メモ

破壊や紛失を経てもなお国連総会で「ソーの小づち」が使われる理由


ニューヨークにある国連本部の会議室の多くには、標準的な木製の小づちが置かれています。しかし、世界193カ国の代表が集まる国連総会のホールにだけは、大きく、飾りつきの小づちが用意されています。このアイスランド製の特別な小づちには、破壊され、消失し、それでもなお再現されるという、知られざる歴史があるとのこと。

Keeping order in the General Assembly: The strange saga of how a Viking gavel was broken, then lost, then carved again | UN News
https://news.un.org/en/story/2018/09/1019512

国連総会で使われる小づちは会議の開始と終わりを宣言するほか、議題の承認、職員の選出、決議などに用いられる大事なもので、かつてのアイスランドの常任委員より贈られました。930年に創設されたアイスランドの「アルシング」は世界最古の近代議会といわれており、世界各国が集まる議会において、アイスランドの小づちが使われるべきだと考えられたためです。

アイスランドの前常任委員だったHjalmar W. Hannesson氏は、この小づちについて、「1952年に国連本部がここニューヨークのイースト川にある銀行で開設されたとき、アイスランド初の常任委員だったThor Thors氏は、国連総会の議長にこの小づちを贈りました。このことから、贈り物である小づちは「トール・ハンマー」ならぬ「トール・ガベル(ソーの小づち)」と呼ばれるようになりました」と説明しています。


その後8年間、ソーの小づちは国連総会で使われ続けましたが、1960年に当時の国連議会の議長であるアイルランド人のFrederick Boland氏によって壊されてしまいます。当時ソビエト連邦の最高指導者だったニキータ・フルシチョフが靴で机を叩いているのを静かにさせるため、Boland氏が小づちを強く打ったのが、小づちが壊れた理由とのこと。

当時の報道によると、多くの常任委員がBoland氏のもとに新しい小づちを贈ったそうですが、最終的に国連はアイスランドに対し、オリジナルのコピーを作れるかどうかを尋ねました。その後、贈られたコピーの小づちは約半世紀も国連総会で活躍しました。


しかし、2005年、このコピーの小づちが行方不明になってしまいます。理由は不明ですが、国連は再びアイスランドに2代目のコピーの作成を依頼しました。このときは、アイスランドで最も有名な彫刻家の1人であるSigridur Kristjansdottir氏が作成を担当することになりました。

Kristjansdottir氏が政府から依頼されたのは、過去の経緯を踏まえ、「特別頑丈な小づちであること」。そこでKristjansdottir氏はセイヨウナシの木を使って小づちを作成し、このかいあってか2018年現在も小づちは壊れていません。


小づちには10世紀の中世アイスランドの散文作品群「サガ」の1節が刻まれているとのこと。Hannesson氏は、「この時代、私たちはキリスト教を受け入れることで、内部争いに歯止めをかけ国を統一しました。統治者の一人は『社会は法の上に作られなければいけない』と言ったといわれており、この言葉が小づちに刻まれています」と語りました。

「ソーの小づち」という響きは平和の道具というよりも、どちらかというとヴァイキングの道具のように聞こえますが、靴で机を叩く一国のリーダーを従わせるためには、時にはこのヴァイキングの道具が必要であるとのことです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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