ダース・ベイダーはどのようにして「スター・ウォーズ」の象徴的存在になったのか？

「スター・ウォーズ」シリーズを象徴するキャラクターの1人「ダース・ベイダー」は悪役ながら高い人気を誇るキャラクターです。しかし、全体を通じて登場シーンはそこまで多いわけではありません。そんなダース・ベイダーがなぜスター・ウォーズの象徴的なキャラクターとなったのかを、Nerdwriter1がムービーで解説しています。

What Made Darth Vader Visually Iconic - YouTube


スターウォーズの旧3部作である「エピソードIV／新たなる希望」「エピソードV／帝国の逆襲」「エピソードVI／ジェダイの帰還」の上映時間を合計すると、6時間28分という長さです。

しかし、その中でダース・ベイダーが画面に映る時間は合計で33分41秒。意外にも旧3部作全体の約8.7％にしか登場していません。それでも、ダース・ベイダーは圧倒的にインパクトがあり、作品の顔と呼んでもいいほど有名なキャラクターです。

「エピソードIV／新たなる希望」では、真っ黒いダース・ベイダーは背景に溶け込まないように、常に後ろに白い光源を背負っています。

これは「エピソードIV／新たなる希望」で撮影監督を務めたギルバート・テイラー氏のアイデアによる演出です。

デススターの内部のあちこちに白い光源をデザインすることで、その前を通るダース・ベイダーの特徴的なシルエットや動きが、わざわざ直接強い光を当てなくてもよくわかるように工夫されています。

しかし、続編の「エピソードV／帝国の逆襲」では、単にダース・ベイダーを映し出すだけではなく、照明や構図に工夫を加えて、ダース・ベイダーの存在をより強調していました。

ダース・ベイダーのマスクが大きく改造されました。「エピソードIV／新たなる希望」のダース・ベイダー(画像左)はマスクに艶がなく、ヘルメットも塗りムラがある状態だったのが、「エピソードV／帝国の逆襲」のダース・ベイダー(画像右)はマスク・ヘルメット共にぴかぴかの鏡面仕上げとなっています。

冒頭でダース・ベイダーが窓から宇宙を眺めるシーンでは、真っ黒な宇宙を背景にしながら、船内の光を反射したダース・ベイダーのヘルメットが画面に浮かび上がります。常に白い光源を背負っていた「エピソードIV／新たなる希望」とは全く異なる手法です。

「エピソードV／帝国の逆襲」では、ヘルメットやマスクに光を徹底的に映り込ませることで、ダース・ベイダーのマスクの表情がよくわかるようになりました。

また、ダース・ベイダーが悪役らしい行動をとる場面では、全身のがしっかりと画面に映し出されて、観客の中でダース・ベイダーの印象的なシルエットが悪のイメージとしっかり結びつきます。

ルークが修行中に立ち向かう自身の暗黒面はダース・ベイダーの形で現れますが、ダース・ベイダーのシルエットを悪にしっかりと結びつけるからこそ成立する演出というわけです。

また、ルーク・スカイウォーカーと対決するシーンでは、逆光によってシルエットがはっきりと画面に浮かび上がっています。こそのため、「エピソードV／帝国の逆襲」ではダース・ベイダーはわずか11分51秒しか映っていないにも関わらず、そのマスクとシルエットは観客に対して強烈なインパクトを残します。

「エピソードVI／ジェダイの帰還」の冒頭には、「エピソードV／帝国の逆襲」の冒頭にあるものと全く同じ構図のシーンが存在します。しかし、前2作と異なり、ダース・ベイダーは残忍性を出す必要がないという判断から、「エピソードVI／ジェダイの帰還」ではダース・ベイダーが悪を象徴するような場面はそれほど出てきません。

「エピソードVI／ジェダイの帰還」で悪役だったダース・ベイダーことアナキン・スカイウォーカーがそのマスクの下にある素顔を息子に晒して微笑むシーンは悲劇的なラストシーンで、観客の心に強い印象を残します。

もちろん「シューコー」という呼吸音はダース・ベイダーを象徴する最たるものといえます。しかし、映画は視覚的な芸術表現です。ジョージ・ルーカスやスタッフは「スター・ウォーズ」旧三部作の中で、照明や構図を工夫しながら、ダース・ベイダーというキャラクターを観客へ徹底的に印象付けていたというわけです。