サイエンス

地球温暖化はビットコインマイニングだけで2033年までに限界を迎える


近年の国連による気候変動に関する報告書によると、気温が現在よりも1.5度以上上昇することになると、壊滅的な気候変動が起こると示唆されています。そして、この「1.5度以上の気温の上昇」は、仮想通貨Bitcoin(ビットコイン)のマイニングだけでも20年以内に起こる可能性があるとされています。

Bitcoin emissions alone could push global warming above 2°C
(PDF)https://www.nature.com/articles/s41558-018-0321-8.epdf

Bitcoin Mining Alone Could Raise Global Temperatures Above Critical Limit By 2033 - Motherboard
https://motherboard.vice.com/en_us/article/neganb/bitcoin-mining-could-raise-global-temperatures-by-2-c

最新の研究によると、ビットコインがクレジットカードのような他の決済システムと同様の速度で世界中に広まっていく場合、ビットコインマイニングにより生じる熱で地球の平均気温は2033年までに2度上昇する可能性があることが明らかになっています。研究を発表したハワイ大学の研究チームは、ビットコインマイニング専用のハードウェア効率から、マイナーの所在地、さらにはマイニング施設のある国ではエネルギー消費によりどれほどの二酸化炭素が排出されているかまで、複数のデータを組み合わせた分析を行っています。


ハワイ大学の研究者たちによると、ビットコインマイニングにより2017年には6900万トンの二酸化炭素が排出されており、これは全世界のエネルギー生産から排出される二酸化炭素排出量の1%に相当するそうです。また、調査によればビットコインは全世界で行われているキャッシュレス取引の0.03%しか担うことができていないため、それに対してエネルギー消費量が多すぎるという問題が指摘されています。

ビットコインマイニングの環境への影響度合いを予測するため、ハワイ大学の研究者たちはクレジットカードや食洗機の社会での普及率を参考にしています。「クレジットカード」はその普及スピードがあまりに高速だったため、「食洗機」は反対に普及速度が遅かったため、比較用のテクノロジーに参考にされた模様。ビットコインが2つのテクノロジーの普及速度の平均速度で広まった場合、普及率の変化は以下のグラフの赤線の通りとなります。この速度でビットコインが普及していくと、わずか16年で地球の平均温度は2度も上昇してしまう模様。なお、予測される中で最も遅い採用率でビットコインが普及したとしても、22年以内に地球の平均温度は2度以上高くなってしまうと研究チームは分析しています。


なぜビットコインマイニングが地球温暖化に影響するのかはビットコインマイニング専用の施設がどのようなのになっているのかを知ればよくわかります。ビットコインのマイニングは膨大なコンピューティングパワーを必要としており、マイニング施設によっては3000台ものマイニング専用コンピューターが配備されているそうです。

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また、オランダ人エコノミストのビットコインマイニングAlex de Vries氏が運営する仮想通貨分析サイト・Digiconomistによれば、ビットコインのマイニングにはオーストラリアで使用されるのとほぼ同等の電力が使用されているそうです。なお、Digiconomistによると、ビットコインに次ぐ規模となった仮想通貨のEthereum(イーサリアム)のマイニングでも、小国一国分の電力が使われている模様。

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Vries氏はビットコインマイニングが地球の平均気温を2033年までに2度上昇させる可能性があるという研究結果に驚きを示しており、「ビットコインのエネルギー消費に関連した、これまでとは別の非常に衝撃的な発見です。(ビットコインのマイニングは)電力需要が極端に大きいことは既に明らかになっていましたが、環境への影響までは明確に把握されていませんでした」と語っています。

また、研究に携わったハワイ大学の地理学者であるCamilo Mora氏は、「ビットコインの将来を正確に予測することはできませんが、他の技術が普及する際の最速ペースで広まれば、気候変動による影響は人間や動物にとって非常に悪いニュースとなる」と述べました。

ただし、これらの予測は発電に使用される燃料や再生可能エネルギーの比率が20年後まで同じであると仮定したものである点には注意する必要があります。世界中でより広く再生可能エネルギーが普及すれば、ビットコインマイニングによる環境への影響がより小さくなっていくことは明らかです。また、ビットコインの仮想通貨としての価値が低下すれば、ビットコインが普及しなくなり環境への影響度合いも低くなるものとも思われます。

仮想通貨マイナーの一部が既にクリーンエネルギーの利用を始めていますが、仮想通貨のマイニング作業は24時間無休で行われるため、仮想通貨のさらなる発展には電力需要を削減する必要があるとしています。

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by logu_ii

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