電球は同様の設置方法であり、内部の温度も片方だけが異常に高くなるといったことは考えづらいため、いずれも使用頻度に応じた経年劣化が進んでいるとYapo氏は推測したとのこと。

実際にそれぞれのLED電球を比較してみた画像が以下のもの。左が台所で使われていたLED電球で、右が他の部屋で使われていたものとなっており、台所のLED電球はかなり弱い光しか発しておらず、色も黄色っぽくなっていることがわかります。Yapo氏も台所のLED電球がだいぶくたびれていることには気づいていましたが、これほど悪くなっているとは思っていなかったと述べています。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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