サイエンス

太陽フレアの影響でベトナム戦争時代に設置された「機雷」が誤爆していたことが機密解除資料から判明

By Commander, U.S. Naval Forces Europe-Africa/U.S. 6th Fleet

太陽の表面で大きな爆発が起きて大量のエネルギーが宇宙空間に放出される現象「太陽フレア」は、地球上の送電網を破壊したり、コンピューターなどの電子機器に多大なる影響を与えることが知られています。1972年に起こった太陽フレアは、当時のベトナム戦争の際にアメリカ軍が海中に設置した爆弾「機雷」に影響を与え、起爆していたことが機密解除された記録から明らかになっています。

On the Little‐Known Consequences of the 4 August 1972 Ultra‐Fast Coronal Mass Ejecta: Facts, Commentary, and Call to Action - Knipp - - Space Weather - Wiley Online Library
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1029/2018SW002024

Massive Solar Storm Detonated Hidden American Bombs During the Vietnam War, Navy Records Show
https://www.livescience.com/64062-mines-solar-storm-1972-vietnam.html

太陽フレアは太陽表面で頻発しており、小規模なものは1日で3回程度発生している現象。しかし時おり発生する大規模な太陽フレアでは極めて大きなエネルギーが放出され、その一部が地球に到達するだけでも大きな被害をもたらします。その最たる例として知られているのが1859年の太陽嵐、別名「キャリントン・イベント」で、発生時には普通は北極圏でしか観測されないはずのオーロラがハワイなどでも観測されたほか、あまりにオーロラが明るかったためにアメリカのロッキー山脈で働く炭鉱員が朝と勘違いして朝食の支度を始めてしまったことも記録されています。

直近では、1989年3月に起こった磁気嵐がよく知られています。この時は、カナダのケベックで送電網が破壊されて大規模な障害が生じたほか、アメリカの気象衛星の通信が止まってしまうなど世界中で大きな影響を受けました。

1989年3月の磁気嵐 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/1989年3月の磁気嵐


NASAが観測した太陽フレアの一例はこんな感じ。地球の直径の10倍以上にもなる大きな炎のリングが太陽表面に生じ、あるタイミングで爆発的な動きを起こして多くのエネルギーや物質を宇宙空間へと放出します。

NASA | Magnificent Eruption in Full HD - YouTube


そして、1972年に起こった太陽フレアでも珍しい現象が確認されたとのこと。太陽フレアでは通常、高いエネルギーを帯びた質量放出物が数日かけて地球に到達して被害を及ぼしますが、同年8月2日から4日にかけて発生した大規模な太陽フレアは発生からわずか14.6時間で地球に到達。その際には地球規模でラジオ電波が障害を受け、16時間にわたって高いX線が観測され続けたそうです。また、観測史上初めて人工衛星がガンマ線の検出に成功したのもこの時だったとのこと。そしてもちろん、全球で大規模なオーロラが発生し、その際にはオーロラで影ができるほどの明るさだったといいます。

今回明らかにされたのは、この太陽フレアと同じタイミングで発生した「大量の機雷の謎の爆発事件」です。ベトナム戦争末期にアメリカ海軍が北ベトナムの海に設置した機雷が、設置からわずか数カ月というタイミングで大量に爆発。普通では考えられない謎の爆発現象と太陽フレアの関連性が指摘されたのですが、この件は軍事上の機密情報として長らく明らかにされてこなかったとのこと。


約50年前に起こった太陽フレアによる機雷誘爆事件ですが、この問題はありとあらゆるデバイスが電子制御される現代ではさらに大きな脅威となることが強く懸念されています。1970年代に比べ、2010年代後半の世の中は過去とは比べものにならないぐらい電子機器に依存しており、キャリントン・イベントの時と同じように送電網が破壊されるだけでも現代人の生活が壊滅的な被害を受けることは明らか。いま普通に使っているスマートフォンをはじめ、PCやインターネット、テレビやラジオといった情報源が完全に使えなくなってしまう可能性すら確実に存在します。

いくら技術が発達しても、太陽が生み出すほんの小さな「くしゃみ」でさえ人類は十分に対処することは困難です。宇宙科学の発展により、大規模な太陽フレアの発生を検知して地球への影響を予測する宇宙天気予報も発達しています。とはいえ、台風や地震などの災害と同じように、「太陽フレア」による影響をできる限り小さくするために、当面の食料や水を用意しておくなど普段からの準備をしておくことも必要といえそうです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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