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天然と区別がつかない人工ダイヤモンドの作り方


科学技術により人工的に生み出す「人工ダイヤモンド」の作り方や、人工ダイヤモンドが宝石産業にもたらす影響について、海外メディアのThe Vergeが運営するYouTubeチャンネル・Verge Scienceが迫っています。

How science could save the diamond industry from itself - YouTube


人間の歴史において、ダイヤモンドは究極の贅沢品のひとつとして扱われてきました。


高価で美しく、収集が難しく、そして作り出すことは「不可能」とされてきました。


ほとんどのダイヤモンドは何十億年、もしくはそれ以上の年月をかけて、地球の地中深くにあるマントルにより作り出されます。地中の圧力と地熱が炭素を結晶化するのにちょうど適したものとなった際に、グラファイトの代わりにダイヤモンドが生成されると考えられています。こうして生成されたダイヤモンドは独特の結晶構造により高い耐久性を誇ります。


ダイヤモンドは火山の噴火により地表まで持ち上げられ、急激な温度の低下により冷えてかたまりダイヤモンドを含む火成岩のキンバーライトになったと考えられています。そういった珍しい生成プロセスがあるため、ダイヤモンドはとても貴重な鉱石として扱われてきたわけです。ただし、「作り出すことが不可能」という点は事実ではなくなってきています。


ダイヤモンド産業は20世紀の大部分で、大規模な価格調整カルテルのように働いてきました。そして、高価なダイヤモンドが重宝されることで、アフリカやその他の地域では紛争も起きるようになります。


ダイヤモンド産業やそれにより巻き起こった紛争により、環境は大きなダメージを負うこととなりました。


しかし、現在ではダイヤモンド業界の多くがこれまでとは異なるチャレンジを行っています。それが人工ダイヤモンドの作成です。人工ダイヤモンドの作成プロセスはより一般化しており、その工程も高速化しているため、天然のダイヤモンドよりもはるかに安く、それでいて天然のダイヤモンドと同じものを作り出せるようになっています。


「天然ダイヤモンドも人工ダイヤモンドもどちらも本物のダイヤモンドです。どちらも立方体構造の炭素からできています。また、2つを視覚的に見分けることは、非常に困難になっています」と語ったのは、ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(GIA)の主任研究員であるウーイ・ワン氏。


1950年代から、科学者たちがダイヤモンドの結晶化を地上で行う術を確立してきたことで、ダイヤモンドを作り出すためにかかる年月は数日から数週間で済むようになっていました。


その方法のひとつは、セ氏1600度まで加熱された反応室で高圧力をかけてダイヤモンドを作り出す「HPHT」と呼ばれるもの。


「HPHT技術は基本的に天然ダイヤモンドが作り出される際の地中深くにあるマントルを模倣してダイヤモンドを作りだそう、というものです」とワン氏。


そして、近年注目されているのが「化学気相成長(CVD)」と呼ばれる手法です。HPHTと同じ成果を、より低い圧力と温度で実現できます。CVDはメタンガスとマイクロ波を使用するのですが、控えめに言って「とても複雑」とのこと。


そこで、ワン氏の所属するGIAでは、「炭素原子を雪のように堆積させることで小さなダイヤモンドの種を作り出す」と表現しているそうです。


1950年代以降、多くの研究室で人工のダイヤモンドが作り出されましたが、そのほとんどが小さく暗い色をしていました。天然ダイヤモンドのような美しさを持っていなかったため、そのような暗いダイヤモンドはノコギリの刃やドリルの先端など、工具に使用されます。


しかし、過去6年ほどで人工ダイヤモンドを作成する技術は劇的に進化を遂げています。人工ダイヤモンドはこれまでよりも大きなものが作れるようになり、見た目も透明で美しく、天然ダイヤモンドと区別することはほとんど不可能になってきました。


「我々はGIAを通じて多くの人工ダイヤモンドを見てきましたが、それらの多くは人工とわからなかった。つまり、人工物であると判断することができなかったのです」と語るのは、GIAのエグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるトム・モーゼ氏。


そんなモーゼ氏とワン氏は、宝石業界が直面するであろう2つの問題を指摘しています。ひとつは「研究室で作られた人工ダイヤモンドは視覚的には天然のものと同じですが、価格は30%ほど安くなる」という点。つまり、人工と天然のダイヤモンドがサプライチェーンで混在してしまうと、価値が滅茶苦茶になってしまう、という指摘です。


GIAはダイヤモンドの起源を検証するための洗練されたテストサービスを提供する数少ない組織のひとつですが、もしも人工ダイヤモンドがサプライチェーンに流通してしまうと、「世界各地の研究所で1~2ミリの小さなサイズのダイヤモンドを毎日5万個ほどテストしなければいけなくなる」とのこと。


2つ目の問題は「普遍性」です。技術が向上するにつれダイヤモンドの生産量は増加し、いずれ限度を超えて増えるのは疑いようがありません。


特に中国企業は小さな人工ダイヤモンドで市場を溢れさせようとしています。歴史的に産業用途に焦点を当てた人工ダイヤモンドの生産を行ってきた中国企業ですが、石油の掘削量が世界中で減少することを受けて、彼らは容易に宝石産業向けに生産をシフトすることが可能です。


ワン氏によると、「1度の生成で10~20カラットほどのサイズのダイヤモンドを作り出すことができますが、宝石として使用するような小さなサイズのものならば数時間で作ることができます。中国企業は1カ月あれば20万カラットものダイヤモンドを生産可能です」とのこと。


コンサルティング大手のBain & Companyは毎年ダイヤモンド産業に関する報告書を発表しており、世界中のビジネスパーソンが人工ダイヤモンドに注目していることは明らかです。そんなコンサルティング会社も人工ダイヤモンドの流通による混乱は危惧しており、3つの「D」の必要性を説いています。3つのDというのは、「detection(検出)」「disclosure(開示)」「differentiation(差別化)」です。


この「differentiation(差別化)」を測るため、ダイヤモンド業界では天然ダイヤモンドの希少性を維持するための広告キャンペーンなどを行っています。


これらの調査を行ったあと、Verge Scienceのメンバーは天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドを実際に見てみたいと考え、両方を販売している宝石店のBrilliant Earthを訪れます。


「何人かの顧客は地球が何十億年もかけて作り出した天然のダイヤモンドを求めています。そういう人たちにとって、『天然ダイヤモンド』というものは確かに意味を持っているのです。しかし、顧客の中には研究室で作られた人工ダイヤモンドに本当に興奮している人もいます」と語るのは、ベス・ガースタインCEO。


天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドの両方を撮影したというVerge Scienceですが、撮影した映像を見てどちらがどちらかを区別することにとても苦労したとのこと。


天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドを区別するには「検出」「開示」「差別化」の3つのDが重要であることが示されましたが、進化する科学技術により、最終的に天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドの区別がつかないようになることは明らか。業界はこれを考慮する必要があるとのことです。

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in サイエンス,   動画, Posted by logu_ii

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