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任天堂の名機「スーパーファミコン」ではどのようにして音楽が作られていたのか?

by Matthew Paul Argall

任天堂のゲームハード「スーパーファミコン」は1990年11月21日に日本で発売され、翌1991年8月にはアメリカ向け仕様の「Super Nintendo Entertainment System(SNES)」が発売されました。スーパーファミコンは当時のゲーム機としては抜群の描画能力やサウンド能力を誇り、全世界で4910万台の売り上げを見せました。そんなスーパーファミコンやSNESの音楽性能について、Nerdwriter1が以下のムービーで解説しています。

How Music Was Made On Super Nintendo - YouTube


SNESとスーパーファミコンは、本体デザイン・カセット形状・電源・映像出力は違うものの、搭載されているチップは同じです。


これがSNESの基板。


上下に並ぶ2つの黒い長方形のチップが、スーパーファミコンやSNESに搭載される内蔵音源です。この2つのチップはBGMや効果音を再生するのに必要となります。


スーパーファミコンが発売されてから30年近く経ちますが、この時代のゲーム音楽は名曲と名高い音楽が多くあります。例えば、「スーパーマリオワールド」の音楽はその中でも最も有名な曲の1つです。


他にも、植松伸夫氏による「ファイナルファンタジーVI」の音楽や……


コナミ矩形波倶楽部によるスーパーファミコン版「悪魔城ドラキュラ」の音楽など、スーパーファミコンの突出したサウンド性能を生かした名曲が多く存在します。


スーパーファミコンに搭載された内蔵音源は2つのチップで構成されています。1つがSONY製のSPU(Sound Processing Unit)であるSPC700です。


もう1つがS-DSP Aと呼ばれるデジタルシグナルプロセッサです。


前世代機であるファミリーコンピュータNintendo Entertainment Systemは、矩形波2系統・三角波1系統・ノイズの3+1チャンネルとDPCM音源1チャンネルの計5チャンネルで、実質3和音までしか音楽を鳴らすことができませんでした。


一方、スーパーファミコンやSNESは同時発音数8チャンネルです。ファミリーコンピュータに比べて多種多様な音色をたくさん重ねることができたため、スーパーファミコンの音楽の幅と広がりは段違いでした。


同時発音できる8チャンネルはサンプリングも可能なのでゲーム音楽の作曲家が好きな音色をゲーム内に登録できました。


例えば、1994年にスーパーファミコンで発売された「スーパードンキーコング」のステージ移動時に流れるBGM「THE MAP PAGE」のチャンネル編成はこんな感じ。


PSG音源3和音+1和音だったファミリーコンピュータから、スーパーファミコンは圧倒的な進化を遂げています。


しかし、SPC700のSRAMは64KB。3分ほどの曲のmp3ファイルがおよそ6MBということを考えるとその容量はあまりにも小さすぎました。


64KBという容量を考慮すると、サンプリング可能な時間は全ての音色や効果音をあわせてわずか5秒ほど。そのため、使用可能なサンプリングデータを収めるためには、データそのものを0.1秒単位で短くする必要があります。


例えば、ヒップホップの世界では、昔の曲のわずか1,2秒だけをサンプリングして一曲に仕上げることがあります。同じように、わずか数秒の短いデータを組み合わせることで音楽を作り上げた例が存在します。


スーパーファミコンの内蔵音源の限界に挑戦したとして、今もなお高い評価を受けている「スーパードンキーコング」の水中ステージのBGM「Water Music」は、短いサンプリングデータをいくつもつなげて作られています。


この曲を作曲したのは、当時イギリスのゲーム開発会社「レア」に在籍していたデビッド・ワイズ氏です。


ワイズ氏が参考にしたのは、1990年に発売されたKORGのシンセサイザー「Wavestation」です。


KORG・Wavestationの大きな特長は、非常に短い波形データを組み合わせることで1つの新しい波形を作り出すことができる「ウェーブシーケンス」機能です。ワイズ氏は、このウェーブシーケンス機能と同じことをゲーム内で行って、複数の短いサンプリングデータから長いサンプリングデータを使って曲を作り上げるという工夫を行いました。


もちろんスーパーファミコンはWavestationではないので、チャンネルごとに合成する波形データをすべて自分で手入力しなければなりません。ワイズ氏は「Water Music」1曲のために、5週間かけて音符・オクターブ・サンプル・音量・フェード・エコーなど、すべての波形データをゲームのプログラム内に入力しました。


めちゃくちゃ面倒な作業ですが、その甲斐もあって、「Water Music」はスーパーファミコンのゲーム音楽の中でも屈指の名曲として今もなお語り継がれています。


なお、ワイズ氏は同じ手法を、1995年に発売された続編「スーパードンキーコング2」でも利用しています。


スーパーファミコンがゲーム音楽の作曲家にとって制限のあるシステムであることは疑いようもありません。しかし、2つのチップと64KBのSRAMと大量の16進数のコードという内蔵音源の制限は、創造性を育み、数々の名曲を生んでいったといえます。

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in ハードウェア,   動画,   ゲーム, Posted by log1i_yk

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