ハードウェア

第3世代Ryzenで採用されるAMDの次世代アーキテクチャ「Zen 2」についてWikiChipが解説


AMDが2019年に7nmプロセスで製造する第3世代「Zen」マイクロアーキテクチャ「Zen 2」を採用するCPUを製品化します。すでにサーバー向け製品EPYCで発表されているCPUコードネーム「Rome」を含めて、AMDの製品ロードマップについて半導体テクノロジー向け情報サイトWikiChip Fuseが解説しています。

AMD Discloses Initial Zen 2 Details – WikiChip Fuse
https://fuse.wikichip.org/news/1815/amd-discloses-initial-zen-2-details/

◆Zen 2マイクロアーキテクチャ
Zen、Zen+に続く第3世代のZenマイクロアーキテクチャの「Zen 2」は、CPUコアはTSMCの7nmプロセスによって製造されます。Zen 2世代では拡張機能が大幅に強化されており、スループットを向上させるために、フロントエンドを調整し分岐予測ユニットが再構築されています。これにはプリフェッチの改良や命令キャッシュに対する公開されていない最適化が多数含まれるとのこと。

バックエンドの改良では浮動小数点ユニットが変更されています。中でもデータバスの拡大は目を見張るレベルで、これまで2つの128ビットのマイクロOPによって実現してたAVX命令は、1つの256ビット幅のデータパスで実行可能になります。また、ディスパッチ帯域幅とリタイヤ帯域幅の両方が増加することでIPC(クロック当たりの命令実行数)が増加し、Zen/Zen+のファームウェアアップデートによって取り入れられていた脆弱性Spectreの軽減措置もハードウェアに導入されています。


AMDは10nmプロセスと7nmプロセスの両方を検討した結果、より低消費電力で高密度を実現できる7nmプロセスにゴーサインを出したとのこと。AMDによると7nmプロセスを採用することで半導体の集積密度は2倍になり同じ電力であれば25%増しの性能になるとアピールしています。2018年6月に開催されたComputex Taipei 2018ではAMDは性能を「35%増し」と主張していたのでややトーンダウンしているものの、大幅な性能向上により第3世代のRyzenはマルチコア性能だけでなく、シングルコア性能でもIntel CPUに追いつき追い抜こうとしています。

AMDはすでにZen 2ベースのチップのサンプリングを行っており、2019年に市場に投入される予定です。


◆Rome
第2世代のEPYCではZen 2世代のマイクロアーキテクチャがベースとなり、コードネーム「Rome」という新しいマルチダイ構成のCPUが採用されることになりました。


AMDが7nmプロセス・最大64コアのデータセンター向けCPU「Rome」と7nmプロセスGPU「MI60」を発表 - GIGAZINE


第1世代EPYCのNapleでは8個のCPUコアとI/Oやメモリインターフェースを1つのダイに入れ、これらを4つ結合させて32コアを実現していましたが、RomeではI/Oとメモリを管理する集積I/Oダイを中央に配置し、その周りに演算コア(チップレット)を配置するという構成が採用されています。


中央のI/Oダイは14nmプロセスで製造され、それを取り囲む8つのチップレット(CPUダイ)は7nmプロセスで製造されます。Romeでは、8コアのCPUダイが8つで最大64コアを実現。64コア/128スレッドとなる第2世代EPYCは、第1世代EPYCからスループットを倍増させAVX2性能では4倍増となります。


RomeでもPCI-Expressは128レーンを維持しますが、新たにPCI-Express Gen 4をサポートし、転送速度は8GT/sから16GT/sへと倍増します。また、ソケットあたり最大4TBのDDR4メモリを8チャンネルでサポートします。第2世代のInfinity Fabricが第1世代と同じく16個のベアを使っていると仮定すれば25GT/sで動作することになり、データレートはNVIDIAのNVLinkと同等です。ただし、AMDのInfinity Fabricは1リンクあたりでNVLinkに比べて2倍の帯域幅を提供できます。


◆I/Oダイ
中央に別で切り出されたI/Oダイのデザインがもたらす可能性についてもWikiChip Fuseは指摘しています。I/Oやサウスブリッジなどの冗長コンポーネントをI/Oダイに移行させ、I/Oダイによる集中型のコントロールになったことで、「演算用のCPUダイをGPUやFPGAなどの他のロジックに交換できるようになるのではないか?」とWikiChip Fuseは考えています。AMDはこのような計画を発表していませんが、Romeではより柔軟なシステム構築の可能性があります。


◆ロードマップ
AMDは今後のロードマップについても言及しています。前述の通りZen 2が2019年にリリース予定で、その先の7nm+で製造されるZen 3も予定通りに開発が進んでおり、さらにその先のZen 4についても設計は完了段階にあるとのこと。2019年以降もRyzen&EPYCの性能向上に期待できそうです。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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