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指圧や整体に影響を与えた「オステオパシー」は理学療法とどう違うのか?

by General Osteopathic Council

指圧や整体といった日本の手技療法に大きな影響を与えることとなったオステオパシーは、単なる療法ではなく、「体を1つのユニットとして考え、自然治癒力を高める」ことを目的とする1つの医学体系だといわれています。筋肉や骨に対する施術には理学療法カイロプラクティックなどがありますが、これらとオステオパシーがどう違うのか、研究者が調査しています。

Osteopathic manipulative treatment: A systematic review and critical appraisal of comparative effectiveness and health economics research - Musculoskeletal Science & Practice
https://www.mskscienceandpractice.com/article/S1356-689X(16)30816-5/fulltext

Does osteopathy work?
https://theconversation.com/does-osteopathy-work-98848

オステオパシーはアメリカ人医師のアンドリュー・テイラー・スティル氏が1874年に創始したもので、世界保健機関(WHO)は「伝統的な医療システム」として(PDFファイル)ガイドラインを採択しています。診断・治療の両方において患者に手で触れる方法がとられ、カイロプラクター理学療法士と技術的に重複する部分もありますが、実践的なオステオパシーは他のヘルスケアの専門家とは異なると考えられています。

過去20年でオステオパシーの科学研究は行われてきたものの、安全性と効果についてはまだまだ疑問が多く残されています。そこで、シドニー工科大学の博士研究員であるAmie Steel氏は、オステオパシーとそのほかの治療法を比較したこれまでの研究の再評価を試みました。

Amie Steel氏はまず、腰痛に対するオステオパシーの効果と、背中の痛みに対する通常の医療アプローチについて比較した研究について調べたとのこと。背中の痛みに対する通常の医療アプローチには、鎮痛および抗炎症性の治療や能動的理学療法、ホットパックおよびコールドパック、構造的サポートなどが含まれます。この調査の結果、オステオパシーが取り除く痛みのレベルは通常の医療アプローチと同様でしたが、鎮痛薬・抗炎症薬・筋弛緩剤の使用量が大幅に小さくなるという結果が示されました。

by Mathew Schwartz

また2003年に行われた研究では、背中に痛みのある人がオステオパシーの治療を受けた結果、何も治療を受けた人よりも症状が軽くなるという結果が示されました。しかし、この時、対照グループに「偽オステオパシー」による治療を施したところ、本当のオステオパシー治療を受けた人と偽オステオパシー治療を受けた人で、改善具合があまり変わらなかったそうです。

そして、2007年に行われた研究ではオステオパシーと、「理学療法士が行うグループでの運動」「理学療法士が行う1対1の施術」を比較したところ、いずれのグループも患者に同じような効能を与えることがわかりました。

これらの研究を総合して、背中の慢性的な痛みに対するオステオパシーの効果は、「標準的な医療ケアや理学療法と同じだが、鎮痛剤の使用を減らすことができる」とSteel氏は結論づけています。


またオステオパシーと他の治療法のコストについて調べている時に研究チームは「オステオパシー治療を行った未熟児は体重増加のペースが速くコントロールグループよりも平均して6日早く退院できる」という研究結果について知ることとなりました。オステオパシー治療自体は1施術あたり20ユーロ(約2600)円なので、高額な入院費をオステオパシー治療で下げることが可能になるとも考えられます。

一方で、偏頭痛過敏性腸症候群にオステオパシーが個々の症状に効果を発揮することなどを示す研究結果は日々発表されているものの、Steel氏の研究デザインでは意味ある答えが出せるほどではなかったとのこと。


オステオパシーは単なる治療ではなく、体全体を1つのユニットとしてとらえ、自然治癒力を鼓舞することを目的とする、1つの医学体系です。患者のニーズと好みによってどのような施術が行われるかが変わり、またオステオパシーで治療される「痛み」は科学的にまだ理解されていないため、オステオパシーの効能を研究することは非常に難しいものとなります。薬の研究であれば血液といったバイオマーカーから客観的に効果が測れますが、筋肉の「痛み」が治ったかどうかは患者の主観が判断基準となるためです。

まだまだわかっていないオステオパシーの効能を調査するため、Steel氏はコミュニティの協力と資金提供者を求めている、としています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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