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YouTubeの著作権保護システムの悪用で「再生数を4700万再生以上盗まれた」と人気チャンネル運営者が訴える

by Szabo Viktor

自身のYouTubeチャンネル上に330万人以上のチャンネル登録者を抱える人気トラックメーカーのTheFatRat氏が、YouTubeの著作権保護システムを悪用する人々により「自分のムービーは4700万再生以上盗まれている」と訴え、システムの改善を要求しています。

How my video with 47 million views was stolen on YouTube - YouTube


「このムービーを作成したのは、僕が作ってYouTubeにアップした『The Calling』という曲を何者かが盗んだからです」と語るのが、YouTube上でさまざまな楽曲を配信する人気トラックメーカーのTheFatRat氏。同氏によると、盗まれた「The Calling」は1日当たりの10万回以上、これまでに4700万回も再生されており、「楽曲だけでなく再生数も盗まれた」と感じている模様。どのように楽曲が盗まれ、そして作者から離れたところでマネタイズされているかをTheFatRat氏はムービー中で説明しています。


まず、TheFatRat氏が作成した「The Calling」は以下のもの。

TheFatRat - The Calling (feat. Laura Brehm) - YouTube


以下の画像に写るムービーもすべてTheFatRat氏が作成しYouTube上で公開している楽曲。盗まれたという「The Calling」は、2016年にYouTube上で公開されました。


「The Calling」は2人の友だちと共に作成した曲だそうで、ボーカルを務めてもらったLauraさんおよび、アートワークを担当してもらったJordan Grimaさんにはしっかりと報酬を支払ったとのこと。


リリースに際して、「The Calling」はユニバーサル・プロダクト・コード(UPC)も取得しています。


「The Calling」への反響は素晴らしいもので、「多くのユーザーがこの曲を愛してくれた」とTheFatRat氏。しかし、TheFatRat氏は2016年の11月19日にYouTubeからある1通のメールを受け取ることになります。そのメールには「Ramjets」というユーザーが著作権侵害を申し出ており、ムービーの再生により生じる収益はTheFatRat氏ではなくRamjetsのアカウントに振り込まれることになる、という内容が記されていたそうです。メールを受け取った際、TheFatRat氏は「間違いが起こっただけ」と思っていたそうです。


自分の作った楽曲の著作権を自分が持っていないわけがないということで、YouTubeに抗議のメールを送信したTheFatRat氏。メールには「The Calling」の作曲者やUPC、自身の経歴を示すためのWikipediaのページへのリンクなどが記されています。


メールを送ってからひと月ほどが経過した12月12日、TheFatRat氏は再びYouTubeからメールを受け取ります。そこには「あなたの抗議は受け付けられませんでした」と書かれており、「(最初にTheFatRat氏の楽曲が自分の著作権を侵害していると主張した)RamjetsとTheFatRat氏の言い分を検討した結果、あなたの主張を承認することはできないという判断が下されました」と記されていたそうです。


そのため、引き続き自分が作成した楽曲の持ち主は「Ramjets」であるとされたままになってしまったTheFatRat氏。


TheFatRat氏は再びこの判断に抗議しており、それに続き、ストライキの意味も込めて自身のYouTubeアカウントを更新しないことに決めます。つまり、TheFatRat氏は多数の登録者と再生回数を誇るチャンネルから得られる収益を完全に捨て、YouTubeが間違った著作権関連の処理を行っていることを世の中に訴えようとしたわけです。


それでも「The Calling」のコンテンツ所有者は依然としてTheFatRat氏ではなくRamjetsであるとされていました。そして、メールには「YouTubeが著作権について仲介することはない」と記されていたそうです。しかし、度重なる主張の成果としてRamjetsのメールアドレスをTheFatRat氏は入手することに成功します。


「YouTubeは著作権について仲介することはないらしいが、最初に僕のムービーをどこかの知らない企業に与えたのはYouTubeだ。そしてそいつらが自分がムービーの所有者だと主張し始めたというのに、YouTubeは『自分たちとは何の関係もない問題だ』とぬかしやがる」と、YouTubeの取った対応を批判しています。


