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Appleが中国政府のインターネット検閲にどの程度協力しているかがわかるサイト


中国ではネット掲示版への書き込みに実名登録を義務づけるなどインターネット上の検閲が徐々に強化されており、SNSもほとんどが利用不可となっています。しかし、人口が多く経済発展著しい中国はインターネット関連企業としては見逃せない市場です。Googleは中国向けに検閲機能付きの検索エンジンを開発し、その存在が明らかになると社内外から多くの批判の声があがりました。Googleと同じく中国でのiPhoneおよび関連サービスの拡充を図るAppleですが、そのAppleが中国のインターネット検閲にどの程度協力しているのかがわかるサイトが公開されています。

New Site Exposes How Apple Censors Apps in China
https://theintercept.com/2019/02/01/apple-apps-china-censorship/

「Appleが中国のインターネット検閲にどの程度協力しているのかがわかるサイト」というのが、以下のApple Censorship。AppleはiOS端末向けのアプリストア「App Store」を運営していますが、Apple Censorshipを使えば中国のApp Storeではどんなアプリが利用できない状態になっているのかをチェックできるようになっています。なお、サイトの制作者は中国政府によるインターネット検閲を監視する非営利団体・GreatFire.orgの研究者です。

Apple Censorship


使い方は簡単で、サイト上に配置してあるテキストボックスに文字を入力するだけ。例えば「Google」と入力すると、アプリ名に「Google」を含むものがアメリカのApp Storeでの人気順で表示されます。最も人気の高いGoogle アプリは、中国のApp Storeでは「N/A」、つまり利用できないものとなっています。アプリ名の横に書かれている数字は「アメリカのApp Storeでの人気順」で、アメリカと中国ではアプリの人気順もかなり異なることがわかります。


赤枠部分にあるプルダウンメニューをクリックすると、国名が選択可能になります。「Japan」をクリックすると……


以下のように日本のApp Storeのデータも一緒に表示できるようになります。


そのまま別アプリもチェックしてみると、中国ではGoogle Earthも利用不可となっていることがわかりました。逆に、Yang Zongqunという開発者が中国のApp Storeで公開している「地图大师- 地图,导航,GPS定位 for google谷歌地图」というアプリは、アメリカおよび日本のApp Storeでは利用できない状態となっています。


2017年7月、Appleが最大60種類ものVPNアプリを中国のApp Storeから削除することを決定したと報じられました。VPNを用いればデータの盗聴や改ざんといった脅威から情報を守ることができるようになる、つまりは中国政府によるインターネット検閲が難しくなります。そのため、中国政府側が検閲の邪魔になるVPNアプリの配信停止をApple側に要求し、Apple側は要求に応じたというわけ。なお、最終的にAppleは中国のApp Storeから600以上のVPNアプリを削除したことを認めています。しかし、Appleはどのアプリが削除されたのかについての詳細を明らかにすることはありませんでした。

これらのVPNアプリ以外にも、Appleは中国のiOSユーザーがNew York TimesRadio Free AsiaTibetan NewsVoice of Tibetといった報道機関が提供するアプリをインストールできないように、中国からのダウンロードをブロックしています。他にも、TorPsiphonといったインターネット検閲を回避するツールも中国のApp Storeでは利用不可となっています。


中国のApp StoreからVPNアプリが削除されたことや、一部の報道機関のアプリが中国で利用できなくなったことなどは、過去に報道されていますが、その他のアプリについては異なります。GreatFire.orgの共同創設者であるチャーリー・スミス氏は、The Interceptに対して「AppleはApp Store上で行われている検閲についての透明性を確保していません。ほとんどの開発者は、自身のアプリで中国からのトラフィックが低下したことを確認してから、何かしら問題が生じていることに気づきます。我々はAppleによる検閲に透明性をもたらしたいのです」と、サイトを開設した経緯について語っています。

Apple Censorshipはまだ開発初期段階にあるそうで、スミス氏は「Appleが世界各地のApp Storeから削除しているアプリを正確に確認する作業は容易ではない」と語っています。また、スミス氏はApple Censorshipに、「中国政府からの要求で配信不可となっているアプリ」と「Appleが進めるギャンブルアプリへの規制により配信不可となったアプリ」とを区別することができないという欠点があることも明かしています。ただし、アプリの内容や、アメリカや他の国で利用できるかどうかなどを確かめることで、Appleが自主的に規制したアプリなのか中国の検閲により配信できなくなったアプリなのかを判断することは十分に可能です。

アメリカ政府からの資金提供を受けているRadio Free Asiaは、中国での人権侵害について定期的に報道しているメディアで、何十年間も中国の検閲に引っかかり続けています。Radio Free Asiaの中国での放送は1990年代後半から妨害されており、その検閲はインターネットにまでおよび、今ではAppleのサポートによりアプリにまで波及しているわけです。


Radio Free AsiaのスポークスマンであるRohit Mahajan氏は、Appleが2018年12月に「Radio Free Asiaのアプリのひとつが法的要件を満たしていないため中国のApp Storeから削除した」ことを通知してきたと明かしています。そして、Mahajan氏は「我々が考え得る限り、不服申し立てするという選択肢はありませんでした」とも語っています。

Radio Free AsiaのLibby Liu代表は、「信頼できる外部報道機関が用いてきた手段を閉鎖するということは、大きな損失につながります。我々にとっての損失というだけでなく、国営メディアからの情報とは異なる我々の報道や最新の情報に依存している何百万人もの人々にとっても損失となり得ます。情報のアクセスに影響を与える可能性があるような決定を下す際には、西側の企業が西側の価値観にコミットすることを願っています」と語っています。

なお、Appleの広報担当者は、「アプリは利用可能となる任意の場所における、あらゆる法的要件を遵守しなければいけません」とコメント。また、Appleは次回の透明性に関する報告書の中で、中国政府からの「App Storeからアプリを削除するように」という要求に関する情報を公開する予定としています。

by chuttersnap

8億人以上のインターネットユーザーを抱える中国は、欧米諸国のインターネット企業が巨大な中国市場でサービスを提供することを許可する代わりに、企業側が政府側の要求を呑むことを望んでいます。そして、この要求には中国共産党のインターネット検閲および監視の順守が含まれています。近年、中国はその圧力を徐々に強化しており、新しいデータローカライゼーション法の導入により、「中国でサービスを提供するインターネット企業は、中国で収集したユーザーデータを中国本土に保存しなければいけない」こととなりました。これにより、中国当局は国民のデータによりアクセスしやすくなったと言われています。

データローカライゼーション法に従い、Appleは中国ユーザーのiCloudデータを管理するため、中国の国営企業である中国電信と契約を結びました。Appleはデータに対する暗号化キーの制御を保持し、ユーザーの写真やその他の個人情報に政府がアクセスできないようにすると主張していますが、人権団体は依然として懸念を抱いています。

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Appleのティム・クックCEOは、自身を「ユーザープライバシーの保護者」と表現しており、「プライバシーは基本的人権であるとAppleは信じている」とまで語っていますが、Appleの対応を見ると「中国においては政府の検閲を認める」という妥協案を受け入れてしまっているようです。

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in モバイル,   ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by logu_ii

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