サイエンス

木星の雷は従来の予想と異なり「地球の雷に近い」と判明


木星に発生する「雷」は古くから観測されていましたが、探査機が受信した電磁波のデータが限られていたため、発生の起源について明らかではありませんでした。NASAの木星探査機「ジュノー」ミッションの研究者が科学誌Natureで発表した論文から、39年間わからなかった木星の雷の性質が判明しています。

Prevalent lightning sferics at 600 megahertz near Jupiter’s poles | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0156-5

News | Juno Solves 39-Year Old Mystery of Jupiter Lightning
https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?feature=7151

1979年3月に宇宙探査機「ボイジャー1号」が木星に到達して以来、木星で雷が発生していることは電波受信器のデータからわかっていました。しかし、ボイジャー1号や「ガリレオ」「カッシーニ」などによって記録されてきた木星の雷のデータは、目視による視覚情報とキロヘルツ帯の周波数域に制限された電波信号に限られており、木星で発生する稲妻がどのようなものなのかや発生メカニズムについては詳しくわかっていませんでした。


NASAのIvana Kolmasova氏らの研究チームが、ジュノーによって木星で発生する雷の電波データを数多く検出することに成功しました。JunoにはMWR(Microwave Radiometer Instrument)と呼ばれる高性能の検出器が搭載されており、2016年7月4日から木星を周回軌道に入りデータが収集されました。最初の8つの軌道でMWRは377個の雷による放電信号を検出し、キロヘルツ帯だけでなくメガヘルツ帯の電波の記録にも成功。このデータを分析した結果、木星の雷には600MHzという比較的高周波の電波が確認され、従来考えられていたよりもずっと地球の雷に近いものであることがわかったそうです。


稲妻自体は地球のものと似たものでしたが、発生する場所は特徴的であることも判明しています。検出データによると、木星では赤道上で雷が発生しておらず主に両極付近で雷が見られたとのこと。極付近でのみ雷が発生する原因について研究者は「熱」が原因だと考えています。

地球に比べて太陽から5倍も離れた木星では、照射される太陽光は25分の1になるため、木星の気温は木星自体が発生する熱によって決まります。しかし、25分の1とはいえ太陽光のエネルギーは無視できない量であり、「赤道付近では太陽光によって大気が温められて上層の大気に安定性がもたらされることで上昇気流の発生が防がれているのに対して、極付近では上層の大気が温められず不安定で、より雷が発生しやすい状況なのではないか」と研究者は考えています。大気が安定していない極では温かいガスが噴き出し上昇して対流を引き起こし、雷が作り出されているというわけです。


「今回の発見は、木星の組成、大気循環、エネルギーの流れなどの理解が進むのに役立つでしょう」とNASAのShannon Brown氏は述べています。ただし、今回の研究によって両極付近での発生が確認された木星の雷ですが、「大半が北極付近で観測されているのはなぜなのか?」という新たな謎がみつかっているそうです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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