「見えない労働」の重圧が女性に人生への虚しさを感じさせメンタルヘルスを害している

by Jacqueline Day

アメリカで「見えない労働」が広く行われているというデータとともに、ある種の「見えない労働」が女性の感情的・心理的なウェルビーイングに悪影響を与えていることが、学術誌・Sex Rolesに発表された新しい研究で示されました。

Invisible Household Labor and Ramifications for Adjustment: Mothers as Captains of Households | SpringerLink
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11199-018-1001-x

Women’s invisible labor leaves them feeling empty, study finds
https://mashable.com/article/women-invisible-labor-mental-load-study/

Emotional responsibility of being a mother damaging women's mental health, study finds | The Independent
https://www.independent.co.uk/news/world/americas/women-mental-health-motherhood-family-emotional-labour-study-research-a8740501.html

近年は過去に比べて父親の家事・育児への参加が増えていますが、それでも家庭は女性によって管理され続けていることがアリゾナ州立大学とオクラホマ州立大学の研究者の調査で示されました。これは女性が働いていても同じで、研究者は「見えない労働」が女性に負担をかけ、女性を日々空虚な気持ちにさせていると指摘しました。

この研究ではアメリカに住む既婚あるいはパートナーを持つ女性393人を対象にアンケート調査が行われました。対象者の多くは上位中産階級とのこと。

調査の対象となったうち90％の女性は「自分が家族のスケジュール管理の責任を1人で負っている」と感じており、70％は自分のことを家族という船の「船長」だと答え、ルーティンをこなすことに加え、家庭内のタスクを割り当ての責任を負っているとしました。このタスクには「家族の靴下を見つける」「送り迎えをする」といった「取るに足らない内容」が含まれます。

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そして、研究者は、特に女性が「自分1人で子どものウェルビーイングについて責任を負っている」と答える時、空虚さを感じるとともに、人生やパートナーへの満足度が低くなることを発見しました。

アンケート回答者のうち3分の2は子どもの感情に用心することの責任を負っていると考えており、78％の回答者は子どもの学校の教師や責任者を知っていると答えています。アリゾナ州立大学の心理学教授であり論文の共著者であるSuniya S. Luthar氏は、女性が子どもに対して持つ恐れや願望、そして観察を共有する人を求めており、パートナーがいるにも関わらず「自分1人で決断をしている」と感じた時に、物事が悪い方に転じるとみています。

調査にあたって、研究者は「自分は無条件に愛されていると感じているか」「パートナーとどのくらい親密だと考えているか」など、被験者の感情やメンタルヘルスに影響しそうな複数の要素について調整を行っているとのこと。しかし、これらの調整が行われてもなお、「子どもの感情的な発達の責任を1人負っていること」が女性のウェルビーイングや人間関係への満足度に負の影響を与えていることが示されました。

ただし、女性の経験と精神的な苦痛の間に関係があることは認められたものの、今回の研究は因果関係まで明らかにするものではありません。また、被験者はほとんどが異性愛のカップルで、低所得の女性は少なかったため、結論を一般化することについて研究者は注意を呼びかけています。

Luthar氏は、見えない労働についてパートナーと話しあい、負担をシェアすることを解決策として述べつつも、「共感し支援してくれる他の母親の存在」、つまり「母親のケアをする人」の重要性についても言及しています。自分の研究結果に基づき、母親同士の連帯やサポートが「見えない労働」を救うてだてになるとして、Luthar氏は母親同士のつながりを促進しています。

by Oleg Sergeichik

ただし、母親同士で「よい子育て」の在り方を共有した結果、自分自身に「もっといい子育てを」と命令してしまうことはあってはならないとのこと。「すでに持っている長いTo-doリストにアイテムを追加してほしくはありません。『世話をされる』ということを優先して欲しいのです。自分が子どもに対してそうするように、自分の目の前に『優しい手』を視覚化してください」とLuthar氏は述べました。