サイエンス

「脳をブーストさせるドラッグ」を利用する人が世界的に増えている

by Camila Urrea

難しいテストの前や仕事で難題に直面した時に、「簡単に自分の頭が賢くなればいいのに」と思ったことがある人もいるはず。近年、世界的に「記憶や集中力を高めるためにドラッグを使用する」という人々が増加していると報じられています。

Use of "Smart Drugs" on the Rise - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/use-of-ldquo-smart-drugs-rdquo-on-the-rise/

記憶や集中力といった、勉強や仕事に役立つ能力を向上させる薬物のことを「スマートドラッグ」と呼びます。ADHDの投薬治療でも利用される、集中力向上のための薬剤などもスマートドラッグに数え入れられますが、スマートドラッグを医療目的以外で使用する人の割合が、世界的に増加していることがわかりました。

薬物に関する匿名のオンラインアンケート「Global Drug Survey」は、毎年、世界中に住む数万人の人々に対して調査を行っています。2017年の調査では3万人ほどが回答を行いましたが、アンケートを実施した北米やヨーロッパの15カ国全てで、スマートドラッグを「脳をブーストさせるために使用した」と回答した人が増加したことが明らかになりました。

特にアメリカは、調査対象国の中で最もスマートドラッグの使用率が高かったとのこと。「過去12カ月間にスマートドラッグを医療目的以外で使用しましたか?」というアンケートに対し、アメリカの回答者は2015年には全体の20%が「はい」と答えましたが、2017年には「はい」と答えた人の割合は30%にまで増加しました。

一方、使用率の増加はヨーロッパで顕著でした。フランスでは、2015年の調査でスマートドラッグを非医療目的で使用した人の割合は3%でしたが、2017年には16%にまで増加。イギリスでは2015年の5%から、2017年には23%にまで増加したそうです。

by Marco Verch

ケンブリッジ大学の神経科学者であるバーバラ・サハキアン氏は、健康な人々が「ライフスタイルの一環」としてスマートドラッグを利用するようになっており、倫理的な障壁が崩れていると指摘。カリフォルニア大学の心理学者であるラリッサ・マイアー氏は、スマートドラッグの利用には文化的要因と、ADHD診断率やADHDに対する投薬治療の頻度などが関連していると考えています。

ADHD診断が多く投薬による治療も頻繁に行われるアメリカでは、アンケート回答者のうち22%がアンフェタミンを含んだADHD治療薬の服用経験があると答えました。日本の法律上ではアンフェタミンは覚せい剤に指定されており、EUでも承認されていません。ところが、アメリカやカナダ、オーストラリアといった国々では、ADHDやナルコレプシーの治療にアンフェタミンが用いられています。ADHD診断率が高く、アンフェタミンの処方が頻繁に行われているこれらの国々では、医者から入手したアンフェタミンを友人などに横流しするケースが発生しているとのこと。

アンケートで「スマートドラッグを過去12カ月間で使用したことがある」と回答した人は、スマートドラッグの入手ルートについて48%が「友人」、10%が「専門のディーラー、インターネット」、6%が「家族」と答え、「自分自身に対して処方された」と答えた人は4%にとどまりました。

by Michael Coghlan

マイアー氏は今回のアンケートの結果について、「薬物に関するアンケートに答える人は、一般的な人よりも薬物に対する興味が強い可能性が高いと考えられます」と述べており、結果にバイアスがかかっているかもしれないと指摘しています。ところが、一般の人々を対象にした調査でも、スマートドラッグの非医療的な使用を行った人は似た割合で確認されているそうで、「脳をブーストさせる目的でのスマートドラッグ使用率が高まっていることは、ほぼ確かでしょう」とマイアー氏は話しています。

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