続いて、自身のムービーを盗みいけしゃあしゃあと「自分のムービーだ」と主張するRamjetsについて調査をスタートさせたというTheFatRat氏。メールアドレスの入手には成功しましたが、結論から言うと「何も得られなかった」とのこと。

RamjetsのYouTubeチャンネルは以下の通り。コンテンツは1つもアップロードされていません。


ページ下部にはTwitterやInstagramのアカウントへのリンクが貼られていますが……


どのリンクも全くの嘘っぱちで、アカウントはおろかウェブサイトすら用意されていません。もちろん公開されていたメールアドレスも使われていないものだった模様。


そこで、TheFatRat氏は再びYouTubeに「Ramjetsとコンタクトが取れない」とを申告したそうですが、「申告者に関する他の情報を教えることはできません」とだけ返答されたそうです。


その後もやり取りを続けていくと、Ramjetsは「TheFatRat氏のThe Calling権利」を主張しているわけではなく、「Andres Galvezというアーティストの楽曲の権利を所有しているから、The Callingのムービーに申し立てを送った」ことが明らかになります。


そこでAndres Galvezについて調べたTheFatRat氏。Andres GalvezのSoundCloudページを発見したのですが、ここではTheFatRat氏のThe Callingが違法に配信されていたそうです。「リミックスしたならまだしも、配信されていたのは明らかに海賊版だった。僕の楽曲を使って他の誰かが別のムービーを作るなどしても構いませんし、そのムービーを収益化しても構いませんが、僕のムービーをそのまま収益化することは絶対にやめてください」とTheFatRat氏は語っています。


自分が作ったはずのムービーが著作権申し立てされてしまった理由をついに突き止めたTheFatRat氏は、Andres Galvezにコンタクトを取ります。ここでは直球に「君の『The Calling』という楽曲は、僕の『The Calling』という曲のボーカルを使っていることに気づいているだろ?」「君の海賊版のせいでYouTubeの著作権侵害に引っかかってしまった」とメッセージを送ったところ……


Andres GalvezはThe Callingの海賊版を配信していたことは認めたものの、Ramjetsとの関係については「奇妙なことに、私はそのような契約(Ramjetsが主張していたもの)については聞いたこともありません。また、そのような相手(Ramjets)と契約をかわした覚えもありません」と否定しています。


その後、Andres GalvezはYouTubeに直接メールを送り、Andres Galvezは海賊版のThe Callingを配信していただけであり、本当の権利者はTheFatRat氏であると説明したそうです。しかし、それ以降、YouTubeからはなんの音沙汰もないとのこと。


TheFatRat氏は、自分と同じようにオリジナルのコンテンツに対して「著作権を侵害している」と通知されて戸惑っているクリエイターがYouTube上には多数いると指摘しています。TheFatRat氏と同じように間違った著作権侵害の申し立てに直面したというのは、Gus Johnsonや……


Drew Gooden氏。


TheFatRat氏などの比較的規模の大きなYouTubeチャンネルなら弁護士を雇って著作権侵害についての問題にしっかり腰を据えて取り組むこともできますが、中小規模のチャンネルの場合はそのまま泣き寝入りしてしまう可能性も十分に考えられます。


TheFatRat氏は、ムービーコンテンツの盗用や間違った著作権侵害についての申し立ては、犯罪であり多額の罰金を支払う羽目になると忠告。

「YouTubeのコミュニティを成長させるべき」という主張に対し、TheFatRat氏は「YouTubeはチャンネルが大きくなってくるとアカウント利用者をイベントに招待し、チャンネル運営に必要な知識を教育してくれており、コミュニティとしての対応は他のどのサービスもおよばないレベルである」と述べています。


それでは一体何が求められているのかというと、TheFatRat氏は「YouTubeの著作権保護システムが悪用されている、ということをYouTubeのチャンネル運営者がしっかりと認識すること」を挙げています。そして、そのためにはソーシャルメディア上で「#FixYouTubeCopyright」というハッシュタグを使い自分の意見を投稿することが必要だと訴えています。

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in ネットサービス,   動画, Posted by logu_ii

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