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サイエンス

宇宙の謎「消えたバリオン」問題が新たな観測手法によって解明へ


宇宙にはまだまだ解き明かされていない謎が多く、その最たる例が人間の目には見えないダークマターであるといえます。しかしその一方で、人間の「目に見えている物質」に関しても人類が把握できているのは全体の6割程度で、残りの4割は謎とされてきました。今回新たに導入された新しいアプローチにより、その残りの4割の存在が確認されるに至っています。

The Last of the Universe’s Ordinary Matter Has Been Found | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/the-last-of-the-universes-ordinary-matter-has-been-found-20180910/

宇宙関連の話題で必ず耳にするといってよいダークマターは、現代の人類が持つ観測方法では見つけることができない物質であるとされています。宇宙全体の構成を考えたとき、計算上は人類が観測できている物質、すなわち「原子」は宇宙全体のわずか4.9%であり、残りのダークマター(26.8%)とダークエネルギー(68.3%)についてはまだほとんど手がかりが得られていない状態です。


人類が観測できる原子を総称してバリオンと呼ばれますが、このバリオンについても、実際に観測できているのは全体の6割であり、残りの4割はこれまでどこに存在しているのか確認されていませんでした。これは「消えたバリオン問題」とされてきた問題で、人類は宇宙を構成している要素のうち、およそ3%ほどしかその実態を理解できていなかったことになります。

この見えていない「ダークバリオン」についての研究が進められてきたのですが、ついにその姿らしきものが確認されました。広大な宇宙空間の中で、物質は「星」やその集合体である「銀河」、そして銀河が集まった「超銀河団」などの形で集まっています。そして、この超銀河団は宇宙空間に均一に存在するのではなく平面上の壁のような状態で分布しており、銀河フィラメントと呼ばれます。また、銀河フィラメントが集まった構造はちょうど石けんを泡立てた時の泡の集合のような状態で、宇宙の大規模構造と呼ばれます。宇宙の大規模構造は、この宇宙で最も大きな構造物とされています。

By European Southern Observatory

宇宙物理学者は、この構造に集まっている物質の質量を求めることで宇宙のダイナミクスを解き明かそうとしてきましたが、その実態が明らかになるにつれて「見えている物質による力だけでは、実際の宇宙の状態を説明することができない」というジレンマが生じるようになりました。そこで導かれたのが「ダークマター」や「ダークエネルギー」という概念であり、宇宙で最大の謎とされてきたのですが、それと並行して「消えたバリオン問題」も宇宙の謎として存在してきました。

その謎を解き明かすことになったのは、イタリアのローマにあるNational Institute for Astrophysics(天体物理学研究所)のFabrizio Nicastro氏らによる研究チームの新たなアプローチでした。通常、消えたバリオンの正体と考えられている温度100万ケルビン以上の銀河間ガス「中高温銀河間物質」 (warm-hot intergalactic medium; WHIM)を検出する際には、水素原子が特定の波長の光を吸収する様子を観測することで、その様子を導き出します。しかし、超高温状態にある水素原子は陽子と電子がプラズマ状態となることで、光を吸収しない状態になってしまうとのこと。

By Martin Heigan

そこで研究チームは、水素原子の代わりに電子を8個持つ酸素原子に焦点を当てることで、未知のWHIMの検出を試みました。この手法で、地球から極めて遠く離れた天体「クエーサー」からの光が酸素原子によって変化を起こす様子を観測するというものになっており、従来の手法では見つけられなかったWHIMの存在を把握することが可能とのこと。宇宙の全方向から届くクエーサーの光について分析を行ったところ、「消えたバリオン問題」として欠落していた領域を見事に補完するデータが得られたそうです。

この研究は、ESA(欧州宇宙機関)が2009年に打ち上げ、2013年まで運用されてきた宇宙望遠鏡「プランク」によって得られたデータを解析したもの。今後は、さらに高性能な次世代X線観測装置や紫外線望遠鏡などを用いてより多くのクエーサーを高精度に観測することで、さらに詳細なバリオンの姿を解き明かすことが期待されています。

By European Southern Observatory

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in サイエンス, Posted by logx_tm