レビュー

ゲームの域を超えた没入感で終わり行く無法者の時代を身も心もカウボーイとなって体感できる「レッド・デッド・リデンプション 2」


1899年のアメリカ、開拓時代の終わりを舞台に、当時隆盛していた無法者のギャングたちが時代の波に呑まれ徐々に変化していく様子を描いたオープンワールド型のアクションゲームが「レッド・デッド・リデンプション 2」です。全世界出荷本数が発売から2週間足らずで1700万本を突破した人気作で、ダウンロード版の容量が90GB超えというトンデモないサイズであることも話題を呼びました。そんなレッド・デッド・リデンプション 2をプレイしてみたところ、カウボーイの理不尽な暴力や粗野さに序盤はなかなか慣れないと思っていたのですが、ストーリーを進めていくと気づけば身も心も無法者たちの時代を生き抜く孤高のガンマンになっていました。

Red Dead Redemption 2
https://www.rockstargames.com/reddeadredemption2/

◆あらすじ
物語は1899年のアメリカ、開拓時代が終わり、法執行官が無法者のギャングを一掃し始めた頃を舞台としています。主人公はそんな開拓時代を生きるギャングのひとりアーサー・モーガンで、ギャングのボス・ダッチの右腕的存在です。物語はダッチ率いるギャング団がある町で大がかりな強盗に失敗し、連邦捜査官や賞金稼ぎの手から逃れるために雪山に避難してきたところからスタートします。


◆無法者たちの何でもアリなオープンワールド
命からがら逃げてきたアーサーたちは再起を図り、広大なアメリカの大地を時に馬にまたがり、時に自分自身の足で冒険しながらお金を稼ぎます。オープンワールドなのでいつどこで何をしてもOKなのですが、その「できること」の幅がレッド・デッド・リデンプション 2は半端じゃありません。


アーサーたちはギャングの居場所が少しずつなくなっていく世界で、時に暴力に訴えた行動で自分たちの食いぶちを稼ぎます。基本的にゲーム中に出てくるすべてのキャラクターに話しかけることが可能で、話しかけた相手にケンカをふったけたり、お金を盗んだりすることもできます。主要キャラクターだけでなくあらゆるNPCに対してさまざまなアクションが起こせるようになっており、以下のように時にはギャングらしく(?)借金取りになることも可能。


ただの暴力だけでなく、銀行強盗や夜襲、列車強盗など大規模な犯罪に手を染めることもできます。しかし、無法者は自分たちだけではないので、時には「強盗帰りに強盗に襲われる」というにわかには信じがたい出来事に遭遇することも。


そんな悪逆の限りを尽くしていると、プレイヤーは賞金首となり指名手配されてしまいます。無法者たちが我が物顔で勝手気ままな生活を送ることができないように、町には法執行官などのギャングたちの犯罪を取り締まる人々がおり、ちょっと犯罪に手を染めると指名手配され、見つかれば当たり前のように銃撃戦となります。町につながれた他人の馬に間違えて乗っただけでも泥棒として通報されるので、行動にはいろんな意味で細心の注意を払う必要があります。


実際にレッド・デッド・リデンプション 2でNPCにケンカを売ったり銃撃戦をしたりすると以下のようになり、速攻で指名手配され賞金首になってしまいます。

「レッド・デッド・リデンプション 2」で無法者らしく暴れ回ってみた - YouTube


ゲームのいたるところで犯罪が起こる可能性があり、自分が加害者にも被害者にも、さらには被害者を助けたり見捨てたりも自由。「建物の中でアイテムを拾う」というゲームならあるあるな行為も、レッド・デッド・リデンプション 2では「何俺のもん取ってんだ!」といった具合にNPCとケンカになることも。つまり、このゲームに限って、通用するのは「ゲームの当たり前」ではなく「現実世界の当たり前」です。


銃撃戦に強盗、ケンカなど暴力的なイベントが多いものの、それだけではありません。狩りや釣りで自分や仲間の食料を集め、自給自足の生活を送ったり……


気球に乗って空の旅に出かけることも可能。


視界がグニャングニャンになるまで酒を飲みまくって……


そのまま立ちションすることもできます。


他にも、女性の参政権を訴える人々による市民運動に参加したり……


お風呂に入ってきれいな(?)おねえさんに体を洗ってもらったり。


敵に捕まって拷問されるという無法者らしいイベントや……


森の中でバッタリ謎の宗教団体の集会に遭遇する、ということもあります。


ギャングらしからぬ清楚なタキシードに身を包み、上流階級の社交場に潜入することも可能。


◆窮屈なまでのリアルさと、そこから生まれる圧倒的没入感
ストレス発散のためにゲームをプレイするという人も多いかと思いますが、レッド・デッド・リデンプション 2は「いつでも無法者になれる」という意味ではストレス発散になるかもしれませんが、ゲームの操作性や時間感覚は爽快さからはかけ離れた「リアルすぎるもの」となっています。

