サイエンス

スマホやPCの利用時間の制限を子どもに強制するべきではないことは研究から明らか


スマートフォンやタブレットなどを子どもたちが長時間使うことの悪影響について、テレビの見過ぎより大きい悪影響があるとする研究があったり、台湾では親が子どものスマホ使用時間を制限しないといけない法律が施行されたりと、問題視されることが多いもの。そのような風潮に対して「デジタルスクリーンの使用と若者の心理的幸福との間に有害な関連性はない」という研究も発表されていて、子どもへのデジタルメディアの使用を強制的に制限することを否定する研究者も現れています。

Studies Shoot Down Tech’s Harmful Effects on Kids—So Now What? - Facts So Romantic - Nautilus
http://nautil.us//blog/studies-shoot-down-techs-harmful-effects-on-kidsso-now-what

Digital Screen Time Limits and Young Children's Psychological Well‐Being: Evidence From a Population‐Based Study
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/cdev.13007

アメリカ小児科学会は、2歳から5歳までの子供のデジタルメディアに触れる時間を2時間以内に制限するべきだと、保護者に対し推奨しています。しかしながらこのガイドラインは「メディアの使用の代わりに活発な遊び・学習が可能である」「座りがちの体勢が睡眠不足につながる可能性がある」という調査結果に基づいたものであり、心理的幸福への影響について経験的に評価された基準ではないと、オックスフォード大学のアンドリュー・プシビルスキ氏とカーディフ大学のネッタ・ワインスタイン氏は指摘しています。


2017年の研究では、アメリカ小児学会が定める制限時間より短い時間しかデジタルメディアに触れていない子どもは、外で遊びまわるような活発度がほんの少しだけ高かったものの、その他の好ましい影響はほかの子どもと比較して低い傾向にあったとのこと。これらの違いは世帯収入や教育レベルなどの要因を考慮すると重要ではなくなる程度のものです。また驚くべきことに、一般的に健康であると考えられているものよりもはるかに高い「7時間程度デジタルメディアに触れる」場合でも、「非常に小さいプラス効果」が発見されたそうです。

そのほか、行動科学についての研究でも、「PCやスマホの見過ぎ」が若者の幸福度を下げるとはいえないという研究報告があります。この研究に携わったエミ・オーベン氏とプシビルスキ氏は、「ソーシャルメディアの10代から20代への影響を調べた先行研究は弱い相関と不十分な方法に基づいているため、誤った結論を導きました」と主張しています。


このような結果から、研究者らは「より広い範囲のデータを考慮すると、デジタルメディアから幸福度に与えられる影響は、政策変更を正当化するには小さすぎます」と述べ、強制的にデジタルメディアの使用を制限することを否定しています。

これらの研究を受け、Nautilusは「最も重要なのは、道具が私たちを使うのではなく私たちが道具を使うのだということを子どもたちに自覚させ自立させることです」と述べています。子どもたちは遊びから注意力や柔軟性を学ぶもので、同じ利点がデジタルメディアによって阻害されるとは考えにくいとのこと。また、デジタルメディアに触れる時間そのものが悪いものではないとしつつも、メディアと悪い関係を築くことは可能であるとし、そういった面から子どもたちを守る介入をすべきだと主張しています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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