サイエンス

「歩き方だけで個人を識別する」監視システムが中国で注目されている


社会の安全を保つための監視システムでは機械が個人の顔を見分けるようなことも一般的になっていますが、顔が隠されていたり解像度が高くないと判別しにくかったりと欠点も多くあります。そんな欠点をカバーする新しい施策として、「歩き方解析」を押し進めていると中国当局が発表しました。

Chinese 'gait recognition' tech IDs people by how they walk
https://apnews.com/bf75dd1c26c947b7826d270a16e2658a


歩容解析を用いた新しい監視ツールは、顔がカメラの死角になっていても、人々の体の形や歩き方から個人を判別可能というもの。この「歩容解析」は既に北京と上海の警察が試験的に使用しているとのことです。

by tadfad

中国の人工知能開発をリードするWatrixのCEO・Huang Yongzhen氏は、歩容解析のシステムが最大50メートル離れた人々を識別できること、またその人が後ろを向いていたり顔を覆っていたりしても問題ないことを述べ、高解像度で拡大された映像が必要な「顔による認識」の欠点を補うことが可能だと主張しています。歩容解析は体全体の特徴を分析しており、脚を伸ばしたりがに股で歩いたりと工夫しても、だますことは難しいようです。

このシステムの発展のため、Watrixが1億元(約16億円)を調達したと中国メディアが発表しています。顔認証を主に用いている中国警察の中には歩容解析のシステムを歓迎していない人もいる一方で、中国のコラムニスト・評論家のShi Shusi氏は、社会的統制を強めている北京においてこのような技術が向上するのは自然なことだとも述べています。

by Kevin Spencer

歩容解析の技術自体は新しいものではありません。イギリスの研究者やアメリカ国防情報システム局では10年以上も歩容解析の研究が進められており、また日本でも2013年から大阪大学の教授が警察庁と協力し試験的に歩容解析を実施しています。

一方で、歩容解析を商業化しようという動きはほとんどありません。イギリスのサウサンプトン大学で歩容解析を専門に研究するMark Nixon氏によると、顔の認証は1枚の画像を参照できればよいのに対し、歩き方の解析には連続した画像が不可欠のため、生物測定学の中でもかなり複雑なものになるのだそうです。

Watrixのソフトウェアは、ビデオから個人のシルエットを抽出し、そのシルエットの動きを分析して「歩き方モデル」を作成します。リアルタイムに識別を行えるものではなく、アップロードされた1時間のビデオを検索するのに10分ほどかかる代わりに、カメラは特別なものである必要はなく、監視カメラの映像をそのまま分析に用いることができます。


Huang氏によると、歩容解析は顔認証ほどの正確性を持つわけではないものの、94パーセントの正確性となっており、これは「商用には十分な割合」とのこと。Huang氏は歩容解析と顔認識を併用することを想定しており、監視だけではなく具合の悪い人などを見つけて手助けすることで、市民に安全で便利な生活が保障されることを願っていると述べています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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