キャラクターの動作はリアルさをそぎ落として俊敏性を高めた「操作における快適さ重視のもの」ではなく、リアルさ重視の「現実のように重力をしっかりと感じるもの」です。他にも、生活の拠点となる「キャンプ」などの「他人の迷惑になる場所」ではダッシュが禁止となっており、ちょっとした移動でも遅かったり重かったりでストレスを感じることがしばしば。たしかに現実世界なら自分の家の中で走り回るような大人は少ないかもしれませんが、「ゲームの中でくらい許してくれても……」という気にならなくもないところ。しかし、そういった細かいディテールを追求することで「ゲームなのにゲームじゃないかのようなリアルさ」を演出しているとも言えます。


「動き」だけでなく「時間」的なリアルさの追求もあります。最も顕著なのが広大なマップに点在する町から町への移動。リアルな旅ほどではありませんが、カップ麺が作れてしまうくらい時間がかかってしまいます。特に序盤のファストトラベルが使用できないタイミングでは、移動時間を短縮することができないので、延々と馬を走らせ続けるということもしばしば。ただし、移動時にちょっと目を離すと馬が木にぶつかって瀕死になったり、崖から落ちてゲームオーバーになったりすることもあるので、リアルさを追求しすぎてゲームとしては不自由に感じる場面もままあります。


そんな長い移動時間は、ただただ美しい自然をぼーっと眺めたり、ギャングの仲間がいれば会話したり。長い移動時間の時間の潰し方はまるで「現実世界を馬で旅行した時の時間の潰し方」と同じようです。


リアルさを追求した結果生まれた不自由さに、序盤はイライラさせられることがあるのも確か。しかし、「動き」や「時間」といった細かなディテールまでリアルさを求め、まるで現実の世界をゲームの中に忠実に再現しているので、レッド・デッド・リデンプション 2は「ただのゲーム」ではなく、開拓時代のカウボーイになりきる没入型のシミュレーションに昇華されているとすら感じました。

ただのゲームとして考えていると服が汚れてしまうのが面倒だとか、全然使わないキャンプでの食事のために自分が食料を補充しなければいけないのが面倒だ……と感じていたのが、プレイを続けて徐々にゲームの中に引き込まれていくことで、気づけば「服が汚れたからお風呂に入りたいなー」だとか「自分が狩ってきた食料を使ってるんだからキャンプでシチューが食べたいな~」といった、ゲームの中のカウボーイ目線の考えばかり浮かぶようになっていき、不自由なのに心地よさすら感じました。


◆プレイを進めると加速するカウボーイ脳
没入感を生み出すもうひとつの要素に、プレイヤーの心理状態とゲームの主人公であるアーサーの心理状態が徐々に近づいていく、という点も挙げられそう。序盤はいきなり町で人に銃を向けて殺す、といった無法者らしい行動に「なんだかなー」と思ってしまうこともままあります。そんなどこかしっくりこない、感情移入しきれないような感覚も、プレイを続けて徐々にゲームの世界に入り込んでいくことで消えていきます。その理由は単純で、プレイヤー自身の思考が無法者の思考に慣れていくから。

理不尽な暴力やギャングの横暴さに対する抵抗感は、プレイを続けることで薄れていき、それに対してゲームの中の主人公・アーサーは、物語が進むにつれてギャングとしてのこれまでの当たり前に疑問を抱き、自分たちが時代に取り残されているような感覚を覚えるように。プレイヤーの心理がギャングよりになっていき、アーサーの心理がギャングから離れていくことで、プレイヤーとアーサーの心理があるタイミングでガッチリかみ合い、そこからはもはや気づけば「俺はアーサー!」という感覚しかありません。ゲーム自体の没入感の高さも相まって、溶けこめずにいたはずのカウボーイの世界に身も心もドップリ。


元からカウボーイ脳な人もいれば最後までカウボーイ脳に慣れきれないという人もいるかと思いますが、不自由なまでにリアルさを追求して没入感を高めたレッド・デッド・リデンプション 2なら、かなり多くの人がカウボーイ脳に染まって終わりゆく無法者の時代を楽しめるようになるはず。無法者たちと傍若無人の限りを尽くすも良し、正義の心と悪の心の狭間で揺れるも良しなので、最終的には自分なりの楽しみ方を見つけて開拓時代を自分なりに楽しめばOKです。

なお、レッド・デッド・リデンプション 2のPlayStation 4版はAmazon.co.jpで税込6849円で販売されています。

Amazon | レッド・デッド・リデンプション2【CEROレーティング「Z」】 - PS4 | ゲームソフト

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in レビュー,   動画,   ゲーム, Posted by logu_ii

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