【訃報】Microsoftの共同創業者ポール・アレン氏が死去

ビル・ゲイツ氏と共にあのMicrosoftを立ち上げ、テクノロジー・科学・スポーツとさまざまな分野に影響を与える投資家としても活躍してきたポール・アレン氏が、現地時間で2018年10月15日(月)に亡くなりました。65歳でした。

Paul Allen, co-founder of Microsoft, dead at 65 - CNN
https://edition.cnn.com/2018/10/15/tech/paul-allen-dead/index.html

アレン氏が経営していた投資会社Vulcanが、最初にアレン氏の死去を伝える声明を出しています。声明によると、アレン氏は悪性リンパ腫の一種である非ホジキンリンパ腫の治療を受けた2週間後に、合併症で亡くなったそうです。アレン氏の妹であるジョディ・アレン氏は、「私の兄はあらゆるレベルで驚くべき人物だった。彼は最愛の兄であり、叔父であり、そして素晴らしい友人でした」と声明の中で語っています。

なお、アレン氏の公式Twitterアカウントは、2018年10月1日に非ホジキンリンパ腫が再発したことを報告していました。しかし、このツイートでは「治療を始めました。医師たちは楽観的で、私は良い結果を見ています」と書かれており、当初は治療の経過が良好なものであるとみられていたことがわかります。

Microsoftの共同創業者であるゲイツ氏は、「私の最古の親友であるポール・アレンが死去したことに心を痛めている。ポールは本物のパートナーであり、親友だった。パーソナルコンピューティングは彼なしでは存在しなかっただろう」と、アレン氏の功績を称える言葉を贈っています。

アレン氏は1953年にアメリカ・ワシントン州シアトルで生まれ、地元の名門私立校であるレイクサイド中学・高校でゲイツ氏と出会いました。2人はコンピューター好きという共通点から意気投合し、しばしば学校のコンピューターをハッキングしていたという驚きのエピソードが以下の記事に書かれています。

女子生徒との出会いを求めて学校のPCをハックしたことをビル・ゲイツが告白 - GIGAZINE

高校卒業後はワシントン州立大学に進学したアレン氏ですが、2年後に中退し、プログラマーとして働き始めます。しかし、1975年に当時ハーバード大学に在籍していたゲイツ氏を説得してMicrosoftを設立。2人がMicrosoftを設立する影には世界初の個人向けコンピューターである「Altair 8800」の登場があり、そのエピソードは以下の記事で読むことができます。

誕生から50年を迎えたプログラム言語BASICの歴史、その精神とは - GIGAZINE

多くの人々がこのマシンに心を奪われましたが、この中には後にMicrosoftを立ち上げるビル・ゲイツ氏とポール・アレン氏の姿がありました。Altiar 8800にBASICを移植する可能性を見いだしたゲイツ氏はMITSに連絡を取り、実際にはまだ完成していないAltair 8800向けのBASICパッケージの売り込みに成功。そこから8週間かけて実際に製品の完成にこぎ着け、二人は「Micro-Soft」(当時はハイフン入り)を設立し、後のMicrosoftに至る道のりを歩き出すことになりました。

1983年にMicrosoftを退社したあとも、起業家や投資家として活躍してきたアレン氏。NFLのシアトル・シーホークス、NBAのポートランド・トレイルブレイザーズ、MLSのシアトル・サウンダーズFCのオーナーとしても知られており、地元シアトルに多大な貢献をしてきました。

アレン氏が活躍したのはビジネスやスポーツだけでなく、学術面でも多大な貢献を果たしています。2017年にはアレン氏が率いる探査チームが、第二次世界大戦時にアメリカ軍が運用し、1945年に旧日本軍によってフィリピン沖で撃沈された重巡洋艦「インディアナポリス」が水深5500メートルの海底に沈んでいるところを発見し大きな話題となりました。

原爆の部品を極秘輸送した後に沈没した重巡洋艦「インディアナポリス」をポール・アレン氏らが深海で発見 - GIGAZINE

そのほか、アレン氏は音楽愛好家であることも知られており、ジミ・ヘンドリックスの「アー・ユー・エクスペリエンスト？」を聴いてギターを弾くようになったことがよく知られています。1995年には、ヘンドリックスの親族がジミ・ヘンドリックスの楽曲に対する権利を取り戻すために行っていた法廷闘争に、アレン氏が力を貸したとWashington Postに報じられました。加えて、地元シアトルの音楽とポップカルチャーの発展のために1億ドル(約110億円)の資金を集め、ポップカルチャー博物館を建設しています。

MoPOP

アレン氏の訃報は既に世界中に広まっており、多くの著名人がアレン氏を悼む言葉を残しています。

Microsoftのサティア・ナデラCEOは、Microsoftの公式Twitterアカウント上で「ポール・アレンの我々MicrosoftおよびIT産業、ひいてはコミュニティ全体への貢献は、不可欠のものでした。Microsoftの共同創業者としての彼の静かで永続的なやり方により、魔法のようなプロダクトやエクスペリエンス、そして団体が生み出され、世界を大きく変えてきました。私は彼と彼の知的好奇心から多くの事を学びました。また、彼の好奇心と高い基準を求める心は、私とMicrosoftの全社員に影響を与え続けるものです。我々の心はポールの家族と、彼を愛するすべての人と共にあります」という言葉を贈っています。

Appleのティム・クックCEOは、「私たちの業界はパイオニアを失い、世界は優れた力を失いました。我々はポールの友人や家族、Microsoftのすべての人々に深い哀悼の意を表します」とツイート。

NBAの第5代コミッショナーを務めるアダム・シルバー氏は、「ポール・アレンは究極のトレイルブレイザーズ(ポートランド・トレイルブレイザーズのファン)でした」と声明を出しています。また、NFLのコミッショナーを務めるロジャー・グッデル氏は、「安全なゲームを作り、不要なリスクからプレイヤーを守るための新しい方法を見つけるために、アレンは医師と一緒に不断の努力をしてくれた」と語り、チームのオーナーとしてだけでなく選手を守るための施策にも携わっていたことを明かしています。

Wikipediaは、「アレンは科学・技術・教育・野生動物保護・芸術・コミュニティサービスの発展に向け、生涯を通して20億ドル(約2200億円)を寄付しました。彼はまた、人間の脳機能の理解に専念するための研究所も立ち上げています」と、アレン氏のこれまでの功績を称えるツイートを投稿しています。

ヴァージン・グループの創業者であるリチャード・ブランソン氏は、「ポールアレンの訃報について聞くのはとても悲しいことです。多くのことを成し遂げてきた人物ではありますが、彼は商業宇宙旅行の先駆者でもありました。我々は宇宙探査が地球上の生活を改善するための新しい方法となるという信念を共有していました」とツイート。

実業家のマーク・キューバン氏は「安らかに眠れポール。あなたはとても素晴らしい人だったし会えなくなるのはさみしいよ」とツイートしています。