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音だけで周囲の状況を「見る」エコロケーションを練習する7つのコツ

by Oleksandr Pidvalnyi

コウモリやイルカは自分が出した「音」の反響を受け止めることで周囲の状況を知ることができます。しかし、人間でも目が見えない状況で、自分の出した音を使って周囲を「見る」ことは可能。エコロケーション(反響定位)に熟達したDaniel Kishさんが、その練習のコツを公開しています。

Teach Yourself to Echolocate - Atlas Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/how-to-echolocate

生まれつき両眼性網膜芽細胞腫(網膜がん)を患っていたダニエル・キッシュさんは、生後13カ月で両目の視力を失いました。動く際にエコロケーションを利用することを教えられたキッシュさんは、2018年現在、「チッチッ」と舌を鳴らしながら歩き、その反響音から周囲の状況を把握することができます。舌を鳴らすことで、キッシュさんは壁やドアの位置などを頭の中に描くことができるそうです。


キッシュさんが舌を鳴らしながら動くことで周囲を把握している様子は以下のムービーで見ることができます。

音で「見る」ことで、世界を動き回る - YouTube


キッシュさんは、エコロケーションは目が見えない人の自信や自立を支えると考えており、「World Access for the Blind」という非営利組織を立ち上げ、主に盲目の人々に対してエコロケーションを教えています。

実際にキッシュさんは自転車に乗ったり……

Blind as a Bat: Seeing Without Eyesight - YouTube


車道を渡ることが可能です。

Human echolocation lets blind man 'see' - YouTube


人間にもエコロケーションが行えるということは、数々の研究で支持されています。カリフォルニア大学バークレー校の研究者はエコロケーションの初心者であっても舌を鳴らすことで、目の前にある2つの物体のどちらが大きいかを当てられることを実験で示しています

目が見えずエコロケーションを使う人はキョウチクトウと常緑樹の違いを反響音から区別することが可能であるなど、目が見える人には難しい技をやってのけることなどから、キッシュさんは「視覚は他の感覚をにぶくさせる」と語っています。そんなキッシュさんが述べる、周囲の光景を「聞く」時に重要な事項は以下の通り。

◆1:音を聞く練習をする

by Alexas_Fotos

エコロケーションを始める前に、まず自分の周囲の環境音の変化を感じる練習を行うべき。車の運転席以外の席に乗った時に、目を閉じ、窓を開けて通り抜けるさまざまな場所の音に耳を澄ませます。「住宅地では、車が路駐車や木々、ポスト、郵便受けや住宅の隣を走っている時にそれを音で聞くはずです」「車が通り抜けると、車から発生した音は周囲に反射して違うふうに聞こえます」とキッシュさん。

◆2:必要な道具を手に入れる
1つの感覚を遮ると、もう1つの感覚が研ぎ澄まされるもの。ということで、目がいい人はアイマスクなどを使って目隠しを行いましょう。そして、練習には金属製のボウルまたはトレイも必要。動きながらエコロケーションの練習を行う時は杖を使うか、信頼できる人の手を借りる必要があります。

◆3:場所を選ぶ
キッシュさんのような熟達したエコロケーターは、部屋にあるものの素材に気を使います。スズを使った室内の装飾品や控え壁などは「サウンドを生きたものにする」とのこと。これらの素材は「あなたに歌いかける」とキッシュさんは語っており、よりエコロケーションが行いやすくなるようです。初心者がエコロケーションを練習する時は音を反響するものがない平地や、海辺のような音が妨害される可能性のある場所は避けます。「静かで、乱雑ではなく、かつ残響室ではないオープンスペース」がベストだそうです。

◆4:舌鳴らしを練習する

by Oleg Magni

舌鳴らしには、いい音もあれば悪い音もあります。2つの音が重なったような舌鳴らしは、反響音にかぶさることがあります。信頼できる音を作り出すのが大切になります。

初心者は歯を使って音を出す、舌打ちのような音がオススメだとキッシュさん。あるいは「check」「church」の「ch」にあたる音でもよいとのこと。重要なのは、自分にあった音の鳴らし方を見つけることで、一度「この方法」と決めたらそのやり方を続けるべきだそうです。

◆5:シンプルに始める
舌鳴らしの目標は3つあり、まず「ある/なし」の認識、次に「どの方向にあるのか?」ということの認識、3つ目が「どのくらい離れた場所にあるのか?」という認識です。この練習を行う際、キッシュさんは生徒たちを2人1組にし、一方の人にボウルやトレイを他方の人の頭上に掲げてもらいます。舌を鳴らすとボウルやトレイが音を反響するので、そこから位置を推測するわけです。

キッシュさんは頭の中にある「地図」を変える時にだけ舌鳴らしを行いますが、練習ではトレイやボウルの位置を頻繁に変えることで、反響音の拾い方を理解することができます。

◆6:動きながら試す

by Kaboompics

舌鳴らしの方法や音の拾い方を理解したら、次に行うのは「動きながらやる」という方法。廊下を歩きながら舌鳴らしを行うと、扉や曲がり角の存在がわかるかもしれません。

最初は手探りになるので、パートナーに「正しい道か」などを聞いてもOKですが、目隠しはしたままにします。「目隠しを外したい」という気持ちは大きくなるかもしれませんが、この時の人は適応過程のさなかにあるので、目隠しを外すことで全てが台無しになってしまうそうです。

◆7:必要なタイミングで休憩を挟む
全く新しい方法で世界を感じるということは、わくわくすることであり、混乱することでもあります。キッシュさんはこれまでにも目が見えて、かつ「視覚に頼らない」ことに不慣れな人たちが訓練を行い、35~40分ごとに休憩を必要とする様子を見てきたとのこと。目が見えない人々は慣れがあるため、もっと長い時間訓練を行えるといいます。

エコロケーションは訓練と忍耐が必要です。エコロケーションを得意とするようになるまでには時間がかかるかもしれませんが、エコロケーションを行うことで、全く新しい世界を「見る」ことができるとのことです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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