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「火星に基地を作る」ことがいかに最悪のアイデアで大きな可能性を持つのかをアニメーションで解説

by Aynur_zakirov

火星移住計画を目指してNASAを初めとする多くの機関や民間企業がテクノロジーの開発に取り組んでいます。人類を火星に移住させる前段階として、専門家が調査を行ったり産業を展開させたりするための基地を火星に作る必要がありますが、「火星に基地を作る」ことがいかに困難であるかを科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtがアニメーションで解説しています。

Building a Marsbase is a Horrible Idea: Let’s do it! - YouTube


砂漠から山頂まで、技術を駆使してさまざまな場所をすみかに変えてきた人が、地球の外にある火星をテラフォーミングするという考えは驚くものではありません。しかし、火星の植民地化を行う前に、火星が想像を絶するすさまじい環境であることは覚えておくべきです。


火星には極地の氷冠や大きな谷を持ち、水も存在することから、一見すると人間の住みやすい場所に思えます。


しかし実際には、火星の地表は極寒であり放射線の降り注ぐ砂漠です。地面には毒性があり、人間は呼吸することができません。


本来であれば火星は人が「住みたい」と思う場所ではなく、初期に火星探査を行う人は数多くの課題に直面し、ストレスの多い生活を強いられてしまうと考えられます。


その課題の1つが、火星にはエネルギーが少ないということ。火星は太陽から遠く離れた場所に位置しており、太陽エネルギーは地球の40%相当しかありません。しかも、砂嵐によってただでさえ少ない太陽エネルギーは妨げられがちです。


大気が存在せず、火星内部の温度が低すぎるため、風力発電や地熱発電をもってしてもエネルギーは足りません。


そこで考えられるのが「原子力発電」という選択肢。しかし、火星では放射性元素に容易にアクセスすることができないため、核燃料とリアクターは地球から運んでくる必要があります。


一度セッティングが完了すればその後数年は周辺地域にエネルギーを提供できますが、例えエネルギーが存在しても、人間は呼吸ができなければ死んでしまいます。


ということで今度は呼吸、空気の問題へ。火星の大気は地球の密度の1%しかなく、しかもそのほとんどが二酸化炭素で構成されます。


そのため、人が暮らす場所は空気を加圧し、酸素や窒素といった人工の大気で満たす必要があります。


この場合、角のある構造物や平らな壁は内部と外部の気圧の違いによる影響を受けてしまうので、住居は丸みのあるなめらかな構造になります。また、高い機密性を保つために、毎回完璧に機能するエアロックが必要です。


さらに、火星は空気密度が低いことに加えて磁気圏が小さいため、宇宙に存在する放射線の半分は火星の地表に到達してしまいます。火星の地表にいる人は、地球の地表にいる人の50倍の放射線を浴びることになってしまうとのこと。


火星の地表に3年いると放射線の被ばく量の上限を超え、ガンのリスクを大きく上げてしまいます。


このような事態を避けるため住居となる構造物は凍らせた二酸化炭素で覆い……


さらに泥で覆えば保護効果が高くなります。


上記のような構造になると、住居の多くは窓のないトンネルのような形になると考えられています。


しっかりと覆った構造物であっても全ての放射線を遮れるわけではありませんが、人間が長期にわたって生き延びることは可能になります。


住居が完璧でも、いったん外に出ると人を守ってくれるものがなくなるので、外の探査の多くは遠隔操作できるロボットが中心に行うこととなります。


ただ火星の砂ぼこりは地球のそれよりも粒子が小さいため、ロボットの内部に入り込むと機械を壊してしまいます。


また宇宙服についた砂ぼこりは完全に除去することが不可能のため……


いったん外から帰ると、少なからず住居に砂ぼこりを持ち込むことになります。火星の土は過塩素酸塩という人間にとっては毒となるものを含み、常にさらされると人は死にいたります。


ただし、この問題は宇宙服を建物の入口で保管する形にすれば解決するとのこと。


エネルギーと安全な空気が確保できたとして、それでも問題となるのが「食料」


水については、南極や北極など、氷のある場所に基地を確保すれば容易に得られますが……


食料となる植物を育てるのは大きな課題。火星の土はアルカリ性であり、植物を育てるのに必要な窒素が含まれていません。


植物を育てる前に火星の土を浄化する必要がありますが、これは技術的に難しく、またコストがかさんでしまうとのこと。


浄化を終えた土はバイオ廃棄物によって肥やされ、ようやく生物が育つようになります。


これらのプロセスは多くの時間やエネルギーを要するため、養殖と水耕栽培を組み合わせた「アクアポニックス」という方法が取られるようになる可能性も大いにあります。この方法では野菜と魚をまとめて得ることが可能です。


しかし、上記のように数々の問題が解決されたとしても、根本的な大問題、「地球の38%しか重力がない」という問題が残っています。


重力が小さいことで人の筋肉や骨が弱くなり、心血管に問題を抱えることが考えられます。


この問題は、将来的には回転式住居の開発によって解決されるかもしれませんが、現時点では重力が小さい環境でも筋肉や骨を衰えさせないよう運動を行うしかありません。


また植民地化の過程において、クルーたちは毎日窓のない1つの部屋に閉じ込められ、同じメンツと顔を合わせ、外部との接触がほぼない状態で同じルーティンタスクを行うことになります。火星での生活環境が人に悪影響する可能性があるため、クルーたちはシミュレーターを使って生活に耐えられるかどうかのテストを事前に行うようになる可能性があります。


そして、火星に最初のインフラを構築する作業は、ひどく骨の折れる作業になるはず。優秀な、そして意思を固く決めた人々だけが火星に向かうと考えられます。


最初に作られた火星の基地は、リソース、核燃料、機器のパーツ、クルーなどが地球から送られる限り、少なくとも数十年間は使われる予定です。


懸念点としては、地球と火星は何百万キロと離れており、太陽を中心とした周回期間が異なるため、地球から火星に向かえるタイミングは2年ごとにしか訪れないということ。つまり、もし火星で問題が起きてもタイミングがやってくるまで地球から助けを送れないのです。


火星に基地を作ることは、人類がこれまでに直面したことがないほど難しい課題です。しかし、いったん火星の植民地化が進めば、惑星間の旅行や、火星の周回軌道上に産業を展開するなど、数多くの可能性が開かれるはず。「火星に行くこと」は労力を要しますが、それだけの価値があるとのことです。

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in サイエンス,   動画, Posted by logq_fa

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