生き物

人間のせいで野生動物がより夜行性になってきている


人間の活動領域が増えることで、野生動物の生活が脅かされることは多く、世界の陸地の75%で人間の影響が及んでいるという研究もあります。人間が生活圏を広げるとともに、多くの哺乳類は「夜行性」の傾向を強めていることが分かり、生態系への影響も懸念されています。

Animals feel safer from humans in the dark | Science
http://science.sciencemag.org/content/360/6394/1185

All around the world, humans are forcing other mammals to be more active at night
http://www.latimes.com/science/sciencenow/la-sci-sn-mammals-active-at-night-20180614-story.html

近年、衛星やGPSテレメトリー、カメラ追跡などの技術が進歩したおかげで、野生動物の行動を追跡調査できるようになりました。そして、これらの技術を活用して、野生動物の行動に変化が出ていることを示す数多くの研究が発表されています。

カリフォルニア大学バークレー校のケイトリン・ゲイナーさんは、人間を避けるために野生動物の行動にどのような変化が生じているのかを調べるために、6大陸に及ぶ62種類の動物に関する76の研究についてメタ分析を行いました。ゲイナーさんの研究チームは、比較的大型の哺乳類を対象に分析を行っています。大きな動物を対象に分析を行っているのは、人間に気づかれるリスクが高く、人間の生活に影響を受けやすいためです。これまでに行動追跡によって行われた研究の多くが大きめの哺乳類を対象としていたのも、同じ理由です。


分析の結果、人間の活動が活発な地域に住んでいた動物は、夜間の活動量が1.36倍も増えていることがわかりました。より具体的な例では、夜間の活動時間が50%増えた動物の割合は68%増えていたとのこと。人間に遭遇する確率が高まり駆除される危険性が高まったことで、野生動物が見つかりにくい夜に活動時間をシフトしていると考えられています。

しかし、野生動物の夜行性の傾向が高まっている状況に対しては、広い範囲で生態系へ悪影響が及びかねないと危惧されています。ある種の動物が夜間に活動することで、夜行性動物と行動時間が重なることが増え、捕食するエサが同種である場合には競合が増えることが懸念されます。また、夜行性に移行した動物の被食者の日中の活動が自由になれば、その動物の繁殖が抑制されずいたずらに増殖する可能性も指摘されています。

また、大型の哺乳類が夜により活動的になることで、捕食者のいない夜に活動していた小動物は、ニッチを求めて日中に活動時間を変えることもあり得、ストレスレベルが高まり生殖活動に影響が及ぶのではないかなど、生態系のバランスが崩れてしまうという危険性が指摘されています。


もっとも、現時点では野生動物の夜行性傾向の高まりが一時的な行動レベルでとどまるのか、それとも影響がより大きくなり、生態の変化という恒常的なものへとつながるのかについてはわかっていません。生態系のバランスが崩れることを防ぐために、動物に安全を空間的に与える「保護エリア」を、今後は時間的な方向へと拡張する必要性も議論されています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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