サイエンス

パズルを解いても知能の低下ペースが落ちるわけではない、と研究で示される

by stevepb

パズルを解くことが知能低下を予防する、と言われることがよくありますが、最新の研究で「パズルを解いても知能の低下スピードが遅くなるわけではない」ということが示されました。しかし、それでも研究者はパズルを解くことには意味があると述べています。アバディーン大学、NHSグランピアン、アイルランド国立大学たちが、その理由を説明しています。

Intellectual engagement and cognitive ability in later life (the “use it or lose it” conjecture): longitudinal, prospective study
(PDFファイル)https://www.bmj.com/content/bmj/363/bmj.k4925.full.pdf

このコホート研究では、被験者の幼少期のデータ、および64歳から15年間追跡した知能についてのデータが使用されました。研究者は1947年に11~12歳で知能テストを受けた64歳前後のスコットランドの成人を498人集めたとのこと。そして、64歳時点で記憶力と情報処理に関するテストを行い、以降14年で同じテストが5回繰り返されました。研究者はこれにより、幼少期の教育状態と知能を考慮しつつ、「知的な取り組み」が知能にどう影響するかを観察しました。

「知的取り組み」をどのくらい行っていたのかは、以下の4種類の質問で測定されました。ポイントはそれぞれのことについて「行っているのか」ではなく「楽しんでいるか」と質問されたことです。

・読書
「難解な小説を読むか」「年に10冊以上の本を読むか」といった質問
・抽象的思考
現実的な結果を生み出さなくとも物事について深く考えるのが好きか、といった質問。
・問題解決行動
難しい問題に対して新しい解法を生み出すことが楽しいか、といった質問
・知的好奇心
幅広い範囲において新しい物事を学ぶのが好きか、といった質問

また、知能テストでは声を出して読んだ単語のリストをどれくらい覚えておけるか、図形と数字をどれだけ結びつけることができるか、が調べられたほか、言語記憶や精神的処理の速度も調べられたといいます。

この結果、全体として、「子どもの時の知能が高いほど64歳以降も知的取り組みを行う傾向にあること」「女性は男性に比べて精神的処理と知的取り組みのスコアが高いこと」が示されました。そして当然の事ながら被験者の知能スコアは年齢が高くなるつれて低下したことも示されています。

by Noelle Otto

498人の被験者のうち最後まで研究に参加したのは96人で、13人が不通になり、57人が死亡し、332人が研究への参加を途中で辞退したとのこと。このような中でわかったのは、「問題解決行動」は、子どもの頃の学力や教育状態を考慮しても、知能テストのスコアの高さと結びついていることでした。一方で、読書や知的好奇心といったことも高スコアと結びついてはいたのですが、子どもの頃の知能や性別といった要素でも説明ができると研究者は述べています。

そして興味深いのは、4つの「知的取り組み」のいずれも、「知能が落ちていく速度」との関連性が見いだされなかったとのこと。


これらの結果から、研究者は「問題解決行動が好きな人とそうでない人で知能が落ちていく速度は同じだが、問題解決行動が好きな人はスタート時点のレベルが高いため、ダメージが顕著になるまでの余裕がある」と結論づけました。つまり、問題解決行動は知能の向上に結びついているように見えも、「知能低下を防ぐ」というものではないのです。

一方で、年齢を重ねても知能テストを受けようとする人は「自分の知能はまだ十分に保てている」と感じている人で、認知症を患う人は途中でドロップアウトする傾向にあります。このことから、今回の研究では知的取り組みの「知能低下を防ぐ」という効果を過小評価している可能性はあるとのこと。

by Vlad Sargu

また観察的コホート研究そのものの問題点として、1つの要素が別の要素の原因であるとは結論づけられないという限界があります。しかし、長年続けた知的取り組みや問題解決行動は知能の高さと関係しており、難しい問題に取り組むのは「時間の無駄ではない」と研究者らは述べました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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